沖縄県・名護市役所(象設計集団+アトリエ・モビル) | 千里同風

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めがねだかめだかだかわかりかねます。

用途:市庁舎

延床面積:6,149.1平方メートル

構造・階数:鉄骨鉄筋コンクリート造、3階

最高高さ:21.6メートル

総工費:約10.5億円(外構含む)

工期:1980年3月~1981年4月(建築)


市庁舎というより、まるで遺跡のような構え。

南側ファサードには、いくつもの穴が開いている。

建物を南北に貫くダクトの入り口であり、

ここから入ってくる涼しい海風が、

自然の力で建物を冷やす仕組みだ。

機械空調がない時代の沖縄において、

より快適に過ごすための工夫である。




建築当時には、庁舎の外壁にある逆階段状の台座に

56体のシーサーが設置されていた。

名護市内の55集落に名護市庁舎の1を足した数だ。

その後、台風や塩害の影響による破損・落下で、

2019年2月時点で残っていた45体も、

安全性を考慮して、全て撤去されてしまった。



外装は、沖縄の建築に広く用いられているコンクリート・ブロック。

2色の組み合わせで、ストライプ模様を作っている。

色褪せた風合いが、歴史の経過を感じさせる。







建物の北側は段上になっており、

張り出した部分にはパーゴラ状の庇が架かっている。

成長したブーゲンビリアが建物を這い上がり、

庇の下に影を作り、落ち着いた空間を作っている。

この半屋外空間はアサギテラスと名付けられている。

アサギテラスとは、神様が降りてくる場所として、

沖縄の集落に設けられるもので、

通常、壁がなく、方形の屋根が架けられている。

この空間は、そのイメージを庁舎に取り入れられたものだ。









1978年、市庁舎の建設にあたって公開コンペが実施された。
国内の本格的なコンペは10年ぶりだったこともあって、
全国から308組もの応募があり、
その中から1等に選ばれたのが
象設計集団とアトリエ・モビルの共同体「Team ZOO」だった。
彼らは建築家・吉阪隆正の事務所から独立した
メンバーを中心とする若手グループで、
コンペが行われる8年も前から沖縄を何度も訪れ、
集落調査を続けていた。
名護に近い今帰仁村では、
中央公民館の設計を既に手がけており、
沖縄での実績も持っていた。