大量生産



 それこそ複雑なデザインをアメリカ人が好むと好まざるとにかかわらずすべて省いてしまったのです。


 後でどのように省いてしまったのかを説明するとして、その省き方は半端ではありませんでした。


 しかしアメリカでは却ってこの簡素化されたデザインが受け、飛ぶように売れて行ったのです。特にスーパーではキャッチコピーの代名詞として次から次へと購入者が訪れては買っていきました。

アメリカでは好景気を反映してかその購入者の殆どは労働者階級の人たちばかりでした。


 では何故こんなにも売れたのか?


それは仮にドイツ製食器の価格を5万円とすると、日本製は1万円位で販売されたからです。



 消費者にとってはとても魅力的な単価であったに違いありません。



続く!!



ちなみに、こうやって歴史を紐解いてみるとわかってくることがあります。

この状況って日本と中国の関係にそっくりだと思いません?



安いから消費者はそれに飛びつく! 

それを知っている生産者側では安く生産するための工夫を凝らす。でもそれがいい形での工夫であればいいのですが・・・



つい最近、安さにばかり目をやっていた私たちも日本も痛い目にあいましたよね?


生産者側が良くも悪くも工夫をするのは、やはり消費者の姿勢しだいのようです。

安さだけを求める行動は、おのずと安全性や品質、そして目には見えない価値を落とす行為にもなります。



多少の価格の高さを我慢しても(自国の)イイ物を食べる、買うというのは単に生活の中だけの話ではなく、正しい眼や教養、産業、文化にも大きく影響するのではないでしょうか。

どうしもうない物質主義の怖さは歴史を通しても気付かされます(笑)



                     アメリカ貿易


 

 アメリカに輸入が開始されると簡略化がはじまります。



 日本ではドイツ製と言うかドイツ型と言うかそのどちらでもいい! 

というようなあいまいな形から生産されました。


 日本のメーカーの一番大きな目的は大量生産システムの構築です。


 この大量生産方式は製品コストを下げると同時に、アメリカ社会の中流階級と労働者階級に及ぶ大きな市場の確保が望まれていました。



 皆さんはびっくりされるかもしれませんが、アメリカからたった一回の注文で300人規模の工場の半年分の収入が得られたのです。

 

 注文の内容はディナーセットでありました。このセットはあまり聞きなれない言葉かもしれませんね。

 簡単に説明すれば朝食・昼食・夕食と全ての料理に利用するための食器です。


 このディナーセットは今の価格でいえば約三万円ぐらいだろうか?

それが約一万セットという注文です。これはまだ少ない方で多い時には10万セット以上の場合もありました。


 しかしデザインが複雑すぎると簡単には大量生産が出来なくなってしまう。

 そこで考えられたのがドイツ型製品の簡略化でした。


続く! 



                     ドイツ製のサンプル


 当初アメリカから日本のメーカーもたらされたドイツ製サンプルには様々な要素が入っていました。


先ず皿の渕に彫刻が施されている。

別な言い方をすれば、縁取りとか隅取りがされている。


 その種類の多さにも驚かされる。

 

一例を言うと・・

 まず

  1) ティーポット・シュガー・クリーマー カップ&ソーサー それにトレー。

  2)6・7・8・9・10・12インチプレート

  3)フルーツ・クープスープ・リム型スープ

  4)グレービーボート・キャセロール・バターケース

  5)ペパー&ソールト

  6)キャンドルスタンド・ワ―マー


 これだけではない。まだまだたくさんある。


こうして見てみると、19世紀時代にドイツの貴族たちがいかに磁器を愛用されていたのかが良く理解できる。


実はこうしたアメリカの輸入業者から日本にもたらされたドイツ製サンプルが以前書きました “特別版:ドイツPART8 オリジナル” にあるように日本のメーカーの型置場にオリジナルとして大切に保管されたのです。



続く!!

                     簡略化へ流れ


その後・・ 

このドイツ型がアメリカに輸出されるようになると、過去にこうした複雑なデザインで作られたにもかかわらず、より簡素化されてしまい、ドイツ型の原型がどんなものであるかが解らなくなってしまいました。


しかし、当初はちがったんですよ。


続く!!




                    アメリカの力


 そこでドイツから輸入ができなくなったアメリカの輸入業者は考えます。


そして、ドイツに代わる技術を持っている日本を訪れるようになりました。

 

 日本のメーカーは過去ドイツで作られたカップを見ておどろきました。

過去には陶磁器に彫刻を施してデザインした食器を作っていなかったっからです。


 サンプルを見せられたメーカーの技術人たちははそれがドイツ製品であることを知る由もありません。早速日本の生産者はこの形状を作る事に着手しました。

 

 しかし、いかに安く大衆化するかが最も大きな課題だったのです。



続く!!