昔、あまり将棋を知らない人から「羽生は何段なの?」と聞かれたことがあった。おじさんが、「9段だよ」と答えると、昔なら「ふ~ん、もう9段なの」であったが、近頃は「なんだ9段か」とか、「ほかに何かないの」という反応も聞かれるようになった。

 

 

 実際はもし羽生が無冠になったらどういうことになるか、逆に楽しみでもある。その理由は最後にするとして、今は将棋界の昇段の仕組をご説明する。

 

 

 昇段には3つの方法がある。一つは順位戦のクラスが上がることである。

  1. 奨励会 6級から2段
  2. 三段リーグ 3段
  3. C級2組 4段以上 50人
  4. C級1組 5段以上 37人
  5. B級2組 6段以上 25人
  6. B級1組 7段以上 11人
  7. A級    8段以上 10人

 厳密には6級から3段までを奨励会と言うそうだが、成績によって昇段し、最後は3段リーグで戦うことになる。昇級があれば降級もあり、4段になると晴れてプロ棋士となる。

 3段リーグは年に2回行われ、上位2名が4段に昇段する。つまり、プロ棋士は年に4人しか生まれないという恐ろしく狭き門である。まあ次点を2回取ると、C級2組に昇級はできないけれど、4段に昇段してフリークラスとしてプロ活動する人もいる。

 

 

 ご覧のように昇級により段位が上がり、最高のA級になれば8段という次第である。でも級はA級までしかない。では9段はどうすればなれるのと疑問に思われるだろう。答えを一言で言えば、タイトルを一度は取った人と考えて良い。そう今は8つに増えたタイトル戦のタイトル保持者になれば、一段上がるのである。

 

 

 あと、もう一つは勝ち星の数である。複雑すぎて昇段規定をお読み頂くしかないが、かなりの勝ち星を上げないと昇段は無理な規定になっている。それよりもリーグ戦を勝ち上がった方が現実的である。それにそれだけ勝ち星が増えるということは、どこかでタイトルに挑戦するか、タイトルを獲得しているのが自然だ。

 

 

 危うく段位の話で終わるところだった。今回は永世称号の話だった。6段あたりまではタイトルに挑戦しただけで1段上がる。少し前に山崎隆之8段が9段になっていたので、何故かなと思っていたら、今、叡王戦の事を読んで納得がいった。初代チャンピオンになっていたんだね。

 

 

 さて、各タイトルには永世 + タイトル名を名乗ってもよいという条件が作られている。通算何期タイトルホルダーであったといものが多いが、連続何期というだけのものもあり、相当困難なことはご想像いただけるだろう。

 

 

 一つのタイトル獲得さえ大変なのに、それを何度も獲得(防衛)して永世の称号を得るのは至難の業である。羽生は2日制のタイトル戦が弱いという印象はなかったけれど、1日で勝敗が決まる短時間の棋戦にめっぽう強かった。

 

 

 やはり永世を名乗るには名人以上のものはなく、すべてのプロ棋士の最初の目標は名人であり、永世名人の称号獲得条件は通算5期である。だが、羽生はあと一期というところで、森内に負け森内はその後、防衛し続け先に一八世名人の称号を獲得、その翌年、羽生が奪い返し、一九世名人の称号を得たのである。

 

 

 既にお気づきの方もいるかも知れないが、順位戦というのは名人になるためのクラス制度であり、宣言してフリークラスになった棋士は、名人にはなれないが他のタイトルは獲得可能である。

 

 

 羽生は若手に立て続けにタイトルを奪われ、棋聖一冠になっていた。おじさんは正直、羽生が永世称号をそんなに持っていて、竜王でコンプリートになるとは思っていなかったので、新聞でいきなり永世七冠達成の見出しを見た時には驚いた。そんな目標があったのかと言う訳だ。(叡王戦が出来たため厳密にはコンプリートではない)

 

 

 王座は『永世』ではなく、『名誉』を付すと記憶している。また永世・名誉の称号は現役を引退してから称することが出来るとなっているため、NHK杯の将棋対局では、森内のことを森内9段と呼んでいた。もし羽生が無冠になったときは羽生9段と言うのだろうか。羽生はNHK杯も通算10期ほど優勝しているはずだ。名誉号を与えてもいいかも知れない。まあ、羽生は決して喜ばないだろうけど――。

 

 

 藤井聡太4段もたくさん目標が出来てよかったと思う。もしかしたら、リーグでの負けがないので、いきなりC級1組に昇級し、来年は5段になるかも知れない。この辺りは昇段の規定がたくさんあって、勝ち星やタイトル挑戦などで一気に6段7段と飛び級ならぬ飛び段を果たすかも知れない。

 

 

 おじさんは、将棋のプロは天才だと思っている。特にこれからの天才達の動向に目が離せない。竜王の賞金や対局料が高額だという話や、棋士は文章の達人が多いという話も機会があればしたいと思っている。

【文中敬称略】

 

 

by 考葦(-.-)y-~~~