おじさんは先のラグビーのワールドカップでスポーツ観戦の癖?がつき、以来、NBA(アメリカプロバスケットリーグ)やNFL(アメリカプロアメリカンフットボールリーグ)もよくテレビ観戦するようになった。
スポーツでは熱さが裏目に出ることが多い。アメリカンフットボール(以下[アメフト])では強烈に体をぶつけ合うためか、格闘技と言う人もいる。中でも攻撃・守備チームを問わず、センター辺りにテンションの高い選手が多い。このスポーツでは、そうでなければ心身が保たないのかも知れない。
数日前、プレーオフに突入したNFLで、スティーラーズ対ベンガルズ戦を観戦した。攻撃権ばかり入れ替わる低得点ゲームだったが、退屈させないなかなか力の入る一戦だった。
おじさんに贔屓チームはない。いや、だからこそ死力を尽くす攻防を期待して、その時々で応援チームは変わる。それだけでなく、さっきまでこちらを応援していたのに、応援した方がひどい反則などをすれば、とたんに相手チームに鞍替えするなんて事は日常茶飯事である。
スティーラーズ対ベンガルズ戦では、実況アナウンサーから比較的早い時間帯にベンガルズは22年間プレーオフでの勝利がないという情報を得たので、よし、それなら今日はベンガルズ応援で行こうと決めた。期待通りの熱戦で、前半は第1Q(クオーター)は互いに無得点、第2Qになると均衡が破れ、スティーラーズがFG(フィールドゴール)を2本決めたが僅か6:0である。
※ アメフトはクオーターと呼ばれるように1試合15分×4回で行う
半分を終えて、片方は得点なく、スティーラーズやや優勢ではあったが、感触としては未だ勝利の女神はどちらにも微笑んでいないように見えた。
第3Qになりスティーラーズが1FG、1TD(タッチダウン)で15:0と一方的な差を付つけたところで、おじさんはベンガルズに暗雲が立ちこめた印象を抱いた。勝負の世界では内容は互角なのに差がついてしまうことがままある。この試合もそういう結果になる予感がしたのだ。
ところが好事魔多し、第3Q終盤まで堅実に得点を重ねていたスティーラーズだったが、最後の攻撃プレーで正QB(クオーターバック)ロスリスバーガーが負傷し、第4Qの攻撃からは控えのQBと交代するというハプニングが起きた。
そこからベンガルズの猛反撃が開始された。そしてついに第4Q残り2分辺りでTDが決まり16:15と1点勝ち越した。あとはエクストラ・ポイントで1点を加算するか、ツーポイント・コンバージョンで2点を取りに行くかだが、試合を安全にするためには3点差として相手のFGが決まっても同点という形にするのが戦い方だ。この場合、1点差も2点差も同じだから、ベンガルズはツーポイント・コンバージョンを選択し賭けに出た。そして失敗した。
残り1分50秒、スティーラーズは時間を見ながら慎重にFG圏内までボールを運ばなければならない。ところが攻撃開始早々、いきなり交代した控えQBがインターセプトを喫しターンオーバー、残り1分30秒くらいだったと思う。誰もがベンガルズの勝利を確信した。おじさんにも女神がベンガルズに微笑んだのが見えた気がした。ところがそれは錯覚で、美しい横顔を微笑みと勘違いしていたようで、女神様はまだベンガルズにはご尊顔を向けてもいらっしゃらなかった。
勝っている方が取るべき作戦、即ちベンガルズが時間を進ませるためにラン攻撃を用いたところ、RB(ランニングバック)のヒル選手がいいランを見せ4、5ヤードゲインした。そのままボールを抱えていれば良かったのに、距離を頑張りすぎて、ファンブルしてしまった。ボールは運悪くスティーラーズの守備陣が固まっているところに撥ねて、ご馳走様のターンオーバー、だがそこはフィールドゴール圏内までには相当距離がある。まだ5:5でベンガルズに勝利の可能性はある。
さて、攻撃権を得たスティーラーズはタイムアウトの数、残り時間、フィールドゴール圏内までの距離を考えると、基本はライン際のパス攻撃しかなく、それもどこかで大きなゲインが必要という難しい状況に変わりはなかった。しかし、スティーラーズは短いゲインを重ねながらファーストダウンを2度ほど重ね、次の攻撃でQBは中央にうまくパスを通しファーストダウンを取った。しかし、ベンガルズのディフェンスも瞬殺で潰し、さらなるゲインは与えなかった。時間は残り20秒程度、しかし、フラッグが出ている。結果によっては試合終了を宣告されるに等しい場合がある。
どちらの反則か? と固唾を呑んでいると、ディフェンス側すなわちベンガルズ側のファール、それも15ヤード脱退というから相当悪質なファールである。見た感じではパスキャッチした場面では左右からディフェンダーがタックルし、一瞬で倒すというさすがプロのプレーを見せて貰ったと感心していたので、どこか別の所でファールがあったのだと考えた。
しかし、スロー再生が流れると、ファールはパスキャッチのシーンそのもので、ボールをキャッチし、右から選手がタックルに来てほぼ同時に左から選手が体当たりに来た。その左側の選手が相手のアゴ辺りにヘルメットの頭頂をぶつけるように当たったのがファールということらしい。
プレーヤーは肩で当たったとジェスチャーで審判にアピールしていたが、スロー再生を観ると、アゴのカバーというか金網?のような部分に当たって、確かにまるでボクシングのアゴにフックが入ったように首を捻りながら倒れていった。元々頭頂からのタックルは危険すぎるので禁止されているようだ。しかし、プレーの中でヘルメット同士がぶつかるのは当たり前の光景なので、解説も一転二転していたが、結局、アンネセサリー・ラフネスなる反則を取られ15ヤード脱退となる。
このあたりの細かな反則は、おじさんには分からないが。いずれにしてもも、これで労せずしてスティーラーズは15ヤードのゲインとなった。しかしなかなか次のプレイに入らない。最後に、手に汗握る長距離のFGを見たいのに、
スティーラーズのコーチがフィールド内まで入り喚いているように見える。それに反応してベンガルズの選手が突っかかっていった。もみ合いのようなシーンがあり長い時間が経ってから、審判が出てきて反則を説明した。何もプレーしていないのに何の反則かと思いきや、アンスポーツマンライク・コンダクトなる反則で15ヤード脱退だという。これでスティーラーズは労せずしてファーストダウンを取った位置から30ヤード進むことになり、楽々FGを成功させ18:16と再逆転。
その後、18秒ほど時間があったけれど、キックオフリターンも成功せず、タイムアウトも使い果たしているし、あれよあれよでベンガルズの攻撃は時間切れ試合終了と相成った。
ターンオーバーのきっかけを作ったヒル選手はその後、ベンチに下がり目は伏せがちであった。誰も声を掛けに行かない。解説者も時間を使うことが目的なのに、ファンブルして相手に攻撃権を与えるとはと、厳しく言っていましたがその通りだ。1プレイして次のプレイまで30秒のインターバルが認められており、仮に4回の攻撃でファーストダウンが取れなくても、インターバルだけで1分半消費できる計算である。あとはパントで後ろに下げておけば、勝利は確実だった。
彼らは有名な大学を出た選手ばかりだが、アメフトの知識は幼稚園並みである。敗因を作ったターンオーバーと二つの重い反則の中で、許されるのは真ん中のアンネセサリー・ラフネスの反則だけである。
肩に行ったタックルが相手の体勢変化により少し上に当たってしまっただけで、まさにアクシデントの部類である。最後の反則も、相手ベンチの言葉にいきり立って反則を取られるとは、まさに愚の骨頂、もし敵の作戦ならまんまと引っ掛かった事になる。しかし、もっと悪いのはファンブルである。このプレイは救いようがない。
こんな最終盤のストーリーは小説に書けない。こんな事を書いても逆に才能がないと思われてしまうだろう。勝利の女神様は勝った方に微笑むのではなく、負けた方に精神的ダメージを与える神様なのかも知れない。ベンガルズのチームとファンには後味の悪い試合になった。にわかファンのおじさんもスティーラーズに乗り替わる間もなく終了したので、深夜に悪態つくしか術がなかった。
試合のハイライト動画はこちら
http://www.nfljapan.com/streaming/20160110-9512.html
スポーツでは熱さが裏目に出ることが多い。アメリカンフットボール(以下[アメフト])では強烈に体をぶつけ合うためか、格闘技と言う人もいる。中でも攻撃・守備チームを問わず、センター辺りにテンションの高い選手が多い。このスポーツでは、そうでなければ心身が保たないのかも知れない。
数日前、プレーオフに突入したNFLで、スティーラーズ対ベンガルズ戦を観戦した。攻撃権ばかり入れ替わる低得点ゲームだったが、退屈させないなかなか力の入る一戦だった。
おじさんに贔屓チームはない。いや、だからこそ死力を尽くす攻防を期待して、その時々で応援チームは変わる。それだけでなく、さっきまでこちらを応援していたのに、応援した方がひどい反則などをすれば、とたんに相手チームに鞍替えするなんて事は日常茶飯事である。
スティーラーズ対ベンガルズ戦では、実況アナウンサーから比較的早い時間帯にベンガルズは22年間プレーオフでの勝利がないという情報を得たので、よし、それなら今日はベンガルズ応援で行こうと決めた。期待通りの熱戦で、前半は第1Q(クオーター)は互いに無得点、第2Qになると均衡が破れ、スティーラーズがFG(フィールドゴール)を2本決めたが僅か6:0である。
※ アメフトはクオーターと呼ばれるように1試合15分×4回で行う
ベンガルズとスティーラーズのロゴマーク
半分を終えて、片方は得点なく、スティーラーズやや優勢ではあったが、感触としては未だ勝利の女神はどちらにも微笑んでいないように見えた。
第3Qになりスティーラーズが1FG、1TD(タッチダウン)で15:0と一方的な差を付つけたところで、おじさんはベンガルズに暗雲が立ちこめた印象を抱いた。勝負の世界では内容は互角なのに差がついてしまうことがままある。この試合もそういう結果になる予感がしたのだ。
ところが好事魔多し、第3Q終盤まで堅実に得点を重ねていたスティーラーズだったが、最後の攻撃プレーで正QB(クオーターバック)ロスリスバーガーが負傷し、第4Qの攻撃からは控えのQBと交代するというハプニングが起きた。
そこからベンガルズの猛反撃が開始された。そしてついに第4Q残り2分辺りでTDが決まり16:15と1点勝ち越した。あとはエクストラ・ポイントで1点を加算するか、ツーポイント・コンバージョンで2点を取りに行くかだが、試合を安全にするためには3点差として相手のFGが決まっても同点という形にするのが戦い方だ。この場合、1点差も2点差も同じだから、ベンガルズはツーポイント・コンバージョンを選択し賭けに出た。そして失敗した。
残り1分50秒、スティーラーズは時間を見ながら慎重にFG圏内までボールを運ばなければならない。ところが攻撃開始早々、いきなり交代した控えQBがインターセプトを喫しターンオーバー、残り1分30秒くらいだったと思う。誰もがベンガルズの勝利を確信した。おじさんにも女神がベンガルズに微笑んだのが見えた気がした。ところがそれは錯覚で、美しい横顔を微笑みと勘違いしていたようで、女神様はまだベンガルズにはご尊顔を向けてもいらっしゃらなかった。
勝っている方が取るべき作戦、即ちベンガルズが時間を進ませるためにラン攻撃を用いたところ、RB(ランニングバック)のヒル選手がいいランを見せ4、5ヤードゲインした。そのままボールを抱えていれば良かったのに、距離を頑張りすぎて、ファンブルしてしまった。ボールは運悪くスティーラーズの守備陣が固まっているところに撥ねて、ご馳走様のターンオーバー、だがそこはフィールドゴール圏内までには相当距離がある。まだ5:5でベンガルズに勝利の可能性はある。
さて、攻撃権を得たスティーラーズはタイムアウトの数、残り時間、フィールドゴール圏内までの距離を考えると、基本はライン際のパス攻撃しかなく、それもどこかで大きなゲインが必要という難しい状況に変わりはなかった。しかし、スティーラーズは短いゲインを重ねながらファーストダウンを2度ほど重ね、次の攻撃でQBは中央にうまくパスを通しファーストダウンを取った。しかし、ベンガルズのディフェンスも瞬殺で潰し、さらなるゲインは与えなかった。時間は残り20秒程度、しかし、フラッグが出ている。結果によっては試合終了を宣告されるに等しい場合がある。
どちらの反則か? と固唾を呑んでいると、ディフェンス側すなわちベンガルズ側のファール、それも15ヤード脱退というから相当悪質なファールである。見た感じではパスキャッチした場面では左右からディフェンダーがタックルし、一瞬で倒すというさすがプロのプレーを見せて貰ったと感心していたので、どこか別の所でファールがあったのだと考えた。
しかし、スロー再生が流れると、ファールはパスキャッチのシーンそのもので、ボールをキャッチし、右から選手がタックルに来てほぼ同時に左から選手が体当たりに来た。その左側の選手が相手のアゴ辺りにヘルメットの頭頂をぶつけるように当たったのがファールということらしい。
プレーヤーは肩で当たったとジェスチャーで審判にアピールしていたが、スロー再生を観ると、アゴのカバーというか金網?のような部分に当たって、確かにまるでボクシングのアゴにフックが入ったように首を捻りながら倒れていった。元々頭頂からのタックルは危険すぎるので禁止されているようだ。しかし、プレーの中でヘルメット同士がぶつかるのは当たり前の光景なので、解説も一転二転していたが、結局、アンネセサリー・ラフネスなる反則を取られ15ヤード脱退となる。
このあたりの細かな反則は、おじさんには分からないが。いずれにしてもも、これで労せずしてスティーラーズは15ヤードのゲインとなった。しかしなかなか次のプレイに入らない。最後に、手に汗握る長距離のFGを見たいのに、
スティーラーズのコーチがフィールド内まで入り喚いているように見える。それに反応してベンガルズの選手が突っかかっていった。もみ合いのようなシーンがあり長い時間が経ってから、審判が出てきて反則を説明した。何もプレーしていないのに何の反則かと思いきや、アンスポーツマンライク・コンダクトなる反則で15ヤード脱退だという。これでスティーラーズは労せずしてファーストダウンを取った位置から30ヤード進むことになり、楽々FGを成功させ18:16と再逆転。
その後、18秒ほど時間があったけれど、キックオフリターンも成功せず、タイムアウトも使い果たしているし、あれよあれよでベンガルズの攻撃は時間切れ試合終了と相成った。
ターンオーバーのきっかけを作ったヒル選手はその後、ベンチに下がり目は伏せがちであった。誰も声を掛けに行かない。解説者も時間を使うことが目的なのに、ファンブルして相手に攻撃権を与えるとはと、厳しく言っていましたがその通りだ。1プレイして次のプレイまで30秒のインターバルが認められており、仮に4回の攻撃でファーストダウンが取れなくても、インターバルだけで1分半消費できる計算である。あとはパントで後ろに下げておけば、勝利は確実だった。
彼らは有名な大学を出た選手ばかりだが、アメフトの知識は幼稚園並みである。敗因を作ったターンオーバーと二つの重い反則の中で、許されるのは真ん中のアンネセサリー・ラフネスの反則だけである。
肩に行ったタックルが相手の体勢変化により少し上に当たってしまっただけで、まさにアクシデントの部類である。最後の反則も、相手ベンチの言葉にいきり立って反則を取られるとは、まさに愚の骨頂、もし敵の作戦ならまんまと引っ掛かった事になる。しかし、もっと悪いのはファンブルである。このプレイは救いようがない。
こんな最終盤のストーリーは小説に書けない。こんな事を書いても逆に才能がないと思われてしまうだろう。勝利の女神様は勝った方に微笑むのではなく、負けた方に精神的ダメージを与える神様なのかも知れない。ベンガルズのチームとファンには後味の悪い試合になった。にわかファンのおじさんもスティーラーズに乗り替わる間もなく終了したので、深夜に悪態つくしか術がなかった。
試合のハイライト動画はこちら
http://www.nfljapan.com/streaming/20160110-9512.html
by 考葦(-.-)y-~~~
【書き始め 2016-01-13 10:43:45】