南アフリカ国旗 出典:Wikipedia
9月19日、日本チームの初戦、日本vs南アフリカ戦を、最初は軽い気持ちで観ていた。冒頭にペナルティーゴール(PG)で3点を取りリードしたときも、これしか点を取れないんだから「確実に枠の間を通せよ」と祈っていたら、2本目のペナルティーキック(PK)は枠を外した。やはり、後は相手のトライに対して、こちらは時折、PGで返す展開を予想せざるを得ない。
※おじさんはラグビーを観戦するだけの人間だが、おじさんの解釈では、反則によりペナルティーキック(PK)を選択し、決まったゴールもしくは得点をペナルティーゴール(PG)と理解している。
だがプレイの途中で印象が変化した。低い当たりで相手のゲインを許さないし、スクラムも体重差をはねのけ互角に渡り合っている。それに何より、パスが強くボールを落とさない。これがどれほど大変なことか、他の試合を観た人なら解るだろう。
前日に行われた開催国のイングランドとフィジーの試合を観ていると、ノックオンが多すぎたから、大会で採用された公式ボールが滑りやすいのかと勝手に想像していたから、何事もないようにパスをつなぐ日本の選手達に驚愕してしまったのだ。
しかし、だからといって勝てるほどW杯のラグビーは甘くない。しかも相手はよりによって2回の優勝を誇る南アフリカだ。ちなみに伝説のオールブラックスを擁するニュージーランドですら、2回の優勝だ。日本が勝てることはないだろう。後半20分過ぎて日本の体力が衰えてきたら、一気に突き放されるとおじさんは見ていた。
南アに逆転される度に、ここまでかと思い、再逆転をすると、まだやるかと驚き、後半20分過ぎると、そろそろ目に見えて体力が衰える頃だと、醒めた目で見ていたところ、残り10分を過ぎても健闘して同点のままだ。しかし、その時は日本のゴール前で南アの厳しい攻撃が繰り返されていた。モールから2回抜かれてトライを許していたから、トライとコンバージョンで7点差をつけられ、残り時間で1トライ1コンバージョンで同点を目指すという苦しい状況に追い込まれた日本の姿が目に浮かんだ。
しかし、日本のペナルティーに南アがPKを選択したとき、おじさんは勝てるかも知れないと、初めて思った。1トライで逆転するからである。向こうは安全というより、堅実に守ればトライはないとふんだ選択に間違いはない。こちらは逆転の可能性があるというだけで、現実にはその確率は極めて少ない。
その後の日本の怒濤の攻撃はラグビー史に残るものとなった。南アのペナルティーの際、PKではなく攻撃を選択した。同点ではなく逆転を目指したのだ。だが如何せん残り時間がない。途中で時間が切れる。ストップは許されない。一度でも中断するとそこで試合終了になる。あくまでも1プレイだ。ボールが右端に渡ったとき、迷わず左へ回してきた。最後の最後、左端でトライしたまま滑って出てしまうほどのタックルを受けながら、インゴール内でタッチした。
トライか、トライが成立したのか? 大歓声の中でもおじさんは心配していた。テレビが呆然と座り込んでいる一人の南アの選手を映し出した。だが、解説者も何も言わない。はっきりと誰かトライが認定され勝ったと言ってくれ。待てよ、コンバージョンはどうした。時間が切れてもコンバージョンキックは出来るはずだ、と思ったところに、「コンバージョンは失敗したようです」とアナウンサーが言ったので、勝ったんだなと確信した。
気がつけば、肩がゴリゴリだ。突き放して冷静に見ていたつもりだが、一緒に観ていたカミさんが翌朝娘に話しているのを聞くと、うるさいし立ったり座ったり落ち着きがなく、一言で言えば「観戦しにくかった」のだそうだ。懇切丁寧にルールを説明し、用語を解説してやったのに……。歴史的瞬間に立ち会った感動はないのか。
解りやすくラグビーのルール等を解説されているjunさんのHPを発見した。
http://www.sports-rule.com/rugby/index.html
by 考葦(-.-)y-~~~
PS
翌日のイギリスの新聞が日本以上に驚愕の様子を書いていたようだ。本場の目の肥えた記者の賛辞は有り難い。
本文で書き忘れたが、ラグビーのフォワードの体躯は、サッカーのイメージと好対照に、男臭くむさ苦しい。だが、彼らは審判の指示は素直に聞くし、あれだけ激しく当たり当たられ、上に乗り上げ乗り上げられても、終わればノーサイド(敵味方なし)として互いに健闘をたたえ合う騎士道精神そのものである。日本の武士道にも通ずるものがあり、イギリスとは理解し合えると感じる。
それとおじさんの豆知識を一つ。皆さん混乱されていると思うが、所謂イギリスは旧のイングランド、スコットランド、ウェールズ、アイルランドの4か国が別々に出場できることになっている。現在、これにフランスとイタリアを加えて6か国対抗ラグビーが開かれている。何故、4チームも出られるの? という人には120年以上前からそういうものだったというしかない。
ちなみに、この6か国対抗ラグビーは、ウェールズが最多優勝回数を誇っている。2年前、日本代表はウェールズに勝って世界に衝撃を与えている。但し、この時は相手の主力がおらず、若手中心のチーム構成であった。
以上