まず初めに、前回の記事の終わりに、小林よしのりは、朝日新聞の慰安婦訂正会見を聞いて、〝つかえが下りた〟と言ったと、記憶で書いてしまったが、今確認してみると、正しくは「朝日新聞は謝罪してないが、とりあえず、 冤罪を被せた犯人が自白してくれたみたいで、気が晴れた」ということでした。訂正してお詫び申し上げます。おじさんの訂正は、どこかの新聞社と違って素早いのだけが取り柄だ。それよりも手間を惜しんで、自分のブログもチェックしていない手抜きの方が問題ですよね。以後、気をつけます。<(_ _)>

 ※ 不肖管理人の元記事 『小林よしのりは狂いが生じているのか』 
 ※ この記事を紹介された『本当の日本の歴史を伝える会』さんの元記事 
 ※ 小林よしのりのブログ内オリジナル記事、『むかつく朝日新聞バッシング


 ところで、慰安婦問題だけではなく、小林ほど叩きまくられた者はいないだろう。叩いたのはマスコミ、左翼団体や学者等である。問題によっては、保守層から主婦層、同和団体、中国……etcからも叩かれた。まあ、ありとあらゆる勢力を敵に回していたから、それも当然だ。幾つも裁判に訴えられ、結果は知らないが、この手の裁判は消耗戦に似て、どちらかが勝っても大いに消耗する性質のものだ。だから面倒だと放棄したり、ストレスに堪えられなくなったら負けだ。




 その間のストレスがいかほどのものかは、我々が想像できるようなものではあるまい。『週刊ポスト』によれば、朝日新聞は個人や(朝日が考える)右翼雑誌などは提訴するぞと脅かせばすぐに黙ると、社内的に高言しているそうだ。意見表明の場を持っている新聞社が社内向けとはいえ、こんな話をするとは、いよいよ臨終近しの兆候か。おじさんなど小市民保守は、提訴するぞと脅かされたら、意見に自信は持っていても、経済的に応戦できないので、すぐに口を閉ざすだろう。もちろんその前に歯牙にも掛けて貰えないだろうが……。


 だから、小林の苦しみ、ストレスの大本を作ったのが朝日新聞だと言うことは分かっているだろう。それなのに簡単に気が晴れたと言ってしまえば、そこで朝日の反省なり改善なりは終わってしまう。過ちはあったけれど、朝日のスタンスは従来通りでいいと思っているのか。それに、何故、「史料が出てくればどうするんだ」と言った知識人の先生方には、皮肉の一言もないのか。


 やはり小林はおかしい。淡泊であってはならない場面で、あまりにも淡泊過ぎる。同一記事内の櫻井よしこへ辛辣な言葉を見れば、性格が丸くなったとは言わせない。ならば、小林は、朝日を利するために気が晴れたという言葉を使ったのか。


  それでなくとも、今後、朝日はまるで御用学者や御用知識人のような人間を用意して、その連中が側面から朝日の主張を擁護し、現在の朝日バッシングの異常性を強調してみたり、朝日も問題があったが、バッシングする側にも大いに問題があるといったケンカ両成敗的な論点すり替えの手を使うことは目に見えている。


 そんな折に、小林の発言は朝日に安堵をもたらせた。そればかりか、同じコラムの中に櫻井よしこの〝朝日廃刊〟発言を捉え、言論弾圧だ、皇統の男系主義者だから極左だなどと支離滅裂な事を書いている。いやむしろ、こちらが当該コラムの本旨であり、結論にもなっている。もう小林には皇統問題以外でも、我々と同じ立ち位置で同じ方向を向いて、議論を展開して貰うことは期待できないというのか。


 通常の感性の持主なら、あれほど中途半端なピントのずれた会見で、怒りを新たにする以外の反応があるわけがない。やはりどこか で朝日新聞的言動にシンパシーを感じていたのだろう。


 小林を左翼帰りしたと見る人もいるが、おじさんはそうは思わない。小林の心の 深奥に朝日と同じ反日があるということではないだろうか。そしてその反日は先の大戦以前の日本に対してではなく、戦後の現代日本に対するものではないかとおじさんは見 ている。その意味で、朝日新聞とは出発点は異なり立場は違えども、共感を覚える部分があるのではないかと推測する。


 これまで小林は積極的に大東亜戦争に関する漫画『戦争論』を書き、過去の日本の兵士達の名誉を回復してくれた。その点、小市民草の根保守のおじさんとしては、感謝してもしきれないほどだ。だが、彼がこれまで多くの表現者と袂を分かったのもまた事実である。それも自分から……。


 古くは、『新しい歴史教科書をつくる会』に参加していたとき、親米派の西尾幹二会長(当時)以下他の理事と意見が合わず、同じく反米派の西部邁と共に袂を分かつ。


 その後、『わしズム』を創刊することになったが、初期の執筆者であった八木秀次(ひでつぐ)現麗澤大学教授とは今ほとんど親交がないだろう。こちらも皇統問題で男系を支持し、小林の宿敵になっているからだ。八木も早い段階で『新しい歴史教科書をつくる会』の会長に就任している。ということは、小林が加入している時に既に会員だったのだと思う。だったら、書いたものを読んだ記憶はないが、八木も親米派なのだろう。


 当時、自虐史観に染まらない〝普通〟の歴史を記述した教科書を切望していたおじさんは、小林が会に参加したことを喜んだ。しばらく蜜月状態だったが、突然、退会という事態になった。何故、袂を分かつほどの確執が生まれるのか理解できないおじさんは、小林の作品を読んだり、西部の著書を読んだりしたが、歴史的経緯に鑑みれば、礼儀として反米でなければならない、確か『反米という作法』だったか、二人の共著(対談集)に、そういう言い方で説明が為されていたと記憶している。

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 そう言えば、9.11のアメリカ貿易センタービルのテロの時、小林は〝小躍りして〟喜んだという事を書いていた。その時おじさんは、ビルで火に追われ、高層の窓の外にへばりつく人々を見て、胸が痛んだ。だが、その時は、おじさんが大東亜戦争に関する理解が浅いせいだと解釈した。つまり、自分が戦ったと思えるほど深く心を寄せれば、小林の様な心理状況になるのかも知れないと。


出典 アメリカ 〝DAILY NEWS〟



  あと、いま『わしズム』執筆陣にどういう人がいるのか、おじさんはとっくに距離を置いているので知らないが、創刊当時の執筆陣は残っていないのではないかと推測する。何故なら、彼は 『わしズム』の執筆経験者であっても、自らと意見が異なる人々を平気で切り捨て、作品中でバッシングするといった場面を何度も観ているからだ。


  確かに、『わしズム』は小林が自分が好きな表現者に書いて貰うという方針でスタートした。そのことは、当時、小林の著書をほぼ購入していたし、『わしズム』も出る度に買っていたからよく知っている。 だから、好きじゃない人、見解が相違する人に書かせる何の義理もない。だが、その後、自分の意見を漫画で表現し、当該執筆者を批判(攻撃)するというやり方は如何 なものか。こういうやり方だと、誰も彼の所には残らなくなる。


 例えば、同じ草の根保守でも、安倍総理を戦後待ちわびた理想の存在と見て、政策の全てを応援する人もいれば、おじさんのように、同様に安倍を待望していたけれど、TPPと消費税増税だけは反対という者もいる。


  では安倍に首相を長く続けて貰うために、少々疑問の政策でも賛成する人と、おじさんが啀(いが)み合うかというと、そうはならない。貴重な草の根保守仲間 として尊敬し、以後もその人の意見に耳を傾けることに何等変わりはない。また、安倍が消費税を導入したから、おじさんが反安倍になっているかというと、そうはなってい ない。主義主張、意見を戦わせるというのは、そういう事だと思っているからだ。


 しかし、小林は違う。今後も彼は意見の相違者に絶縁宣言をし続けるつもりなのだろう。もちろん、皇統問題など決して交わることはない問題については、それも致し方ない事なのかも知れない。おじさんだって永久に交わることのない左翼思想の持ち主は、敬して遠ざける事が多い。しかし、自治会の付き合いくらいはする。


 今、『わしズム』の書き手にはどんな人がいるのだろうと、調べてみたところ、何と廃刊されていた。ざまあみろとは思わないが、思ったより早かった。おそらく廃刊前は初期の執筆者は誰もいなかった筈だ。万般について、意見が全く同じ人などいるはずがないからだ。


出典 http://readymade.exblog.jp/page/23/


 相違するから人生は味があり深みが生まれるのだ。それぞれ個々の存在意義もあろうというものである。


 小林よしのり――保守ではあるが、戦前戦中の日本に異常な愛を抱き、現代の日本と日本人に不満を持つ人であり、皮肉な形にはなったが、現時点で朝日を擁護し、櫻井よしこを極左よばわりするに至っては、この御仁も反日的日本人の系譜に載せない訳にはいかない。