産経新聞2012年12月04日00時02分
 24時間に及ぶ救助作業も実らなかった。山梨県の中央自動車道笹子(ささご)トンネルで起きた天井板事故は3日、9人が遺体で見つかった。「助けられなかった」。消防隊員はうめいた。天井板約330枚(約360トン以上)ものコンクリートのかたまりが突如、3台の車を襲う。当時、トンネル内には約50台の車が走行していたと推定される。なぜ3台だけが被害に遭ったのか。うち1台はあと30メートル走っていれば、惨事から逃れられていた可能性がある。奇跡的に女性1人が生還したが、何が明暗を分けたのか。
Livedoor NEWSより抜粋
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 トンネルの天井が落ちてくるとは……。


 テレビ画面の上に、トンネル内で事故があり、煙が出ているという一報が出てから、隔靴掻痒の報道ばかりで、これはいつもと違うなという印象を持っていた。


 やがてトンネル上部の天井が落下し、その下敷きになったドライバーと同乗者が死亡した事が判明した。


 判明したが、いま一つピンと来ない。天井って何だ。おじさんも高速によく乗り、トンネルも走るが、天井なんて見た事がない。


 夜のニュースで、キャスターが模型を駆使し専門家の解説を交えて説明しているのを聞き、漸く得心した。


 だが、その時点では、トンネル上部から天井を吊すために下ろしているその構造物の上部の固定が外れたのか、その下部の天井とのジョイント部分が外れたのかは不明ということであった。


 しかし、おじさんは直感的に、上部の支えもろとも落下したと思った。何故なら、仮に中央にある下部のボルトが外れたとしても、両脇にも乗っているのだから、危険ではあるが、あれほどV字には壊れないだろう思ったからである。


 支えている筈の中央の構造物が、下への負荷となって、あたかも空手で瓦を割るように、大きな怪物の手刀が振り下ろされたように見えたからである。


 ここで、例によって有識のコメンテイターから、高度成長期の工事だから、コックリートの強度が規定に達していなかったのではないかとか、手抜きとまでは行かなくても、仕事が雑だったのではないかといった声が聞こえた。


 いずれも少しずつ当たっていると思うが、おじさんはメンテナンスという面で、いずれ寿命が来るという視点を政治家や官僚が欠いていたと思うのだ。


 トンネル自体の寿命は長くても、それを維持するボルトや金属にも寿命がある。それをどう点検し交換するかが次の課題だ。


 たしかにアスファルト舗装や、ゴミの撤去や、周辺の樹木・雑草の管理はよくしているのを見かける。だが、トンネルの天井板はどうであったか。


 おじさんは、トンネルが2層に別れており、天井が吊り下げられた構造だとは知らなかった。


 だが、それは素人だから許されることであり、管理者や設計者・工事施工者はそうはいかない。


 天井板の上を歩けるのかどうかも知らないが、もし歩けないのなら、天井の上の構造物の危険性をどうやって発見するのか、仮に危険な箇所が発見されたとして、どうやって工事をするのか。まさか永久に保つと信じていたのではあるまい。


 これはジョークに聞こえるかも知れないが、現に永久に保つと思っている政党があった。


 記憶に新しい、高速料金を無料にすると言った政党だ。維持管理をするために有料なのだという至極当然の反論も、投票した国民には通じなかった。だから、政権を取ることが出来たのである。


 民主党に投票した人も、政治家も永久に今の状態が存続すると思っていたとしか思えないだろう。


 これに関する反論は幾つも想定できるが、おじさんが言いたいのは民主党だけではなく、他の政治家も官僚も、もしかしたら運営会社も、そんな気持がどこかにあったのではいなか、ということである。


  おじさんは物事を考える場合に、身近なものに置き換える、最大限に極端なケースを想定してみる、などという手法を用いる。その中で、一番適したケースを採用し、考えを進めるのである。


 もし、トンネルの中にギロチンがぶら下がっていたらどうだろうか。しっかりと固定されているから大丈夫だと政治家が幾ら太鼓判を押してくれても、大型トラックが走る振動でねじが緩むのではないか、金属疲労や、コンクリートが劣化してコンクリートごと落下するのではないか、と心配は尽きないだろう。


 おじさんは、この例が極端だとは思わない。限に人が大勢死んでいる。生死を分けたのは偶然だけである。その時、下に居れば必ず死ぬのだ。ギロチンをぶら下げているのと何が異なるというのか。


 安倍が言ってサヨク系マスコミから大いに不評を買った公共投資を、このような設備のメンテナンスに使ったらどうだろう。箱物を建てるばかりが公共投資ではあるまい。