夜、田舎の山道でやけにライトの眩しい車が止まっていた。

 対向は無理な道幅だったから、
こちらは少し広めの所で相手を待つことにした。

 しかし、相手もおじさんの車が来ることを察知して、
広めの所で待ってくれていたようなので、こちらが動くことにした。

 だが、なにせ光が眩しすぎて道がよく見えず、チョロチョロとしか進めない。

 相手は、それを止まっていると思ったのか、パッシングして下さった。

 ただ、パッシングの際、ライトが上向きになっていることにお気づきになり、一旦、ビームを下げて、改めてパッシングをなさったのである。

 おじさんは道の傾斜の加減で
ライトがビームのように向かって来ていると思っていたから、
ちょっと可笑しかった。

 見やすくなった視界で改めて向こうの車を見ると軽のトラックで、
運転手はおじさんの父親くらいの年代だった。

 おじさんはもちろん軽く会釈し、お礼のクラクションを短く鳴らして行き過ぎた。

 普通なら、ビーム状態で対向するなんて、無礼な奴だと怒るところだが、
親切さと律儀さが伝わってきて、まったく腹が立たなかった。