東京は奥が深い | Re-SILVERFLEURET PROJECT

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YAHOOブログから引っ越してきました。駄文小説等を投稿していこうと思います。

 東京は奥が深い。私がそう感じたのはちょっと変わったきっかけだった。

 私は10年ほど前まで東京に住んでいた。会社は渋谷区富ヶ谷。目黒区祐天寺のアパートから通っていた。JR渋谷の駅から歩いて10分ほどで行ける距離だった。

 ある時、富ヶ谷からNHK前を通って渋谷に向かった。途中、渋谷ビデオスタジオ方面に向かう前に宇田川町の坂道を歩いてみた。ふと、右側に違和感を感じ、見るとそこに『2.26事件』の慰霊碑があった。その一角だけが浮いている感じだった。明らかに雰囲気が違うのだ。これが世に有名な心霊スポット。偶然だった。

 そしてまたある晩、会社の同僚に誘われ、肝試しに行く事になった。男女合計5人。言い出しっぺはKさん(男)。その昔、代々木ハイツって所に住んでたそうで、そこは有名な『傷だらけの天使』で頻繁に撮影に使われたとこらしい。代々木駅から歩くこと5分くらいだったか。時間は夜8時頃。人通りも多い駅前通りである。新宿区である。その一角にその建物があった。
 3階か5階位までは雑居ビル。色んな店が入ってた。でもちょっとうら寂れている。そこから上がマンションになっている。非常に古臭い。文字をびっしりと書き連ねた張り紙を張った部屋。右翼の人が住んでいると思しき部屋。いかにも幽霊が出そうな部屋。まるで不思議世界。
 Kさんはそこの部屋の一つに住んでたそうで、真夜中に部屋の中で見知らぬ人に声をかけられたらしい。そう。幽霊である。いかにも雰囲気がある所なので変に納得出来た。屋上に抜ける階段があるが、崩れかけていて危険だった。建物内全体に暗いオーラが漂ってたっけ。

 人がたくさん行き交う東京。繁華街。ストリート。でもその一角に、『忘れ去られた過去の記憶』と『遺物』が残っている。気付く人だけが気付き、誘われる人だけが誘われていく。

 人の波間の中にフッと現れる『何か』。そんなものがいたる所にひっそりと存在しているのが東京だ。