『さみしいうさぎが わらった日』 | 言葉に想いをのせて 〜描く未来はいつも、光り輝いている〜

言葉に想いをのせて 〜描く未来はいつも、光り輝いている〜

伝えたい言葉がある…
届けたい想いがある…

『絵本出版の夢を叶える』までの過去記事と、
これまでの人生や日々の想いを、皆さまの心と重なったり、響きあったりできますことを願いながら綴ります。

     さみしいうさぎが わらった日
 
 
ちいさな うさぎは  ひとりぼっちでした
 
おとうさんも おかあさんも 
きょうだいたちも いるのに

なぜか 
こころが ひとりぼっちでした
 
おとうさんのように 
賢くないからでしょうか

おかあさんのように  
優しくないからでしょうか

おにいちゃんのように  
大らかでないからでしょうか

おねえちゃんのように 
美しくないからでしょうか

おとうとのように 
甘えることができないからでしょうか

いもうとのように  
愛らしくないからでしょうか
 
まわりの みんなが 輝いて見えました

この世の だあれも 
じぶんを 必要としていない 
そんな気がしました


こころが さみしいと 
じぶんに 自信が 持てません

うさぎは じぶんが 嫌いでした

輝いて見えるみんなのことも 
嫌いでした

気付くと こころの 殻にはいった
さみしいうさぎに なっていました


優しい 大好きな おじいちゃんだけが さみしいうさぎの 味方でした

おじいちゃんと あそんでいる時だけ 
しぜんな じぶんで いられました
 
でも  ある日  おじいちゃんは
少し大きくなった 
やんちゃな おとうとと 
なかよく あそぶように なりました
 
さみしいうさぎは   
前より   もっと さみしくなりました

 
ある朝  おじいちゃんが 
家から いなくなりました

病気になったのです

さみしいうさぎは 
力のなくなった 
おじいちゃんの手をにぎって 
病院へ向かう  おじいちゃんを 
見おくりました

でも   
前のような 笑顔を 
向けることは できませんでした

そして それきり  
おじいちゃんは 帰ってきませんでした

さみしいうさぎは  
前より   もっと さみしくなりました
 
こころの殻は 
ますます あつくなっていきます

もう まわりの 言葉も聞こえません

じぶんの言葉も 伝わりません

あつい殻の中で 
いつも ちいさく 泣いていました
 

いくつもの 季節がすぎて
さみしいうさぎにも  
たくさんの出会いがありました

出会いの数だけ 
いろんなことを知りました

いろんなことを知ることは  
じぶんを 認められる 
きっかけにもなりました

不思議なことに 

じぶんを 認められるようになると 
まわりのみんなのことも 
認められるようになり

じぶんを 好きになると 
まわりのみんなのことも 
好きに なっていくのです

そんな時   殻が少しだけ 
うすくなる気がしました
 
おとなになった さみしいうさぎの前に ある日   とても優しい   うさぎの青年が あらわれました

そして   どんな時も さみしいうさぎを とてもだいじに 想ってくれました

さみしいうさぎも やさしいうさぎを 
とても だいじに 想いました

さみしいうさぎから  少しずつ 
さみしさや 不安が消え  
こころの殻が  
しだいに うすくなっていくようでした

うすくなった殻の向こうには 少しだけ 明るい 世界が 見えました
 

さみしいうさぎは   
優しいうさぎと けっこんしました
 
やがて…

かわいい  かわいい 
赤ちゃんうさぎが 生まれました

うでのなかの 赤ちゃんうさぎは
おかあさんになった さみしいうさぎを  そのまま全部  うけいれてくれました

ただ ただ 必要としてくれました

ちいさなちいさな 赤ちゃんうさぎは
おおきなおおきな しあわせを
はこんできてくれたのです
 
その時  さみしいうさぎを おおっていた 殻が すーっと消え

世界が キラキラして 見えました

生まれてはじめて 見るような 
世界でした

じぶんは   
ありのままの じぶんで いいのだと 
思いました
 
そしてまた  
ありのままの 赤ちゃんうさぎを 
この先ずっと 守りたいと 思いました
 
さみしいうさぎは 強くなりました

さみしいうさぎは 赤ちゃんうさぎに 
出会って  はじめて 気づいたのです

わたしも こんな おおきなしあわせを はこぶために 
この世に 生まれてきたのだと

そして この キラキラした世界で  
たくさんの 愛をもらって 
生きてきたのだと

ただ この存在が 
大切なのだということを

ふと気づくと 
うさぎのまわりは  たくさんの友や   仲間や   家族の笑顔で  あふれていました
 
さみしいうさぎは   もう ちっとも 
さみしくありませんでした

この世界の すべてを 
いとおしいと 思いました

ありがとう…

だれにともなく つぶやきました

そして   

にっこり 優しく  ほほえみました   

                                                             end