2009 10月25日 21:00 Barcerona VS Zaragoza
『夢の』 と、表現しても決して大袈裟じゃないでしょう。
東京からバルセロナまで10430km。
欧州最大の98600人収容、FCバルセロナのホームスタジアム、カンプ・ノウ。
現在2億4000万人を超える競技人口を抱えるサッカー界にあって、
プロの選手だけでなく一般の人々にも継続的に愛され、魅了し続ける憧れるクラブ、FCバルセロナ。
他リーグと比べてもとりわけ、攻撃的といわれるリーガエスパニョーラにあって
攻撃的、創造的、ファンタスティックそして豊富なタレントを持つチームカラーを持つ。
かつて、マラドーナ、クライフ、ハジ、ロマーリオ、リバウド‥‥今も伝説の選手がプレーしていた場所。
リーグ優勝19回、チャンピオンズリーグ優勝3回、UEFAカップ優勝3回、カップウィナーズC優勝4回。
さらに前年度、欧州チャンピオンズリーグ優勝を果たし、名実ともに現在世界一のチーム。
これは現実か??
信じられん。
事前にスタジアムの傍に宿を移し(すごいやる気)、歩く事10分。
試合開始2時間前とはいえ、スタジアム周辺では、すでに人だかり。
"ヨーロッパでサッカーを見る"という響きはアツイ男の集い、そして物騒なイメージがあったため、
パスポートを除く貴重品はすべて宿のロッカーに預けてきた。
が、予想に反して会場周辺に集まってきた人達はカップル、家族連れ、お年寄りの比率が多い。
こいつらフーリガンっぽいなんてのは探すほうが難しかった、というか見つからなかったくらい。
まさに、日曜日夜に行われる祭典。
そのやわらかい雰囲気からは老若男女問わず、バルセロナを愛しているオーラが出ていた。
女性でメッシやイブラヒモビッチのユニフォームを着ているのはよくわかるが、
イニエスタやプジョルのユニフォームを着てる人が意外に目に付く。
目が肥えてます。
とりあえずスタジアム前にある商店で、
奇声を上げ続けるおばちゃんから3倍以上に値上がりした缶ビールを購入し、ガソリン補給を済ませる。
試合開始1時間半前、スタジアムへのゲートが開いた。
席は決まっているもののみんな猛ダッシュでスタジアムに駆け込むのかと思いきや、
寄り道したり、立ち止まって話したりして、みんな全然焦らない。
なんとな~くおれも小走りから余裕の徒歩へ切り替えてみる。
しっかし、サッカー専用とは思えない規模のスタジアム。
チケットに記されたエントランスがスタジアム周辺のわかりやすいところに無かったため、
無駄に一周してしまった。
この時、試合の時間はサマータイムを基準にしていることを知らず、「15分前だ!まずい!」と思い、
キスを交わす道行くカップルとは対照的に明らかに焦ってスタジアム周辺を走る私。
「なんだ周りの人たちのこの余裕は!?」と思ったが実際は、1時間15分前。
カメラを盗まれた時も、こんなに焦らなかったぞ。
<スタジアム外観> <歴代エンブレム>
汗だくになりようやく到達したエントランスを抜け、スタジアムないへ。
し、心臓の音が聞こえる‥‥
うわー‥‥
この見え方、たまらん‥‥
間もなく目の前に広がったのは‥‥‥
OH、MY、カンプ・ノウだよ!!!!
本物だよ!!
てかグランド、近っ!!
しかも運良く、コーナーフラッグ前ではなく限りなく中央に近いシート!
席の高さもちょうど良し!
理想通りの席なんてかなりツイてるぜ!
開始30分前。
バルセロナ選手のアップが始まる。
<プジョルの胸板厚すぎ> <イブラヒモビッチのでかさもよくわかる>
アップの段階で指示を出しているのはプジョルではなくシャビ。
そう、試合をコントロールしているのは紛れも無くこの男。
軽いダッシュを済ませ3人一組でボール回しが始まった。
ボールを蹴る音まで聞こえる。
そして釘付けになったのはシャビ、プジョル、イニエスタの何気ないボール回し。
なんて速さだ!
鬼のようにパスが速すぎる!
そいつはシュートか!?
いとも簡単にそれをダイレクトで叩くシャビ、イニエスタ。
プジョルはワントラップ派。
プジョルには時たまヘディングのパスを送るイニエスタ。
やっぱり彼は天才。
プジョルのヘディング。競り勝てる気がしない。
アップのが終わり試合開始直前。
さっきまでガラガラだったスタジアムがウソのように埋まりだす。
選手紹介のアナウンスが終わり、ふと顔を上げると‥‥
ずっと鳥肌立っていたけど、グリンピース位の鳥肌立ちました。
これぞヨーロッパのスタジアム。
大好きなサッカーで、ヨーロッパ1のスタジアム、世界一のチーム、そしてこの熱気。
バルセロナ協奏曲の幕開け。
<バルサ、スターティングイレブン>
ビクトール・バルデス
プジョル ピケ チグリンスキー マクスウェル
ブスケッツ
シャビ ケイタ
メッシ イニエスタ
イブラヒモビッチ
インテルから移籍金4000ユーロ(52億8000万)で獲得したイブラヒモビッチに、
年俸13億超のメッシ‥‥
一人の人間に支払う金額とは到底思えない額。桁が違う。
それだけヨーロッパにおけるサッカーの大きさ、市場のでかさを物語る。
元々労働者階級のスポーツとして根付いたサッカー。(貴族のスポーツはラグビー)
今やサッカーは文化であり、ビジネスであり、娯楽であり、希望でもある。
そして選手の背負う重圧も計り知れない。
94年ワールドカップで自殺点をしたコロンビアの選手が銃殺されたように、
イタリアの首相がACミランの会長をやってしまうように、
その影響力は単なる一スポーツとして認識するのはナンセンスといえる。
さて、ここからはバルセロナの攻撃と守備について。
試合開始直後からボールを圧倒的に支配率するバルサ。
サラゴサは完全に引いて無理に前線のプレッシャーをかける気配も無く、とにかく中に中央を固めている様子。
<守備面>
この試合では特に押し込まれる場面は非常に少なかった。
ただピケによるパスミスからカウンターを受け、手薄になった最終ラインを突破されかけたり、
またサラゴサ右サイドのペナント(マッチアップはマクスウェル)の突破から数少ないピンチを招く事はあっても、
完全に崩されてという場面は少なかった。
特に効いていたのはボールを取られた後の切り替えの速さ。
相手がゆっくりパス回しをする前に中央の三人(シャビ、ケイタ、ブスケッツ)が精力的にプレッシャーをかけ、
サイドバック、もしくはウイングの選手とともにとり囲み、スペースを与えないプレッシャーがあった。
これは、ライカールト監督時代から浸透しているやり方。
そして、ディフェンスラインとオフェンスラインの幅をギリギリまでコンパクトに保ち続ける。
そこに運動量と共通意識が加わり、最初の4-3-3の陣形が大きく崩れることはなく、
結果的にフリーな選手を周辺に作らず、玉際で激しくプレッシャーかけ続ける徹底した守備。
ショートパスで出しどころを無くし、苦し紛れにロングボールを入れさせればOKなのだろう。
要は、デイフェンスと相手フォワードで1対1の状況を作らない戦術。
そして、この試合で運動量、瞬発力、カットの鋭さでケイタの貢献度が一番だったように思える。
プジョルに至っては対人能力が強すぎて、右サイドから崩される雰囲気すらなかった。
胸板も厚すぎ。闘志漲りすぎ。
基本的に足技がそれなりにあり、パスを出せる選手がスタメンに選ばれる傾向のあるバルサDF陣。
もし、一人で状況を打開できるようなフォワードが相手チームに居たならば、
どのような対策と守備になっていたのか興味が沸いた。
とりあえず、プジョルが居れば大丈夫。
<攻撃面>
完全に引いたサラゴサの警戒も強く、なかなか自由にシャビ&前線に縦パスを通せない。
そんな場面では基本的に最終ライン4人+ブスケッツ間でパス回しをしながら様子をうかがう。
そしてバス回しの最中、ごく自然にブスケッツが最終ラインの中央に入り、
センターバックのピケとチグリンスキーがサイドバックの位置まで大きくワイドにサイドへ開く。
すると、両サイドバックが押し出され、サイドに厚みが出た状態になると攻撃のスイッチが入る合図。
ピケ ★ブスケッツ★ チグリンスキー
プジョル マクスウェル
シャビ ケイタ ↓
↓
メッシ
イブラヒモビッチ ←イニエスタ
同時にボランチのブスケッツがセンターバックの位置まで下がった事で、シャビとケイタにもスペースが生まれ
中盤からのアクションも期待できるようになる。
フォーメーションが4-3-3から3-4-3への変化。
この日の左サイドバックが攻撃力のあるマクスウェルだったこともあり、攻撃の多くは左サイドからだった。
まずキープ力鬼のイニエスタにボールが渡ると、安心してマクスウェルが上がり、パス交換から崩す形。
もしダメなら、中央・右サイド寄りに構えているシャビへ渡し、また攻撃を組み立てなおす。
右サイドではプジョルは無理に上がらず、とにかくメッシが仕掛けられるスペースを空けておく。
(プジョルが駆け上がると、サポーターは非常に盛り上がる)
メッシも開いたまま、ポジションチェンジをせず、時を待っている状態。
一度メッシにボールが渡ると、まさに弾丸のようにダイレクトにゴールに向かっていく。
めちゃめちゃ速い。小股ダッシュ型のドリブルも手伝って一人早送り映像になってしまう。
なので、DFが止める時はファールばっかりになってしまう。
そこは仕方がないと思います。
左サイドもダメ、右サイドもマークが厳しい、すると時たまシャビから送られるイブラヒモビッチへのハイボール。
対策したところで止められない事になっている。
ずば抜けたタレントを有するバルセロナ。
個人レベルの高さは説明不要だが、
特に感じたバルセロナの攻撃の素晴しさは一貫性と流動性のバランスの良さにあると思う。
それが顕著に現れていたのが、個人の特性に見合ったポジションチェンジの巧みさ。
ゴール前に流れ込む時と、突破にかかった時以外、
まるでゲームのように綺麗に3-4-3の陣形が保たれ続けている。ビックリするくらい。
イニエスタとケイタが入れ替わると、中央からの攻め方の質が変わり、突破が増える。
ブスケッツとシャビの位置が入れ替わると、最終ラインからの縦パスが増える。
そして、マクスウェルは飛び出しのタイミングを計り、メッシはフリーになるタイミングを計っている。
ここでやはりキーマンになっていたのはシャビとイニエスタ。
特にシャビにボールが入ると、全体がよく動く。
イブラヒモビッチにハイボールの縦パスが入るときは、ほとんどシャビから。
攻撃の緩急に変化をつけたい時、行き詰った時、突破口が見えない時には、
シャビにボールが渡りリズムを取り戻す。
あまり目立つわけではないが、明らかに頼りにされている。
そのシャビを見ているとピッチにいる誰よりも、酔うんじゃないかと思うくらい首を振り続けて、
常に誰がどこにいるか、どこにスペースがあるかを把握していた。
今まで生であんなに首を振り続けている選手見たことない。
90分あれをやり続けたら、人によってはムチウチになると思われるくらい。
首を振って状況を確認するのは、サッカーの基本。
その基本があんなにも高いレベルでやり続けられるがこそ超一流なのかもしれない。
テレビではなかなか確認することのできない存在感があった。
シャビはやっぱりチームの心臓だった。
そんなバルセロナはゴールラッシュ!
まさかカンプノウで7ゴール(6-1)も見れるとは。
ケイタ (ママディ・ケイタじゃないよ) 爆発。
イブラヒモビッチ鬼の決定力。
メッシ止めるの無理。
スタジアムはバルセロナファン一色。
アウェイ側なんてなく、全部バルセロナファン。
元々郷土愛が強いサポーター達。
そんな彼らはサッカーに対して目が肥えている。
日本のJリーグだと、無駄にブーイングをしてみたり。
会場が沸くのはゴールシーンや目立つプレーだけだったりする。
しかも一部の熱心なサポーターだけ。
ここでは、
相手と競り勝ったとき、なんとか相手の攻撃を凌いだ時、気持ちの入ったプレーをした時、
積極的に攻撃を仕掛けてカットされた時に対しても、スタジアム全体で拍手が巻き起こる。
一番ビックリしたのが、キーパーにバックパスをしたタイミングでも会場全体で拍手。
こぼれ玉になって、easyな状況でなかったのがみんな揃ってよくわかっている。
ファンに愛されすぎているプジョルだと、攻めあがってミスしても会場レベルで拍手。
ダメでもトライに拍手。
バックパスでも相手の攻撃を凌いだら拍手。
もちろんシュートの後にも。
The欧州の「ウー」っていう太いため息とともに。
人で埋まった10万人レベルの拍手が響くスタジアムの雰囲気は、例えようのない心地よさ。
単なる娯楽じゃないね。
愛情がある。
そしてこの規模で全体が一つになる。
選手が交代するときにはスタンディングオーベーション。
写真を撮った後、さらに多くの人が立ち上がっていた。
こういう事が自然に出来るっては見習うところな気がする。
そして、その期待を一身に背負い戦う選手がかっこよすぎた。
これはもう単なるスポーツじゃないね。
オーケストラを見に来ているみたいだった。
世界で一番攻撃的で見るものを魅了するリーグ、リーガエスパニョーラ。
その中で誰もが憧れるクラブ。
一番見たかったクラブ。
この経験‥
一生酒の肴になるわ。