世界中の人が共通で持つコロンビアの印象。

 

それは、麻薬・コカイン・ゲリラ・コーヒー。


まあ、ネガティブ極まりない。



麻薬・コカイン・ゲリラ(武装強盗)……
盛んなことは確かだろうけど、世界でこの3つがない国を探すほうが難しいと思う。


この三つの印象をより強くコロンビアに植え付けた、

世界的な麻薬王であるパブロ・エスコバルという人物を抜きにはできない。


メデジンの貧しいスラム生まれの彼は、1970年代にはメデジンカルテルという世界的な麻薬組織を作り、

最盛期には世界のコカインの8割を支配していたという。南米の隣国から得たコカインを中米に売りさばくルートを確立していき、その支配力はアメリカ大陸だけにとどまらなくなっていった。当時エスコバルも世界で7番目の富豪として雑誌に取り上げられるほどだった。コロンビア政府やアメリカ政府と敵対し、強盗・誘拐・殺人という黒い影を持ちながらも、一方で貧困層の住宅建設などの慈善事業にも熱心な一面もあり、一部のメデジン市民からの支持もあったという。さらにサッカーのスタジアム建設をしただけでなく、自身もサッカーチーム、アトレチコ・ナシオナルのオーナーとしての顔を持っていた。


その後、コカイン流入に頭を痛めたアメリカ政府とコロンビア政府によってエスコバルは殺害され、それに伴ってメデジンカルテルは衰退した。エスコバルが生きていたのは1949年~1993年まで。こんなにもつい最近まで世界的な麻薬組織として君臨し、特にアメリカ大陸の麻薬事情を牛耳っていたのならば、メデジンという町レベルでなく、"コロンビア=麻薬・コカイン・ゲリラ"という印象をエスコバルが植え付けてしまうには十分な勢力だったと言える。

現在はメデジン・カルテルではなく、カリ・カルテルが主導権を握って麻薬市場で力を持っているらしい。



例えパブロ・エスコバルとメデジン・カルテルという組織のことを知らなくても、我々が持っているコロンビアへの印象は彼らの印象と直結している。


裏を返すと、彼らが働いたネガティブなイメージと知識しか持ち合わせていないということにもなる。


まあ、そんな悪印象を一気に引き受けたコロンビア。
悪印象スタートからコロンビアを出る頃には印象がガラッと変わっていた。



治安に関して言えば、
海外旅行で心がける基本的な事をしっかり守っていれば問題ないイメージ。

人気のないところへ行ったり、夜中一人で行動したり、カメラをぶら下げて歩いたり、
怪しい人に近寄らないようにしたり、危ない地区(低所得者の住む地区)に行かなければ、
よほどスキがなければ大丈夫かな。


あとは運。


悪い話だと、銃を突きつけられたり、空港から出た瞬間大きな岩を頭に投げつけられたり、

そういった直接バイオレンスな強盗の話も聞く。


大都市ボゴタの一日の検挙される人の人数は40人ほどだという。
思った以上に多くない。


都市部や中心部には警察の姿もよく見かける。
まだまだ自分で判断できなさそうな若いポリスもたくさんいるけど、
彼らもまた一人で行動せず群れてパトロールをするので問題はなさそう。


国境の町イピアレスではビリヤード場にいる人全員壁に両手を着いて身体検査をされている様子もみた。
国の治安改善に相当力を入れている印象だった。


ただ、バスに乗り込むときや人ごみにいる時にはコロンビア人ですらリュックを前に担いでる姿を見て、
いろいろ紙一重だな~って思う。




とはいえ、そんな治安どうこうがどうでも良くなるほど親切な人が多いことに驚かされる。

初日にあったAndresに代表されるように、とにかくみんな柔らかくて積極的。


ある程度旅した事がある人ならば、
例えなんの情報を持たずとも旅行ができるほど人に助けてもらえる世界的に見ても稀な国の一つだと思う。


それくらい人が魅力的な国だと思う。


お店での対応もどこかアジア的な丁寧さがある。


それは言葉使いにも言えることで、「セニョール、セニョーラ」という呼び声や、
お店を出るときにも「ムチョグスト」(お会いできて嬉しいです的な言い回し)と言ってもらえることもしばしばで、とにかく言葉使いが丁寧。


それが普通の売店でもそうであったりする。


例え、言葉が良くわからなくても丁寧に接客してもらえてるかどうかは伝わる。
年上の人や人に何かを頼む時、相手がタクシーでもそういう場面はたくさんあった。
それはコロンビア人同士であっても同じだったりする。


道に迷って聞けば、たまに行きたいところの目の前まで連れて行ってくれたり。
カメラを出した時には、わざわざ遠くから戻ってきて、

「この辺はちょっと危険だからカメラは閉まったほうがいい」と忠告してくれたり。



とにかく人に何かを尋ねたりするのにストレスはなかった印象。


誰か一人と話しているとどんどん人が興味津々で集まってきたり、二回目会った時には、10年前くらいから知り合いじゃないか?って、錯覚するほどのリアクションをとってくれたこともあった。


そして、驚くことにたくさんのコロンビア人に日本から来たと言うと、

「地震は大丈夫だったのか?」と声をかけてもらえたこと。

アイス売りのおっちゃんも会って10秒後に「地震は大丈夫だったのか?」と関心を持ってもらえていた。


ラテンの陽気さと真面目さと柔らかさを併せ持ち、
相手の事を考えられる器を持つ人々がたくさんいたように思える。



コロンビアという国のイメージは最悪で、あの有名なガイドブック「地球の歩き方」ですら、
「行くな!」と言わんばかりに紹介のページが数ページだけという始末。


ただ途中で会う旅行者から生の声を聞くといつも正反対だったし、実際自分でもそう。


思い出せばいつも危険だと言われているところや、
まったく聞いたことも馴染みもないところにいる人ほど、素朴で無償の優しさを誇らしげに配れる人が多かった。


もちろんチーノ攻撃からの冷やかしの目で見られて不愉快な思いもするし、いい人だけでは決してないけど、
やっぱりこの国の魅力は"人"。


ネガティブなイメージスタートだから余計に美化して見えちゃうっていう感情を差し引いても、
やっぱり親切なものは親切だった。


ある日、とあるヒゲの生えたおじさんにコロンビアの何が好きかと聞かれて「人」と答えた。
その時のおじさんの誇らしげで「やっぱりな」という表情。



自分の国の誇れるところが"人"。



例え今後旅行者が増えて彼らが旅行者に慣れて人が擦れて行こうとも、
彼らコロンビア人にとって誇るべきものが"人"であると思っているうちは、この国に魅了される人は尽きないと思う。


ある日、

Andresの兄ちゃんと行動していたとき、わざわざ僕の分のビールを買ってきてくれた。

それまで何度もご馳走してくれていて、さすがに「ここはおれに奢らせて!」って伝えると、

彼が、「これからもまだ君の旅は続くでしょ?お金はそのときに使うからここは大丈夫!」って思いっきりニッコリされた。 完全にシビれたわ。 正直コロンビアについて多くを知っているわけでもない。ただ、会って間もない外国人に対して当たり前にここまでできる人がこの国にはいるっていう事実が、自分にとってそのままコロンビアのイメージになった。



何度も言うが、

彼らは自分達の国のイメージが世界的に悪いことを良く知っている。


そんなネガティブなイメージを持たれていることを理解しながらも、自分達の良さもよく理解している。


外から見るイメージと、中から感じ取った印象は違うということを思いっきり知らしめてくれる場所。

そのギャップの大きさがそのままカルチャーショックになってコロンビア滞在を刺激的なものにしてくれた。





クリスマスと元旦を過ごしたコロンビア……忘れられない国になりました。