Victoria Fallsからハラレまでの"満員御礼、通路に座り込みローカルバス"を除いて、
アフリカもこの辺まで来ると長距離移動は快適なデラックスバスが通って選択肢も広がる。


45$でハラレからヨハネスブルグまでの国際バスに乗り込み、9日11amにハラレを出発した。



ハラレを出発して何度か休憩のためバスが停車すると、そこは首都や観光客が集まるような町とは大きく違い、仕事や物資が慢性的に不足している様子に気づかされる。たまたま遠目から見えた商店には、まったく同じ商品の袋が並んでいるだけ。さらにその数も明らかにその一帯の人たちが安心して暮らせるだけの量はまかなえるようにも思えないほどだった。


今まで通ってきたところのように、草むらにただ座って時間を潰しているような人達も多い。
外交の都合で一時、外からの物資が途絶えた、かつての影響は皆無に思われたハラレやVictoria Fallsとは180℃違う状況が都市部以外のジンバブエでは起きていた。


あるジンバブエ人の話によると、

ハラレでは1ドルで飲めるビールが、この名もわからぬ村では4ドルもするらしい。

アフリカの南部は意外に整備されて先進的で潤っている、と単純に言えるのは都市部を旅行している人の意見でしかないのかも知れない。


どちらかというと大きな都市を渡り歩いたアフリカ東部。
相変わらずアフリカという土地の断面しか見れてないことに気づかされる一幕だった。



バスは進み、肌寒い夜中に南アフリカとの国境に到着した。
ジンバブエ側の出国は予想通り出国カードすら書かずにスタンプをもらう。
なんといっても入国の時には、たまたま見えたImmigration係員のパソコン画面がフリーセルだったくらいユルイ出入国管理。入国カードもなし。ビザはその場で手書き。外国人の入出が管理されているように思えないこのシステム。もしかしたら、不法滞在が最もしやすい国かも知れない個性たっぷりのジンバブエを出国する。


そして、その流れでついに到着した立派な近代的な作りの南アフリカ側Immigration。
今まで通ってきたimmigrationの中でもトップクラスに金のかかった作りの大きな建物。
出国手続きのため、少しでも人の少ない列に並ぼうと移動し続けていたら、激怒しだした係員に冷や冷やしながら、出国手続きを受ける。「Do you have Invitation?」とかいう、とても必要とは思えない予想外の質問を軽く受け流してなんとか入国。


その後の荷物検査もOKが出たにもかかわらず、なぜか一緒に移動していた人とともに、ひょっこり現れた拳銃を装備した暇そうな警備員にトイレに連れて行かれた。


どう考えても肌の違うおれらがご指名のようだ。


半笑いの係員にトイレで荷物をほぼ全部細かくチェックされる。
ただの好奇心で見るそのチェックに嫌気をさしながら、ついに見つかってしまったマネーベルト。


「いくら入ってる?」と聞いてくる係員。

「いや…400$くらい」

「見せてみろ。」


……



渋々マネーベルトを開け、中に入っている札束を目の前で数えて見せる。
そのときの警備員の目は、財布の中身を見る路上にいる輩と同じ種類の目をしていた。


意味も無く数えた札束をすばやく元に戻すと、一応何事もなくチェックは済まされた。

そして、次に一緒に連れて行かれた人のチェックも済ませる(もちろん現金確認もあり)。


「もういいか?もう行きたいんだけど」というと、その警備員は「OK」とか言った後に、
悲壮感に満ちた表情とともに、右手で何かを食べる仕草をして、「I`m hungry …give me…」と続ける。
「I don`t understand」を3回続けてもしつこいので、一言「NO!」とだけ言うとトイレから開放された。


日付は変わって、この日は世界が注目するワールドカップ開幕前日。
増員されただろう警備員なのか…いや、銃を持っているってことは昔からの職員なのだろう。
どんなに国が豊かに見えて、整備されてても、
こういった賄賂を欲しがる役人の仕事やミスをお客のせいにするショップのおばちゃんの態度を見ていると、
まだここはアフリカなんだなと再確認させられる。
身が引き締まる南アフリカ入りだった。



その後、適当に夜行バス内で転寝をして暇な時間をやり過ごす。
まだ外も暗い中、ビルの立ち並ぶ人気のない大都会の道を通っていた。


たまたま目についた看板を見ると、「Johannesburg」の文字。

ワールドカップの開幕と決勝が行われる地、そして今回の滞在予定の家がある街、
そして曰く付きの世界一危険と言われる都市。
その街の中心地ダウンタウンを悠然と横切る夜行バス。

初めてブラックアフリカに突入したモーリタニアで味わった、理由のない恐怖感と緊張感が蘇えってきた。


寝起きにも関わらず食い入るように窓の外を眺めながら、暗闇の早朝4:30、
ダウンタウン中心のバスステーション、Park Stationに到着した。


バスステーションを出てみたら数秒で狩られただの、危険を感じて施設内のトイレに入れないだの、
空港から付けられてホテルに着く直前に強盗にあっただの、3~4人でタクシーに乗る直前にその倍の人数で強盗にあっただの、同じアフリカンでも1人で歩いていたら両脇抱えられて有り金取られただの、悪い評判ばかり。


とりあえず同じバスに乗っていて、朝っぱらから異常にテンションの高い気さくなジンバブエ人と空が明るくなるまでバスステーション内で時間を潰す。


それにしても、寒いヨハネス。南半球はまさに今冬に向かっていて、
パーカー一枚ではとても過ごせないほどで、朝方は東京の真冬とそれほど変わらないほど。


朝7時前、目的のシェアハウスがある方向のeast gateまでの乗り物はバスステーションから出ていないらしく、
心の中では荷物全部無くなる覚悟で親切なジンバブエ人とミニバス乗り場目がけてダウンタウンを歩くことに。
ワールドカップ用に厳重な警備を期待して……。


神経を限界まで張り巡らせジンバブエ人を先頭に荷物を持って歩く3人の旅行者。
荷物を持ってヨハネスブルグのダウンタウンを歩く……アフリカを旅した人の感覚から言えば、
生肉担いでライオンの群れに入っていくようなものなのかもしれない。


ヨハネスに何度か来た事のあるジンバブエ人は、問題ないと言い張る。


とにかくタクシーをつかまえなければ動けない。

外に出ると全員殺人鬼か凶悪犯罪者だと思っていたが、意外にいろんな人達が歩いている。
極端にいうと老若男女。路上には古着のマーケットで人が賑わう。
なんだか、寒さも手伝って色味のない東欧のどよ~んとした雰囲気にアフリカ人がいるという独特な空気感。
ワールドカップ用には柱に国旗の旗があるだけで、特別盛り上がってるようには見えず、みんないつも通りの生活をしているようだった。


程よく活気のある青空マーケットを横切ってミニバス乗り場まで10分ほどで着いた。

ここまで何もなかっただけで、運が良いと思ってしまうのは先入観からなのか、それともほんとにラッキーだったのか…。ミニバス乗り場に着くと、何故かハイエースの運転席のすぐ横にドクロマークのシールを貼り付けている超怖い人相の運転手がお出まし。


これは彼なりのギャグであってほしい。


一緒にいたジンバブエ人が親切にいろんな人に聞きまくってくれたが、おれが行きたい場所へはここからバスは出ないという、シャレにならない事実を聞かされる。

もう引き戻せないし、言われた方向の路上でバックパックを背負いながら、さわやかに「ヘイタクシー!」なんていう、恐らくどんなに売れない芸人でもやらないことをやるハメになった。


誰もが罰ゲームで選ぶなら喜んでバンジーを選ぶだろう状況。

最寄の交差点まで送ってくれたジンバブエ人。
その別れの挨拶をしている最中、
明らかに怪しい男が荷物を狙っているのに気がつき、アタフタ動揺しながら足早に消えていった。


過信は禁物だが、
危険センサーを限界まで張り巡らせて感覚を最大限に研ぎ澄ませていつでも判断できるようにしておく。

もういくしかないので、さらにそこから10~15分程バックパックを背負ってダウンタウンを歩く。


路上の物売りのおばちゃんに方角を聞くと、いつも通り元気のいい感じでやさしく教えてくれる。
意外に大丈夫だと思って、大通りから横道を見ると、やばすぎる集団が全員なんか食いながらこっちを凝視。


なんとかパス。


事が起これば、後は一瞬。



なんとか停車しているタクシーに乗り込み、目的のeast gateに到着。
タクシー運転手が素朴でいい人だったのがうれしくて、猛烈に安心した。


クレイジーな"バックパックを背負って歩く世界一危険な都市のダウンタウン徒歩20分間ツアー"はなんとか事無き得た。もう二度とこんな状況はごめんです。




ついに待ち合わせ場所で、家を借りて旅人や日本から応援に来る人に寝床を提供してくれる方、
そして事前に着いていた旅で知り合った人達と再会を果たす。



無事に着いた安堵感と、再会の喜びに浸りながら、これで本気で楽しむ準備は整った。