サッカーアフリカネーションズカップ決勝が1/31に行われた。
アフリカネーションズカップとは、2年に一度行われるアフリカ内で国別にNO.1を決める大会。
日本にいると知名度の低いこの大会も、アフリカ内ではワールドカップでもやっているのかと思うほどの注目と
知名度を誇っている。
その盛り上がり方はアフリカ全土に伝染している。
セネガルにいた頃、店の外に行列が出来てると思ったら、隙間から試合を見ている人だかりだったり、
バーの入り口で10mくらい不自然に並んでると思ったら、店内にあるネーションズカップの試合を見ていたり。
順当に勝ち上がっていったエジプトの地でもそれは例外ではなく、試合の日は異常な盛り上がりを見せていた。
決勝のガーナ戦の予想をする車や、顔に国旗のペイントを書いてもらうおじさん。
首都カイロの街は、勝利を期待するエジプシャンで溢れかえっている。
試合が始まるとテレビのあるカフェに人が集まり、普段楽に通れる道もふさがれてしまうほどの人たち。
お決まりの圧倒的な男の数。
もともと庶民の娯楽が極端に少ないイスラム圏。
外に飲みに行って、カラオケ行って、ボーリング行って、ビリヤードして、ダーツして、
大型ゲームセンターへ行って、チャーシューメン食って、帰って寝る。
どの遊びもイスラム圏では見られない娯楽で、そういった類の施設もなければ、そう遊んでる人も見かけない。
そして、基本的に未婚の男性と女性が混合で遊んでいる姿もイスラム圏ではほとんど見られない。
(大都市カイロは例外的にいる)
では彼らの娯楽や嗜好品とは……
激甘スイーツ屋に、男女問わず常に人で込み合っているのを見れば、
男性・女性共通だと恐らく一番は、食べる事。
デートと言えば映画。
髪の毛を隠し、旦那以外の男性と歩くことがない女性の娯楽はその他見当もつかない。
男性では、カフェでシャイを飲み、水タバコのシーシャをふかす事。
バックギャモン等のボードゲーム。
他にもあるだろうけど、本当に娯楽が極端に少ない。
逆にレストランやカフェ、飲み屋が軒並み立ち並び、
ほとんどの国民が多国籍の料理をハイレベルで食べることが出来る。
さらに、夜のネオンにあれほどまで多く、とりどりの娯楽施設の看板を目にすることができる日本は、
世界的に見てかなり稀だと思う。
そんなムスリム国家に住むエジプト人にとって、サッカーの存在は特別なものだった。
そのレベルは単に娯楽と位置づけられないもの。
今回のアフリカネーションズカップは順当に勝ち上がっていった事もあり、
代表が戦う試合を見る彼らのリアクションを見ていると銃を使わない戦争のようにも感じた。
ある人は、「Black peopleなんぞに負けるわけない」と言ったり、
ある人は、「エジプトはアフリカですべてにおいて一番の国」と胸を張る。
それはエジプトに限らず、セネガル人でもナイジェリア人でも同じことが言える。
そして、対戦相手を意識するときに、以前の国同士の紛争や地域に対する愛着心、
歴史的背景までもが、見る人に影響を与えているほど。
マリ代表とマラウイ代表の試合の時には、同じ西アフリカのセネガル人はマリ代表の勝利を喜んだりするのは、
民族感情が混じっている証拠だと感じる。
西アフリカと東アフリカの国同士でもこういった仲間意識が混じる世界で、
特に肌の色が違い侵略の歴史を持つアラビア系北アフリカ諸国と、
ブラックアフリカとの試合にはお互い因縁を感じているのは間違いない。
日韓戦の際に入り混じる感情に近いが、同じ地域や民族にまで感情移入するというところが、
さらに複雑な歴史を物語り、サッカーに対する見方に軽いミーハーな部分が感じられない。
少なくともアジア大会の注目度が、ただのエキシビジョンマッチに思えるほど。
完全にブラックアフリカを見下してみているアラビア系のプライドと、
勝手に支配意識を持たれ、見下されている事が面白くないブラックアフリカンの反逆感情。
この盛り上がりも、世界どこにいってもリーグがあるほど幅広く人気を誇るサッカーだからこそ。
そして、カイロにいる間行われた、
準決勝 エジプトvsアルジェリア戦。
決勝 エジプトvsガーナ戦。
どちらも因縁めいてた。
<得点前> → <得点後>
普段まばらにしか人がいないカフェのテレビに集まりテレビ画面釘付けの人々。
テレビがあるところに、人が固まり、街を歩いている人もまばらになり、通路が人だかりで塞がれてしまったいた。
<ケバブ屋の店員もちっちゃなテレビに夢中。国の威信を賭けた試合中は仕事どころじゃない>
準決勝 エジプトvsアルジェリア戦。
今回2010年の南アフリカワールドカップ出場を逃したエジプト代表。
出場を賭けた最終戦のプレーオフで負けた相手が、アルジェリア。
だからこそ絶対に負けられない因縁の対決となっていた。
試合は、むき出しの闘志を見せたエジプト代表の勝利。
試合後は……国民狂喜乱舞。
交通機関は麻痺し、大都市カイロの道路はひらすら勝利を喜ぶ人で埋まった。
太鼓の周りに群がる人たち。
スプレーのガスに火を放つ人たち。
表情を見ると和やかだが、やってることは荒い、荒すぎる。
暴れ放題。
警察は……その周りを散歩しているだけ。
これぞ焼け石に水ってか。
<踏んづけられ、もて遊ばれるアルジェリア国旗>
青年が向かってくる車にアルジェリア国旗を広げ、体当たり覚悟の姿勢を見せる。
「アルジェリアをひいてしまえ!」
そんなメッセージがあった。
車が直前で急停止すると、手に持っていたアルジェリア国旗で車のバンパー拭いて洗浄。
「こんなものは、ただの雑巾だぜ!」
そんな扱い。
さらに、国旗を引っ張り合い、ビリビリにやぶれる国旗を見て歓声をあげる人たち。
やぶけた国旗が地面に落ちると、それを我先にと踏んづける。
ビリビリにやぶれたアルジェリア国旗を手に、最後はライターで火をつける。
「人道に反しているぞ!」
そんなきれい事を叫んでも、国民感情は操作できない。
決勝ガーナ戦も勝利し、最終的にエジプト優勝。
今の日本代表では見られない、むき出しの気迫がもたらした優勝だった。
それを後押ししたのは、メディアから無理やり後押しされたちょっとした盛り上がりではなく、
まさに国の威信をかけた、プライドのぶつかり合いだった。
ほぼ全国民が同じ方向を向いて、同じ感情に浸れる。
娯楽の枠を超え、スポーツの枠を超えたサッカーとは一体なんなのか。
まさかエジプトでその奥深さに、また一段と魅了されるとは。









