グリオ(griot)とは、楽器を演奏する世襲制の伝統伝達者。
グリオは、単に楽器を演奏するスペシャリストなだけでなく、
文字による伝達方法がなかった頃には、歴史上の出来事・遠方の情報・各家の系譜・生活教訓などを
メロディーに乗せて人々に伝えていたという。
グリオの楽器にはコラ、ンゴニ、ボロン、太鼓のサバール、タバラ、
木琴の一種であるバラフォンなどが知られる。それぞれの家系は扱う楽器が決まっており、
コラの家系はコラ、バラフォンの家系はバラフォンの演奏方法を肉親から引き継ぐとも言われていた。
そんなグリオに対して人々は畏敬の念を持っているため、彼らの楽器はとても神聖なものとされる。
その昔、一般人は触れることすら許されなかったというほどで、
グリオ以外のものが音楽を演奏するのは恥ずべき事として認識されてきた。
今でも人生の節目に祭り事や儀式にグリオは欠かせず、
音楽に合わせて一家の歴史・功績を歌い・語り・演奏している。
娯楽の要素が濃くなったマリの音楽界においても、
祝いの席や、行事の際にはグリオの存在は欠かせないものとなっている。
生まれ持って音楽を職業とする、世襲制の音楽スペシャリスト集団。
そして、今回先生になったBabaもそんな伝統的なグリオの一人。
<土っぽい、一般の居住区に建てられたテントが会場>
ある日、彼の所属するグリオのグループがマリ人の結婚式に呼ばれていて、おれも参加できることに。
今いる彼のグループは、メインのジャンベ・ドゥンドゥン等の打楽器が4人、
琴のような弦楽器であるコラ、でっかいマラカスのような楽器、ギター、そして歌い手のグループ。
歌い手兼踊り手のおばちゃんも数人いる。
どうみてもジャンベがメインとなっていて、ジャンベ2人のうち、基本的に1人はベースのリズム役、
そしてもう一人がガンガンソロで煽って、ママさん達を踊らせてしまう役。
その中でもBabaはテンポが上がり一番盛り上がってきたところに、
ソロでガンガンアレンジしながら叩く、メインジャンベマン。
バンバラ語で何を言っているかわからないが、歌い手が家族の事をメロディーに乗せて歌い、
一曲一曲の終わりには、手が見えなくなるほどの激しいジャンベの音に合わせて、
ド派手にメイクアップしたおばちゃん達が全身震わせながら踊る。
このサイクルを何度も繰り返している。
<ここから陣形が崩れて、ママさんはテンポに合わせて脅威動きを見せる>
今回気がついた、一連の結婚式の流れとしては、
1、大勢の人が新郎側?新婦側?の家の前のテントに集まる。
2、グリオが演奏。
3、新郎新婦は一瞬だけ登場して、写真を撮る。
4、大人数(主に男性)を引き連れてどっかへ行ってしまう。
5、その後、残された大勢のママさんと子供だけが会場に残る。
(この時男性人はいない、もしくはテントの外から見ているだけ)
6、グリオが演奏再会。
7、歌い手が会場にいる誰か一人にターゲットを当てる。
8、財布を持って一人が立ち上がると、その後ろに並んでステップを踏みながら音楽に合わせて蛇の列を作る。
9、先頭のおばちゃんが財布から札を取り出し、演奏しているグリオや歌い手、親族にお金をダイレクトに渡す。
(お金をもらったグリオはしばらく口に札をくわえて演奏)
10、バブリーでダイレクトな時間が終了すると、音楽のテンポがあがる。
11、席に戻るおあちゃんと、ゆっくり踊るおばちゃんと、ジャンベの前で激しく踊るおばちゃんに分かれる。
12、メインのジャンベマン(Baba)が、ガンガンソロで激しく叩きまくって、
目の前のおばちゃんを激しく踊らせる。
13、激しいリズムが終了して席に戻り、歌が緩やかな演奏が再開。
基本的に永遠と6~13の繰り返して、狂喜乱舞する。
この結婚式でまず驚いた事、
~その1~
まず、バンバン札が露骨に飛び交うところ。
日常の生活だと、最小の札を出してもお釣りがないことなんてザラの世界なのに、
このときばかりは札がバンバンとんでバブリーな状況になること。
財布から取り出し、ステップ踏みながら手渡し、そして演奏者も手を出してオネダリ。
なんとストレートなやりとりだ。
もらって口にくわえて演奏している姿がちょっと笑える。
はっきりいって、普段では、ありえないくらいに札が飛び交う。
グリオの収入はこういった場での祝儀によるもの。
ただみんなで分配するとなると、あまり大きな収入にはならない。
~その2~
男がいない。
なぜかママさん以外は蚊帳の外。
もちろんガンガン踊るのも盛り上がってるのも、札を財布から抜き出しまくるのもママさんばかり。
なぜだ?
~その3~
グリオの音楽。
ほんとに結婚式の場に、グリオがいなければはじまらない。
音と歌と踊り。この3つがすべてのメイン。
その中で彼らの、特にジャンベの叩き手のすばらしさ。
いとも簡単に人を踊らせてしまうその音に完全にやられた。
後ろで静かに見ていると、BABAがこっちへ来いと手招きをしている。
「えっ!? それっておれも叩けってことっすか!?」
なんと最前列でおれも簡単な一定のリズムを真似して叩かせてもらえた。
テンポが上がる直前にBABAがストップの合図を出し、すぐ横で体を揺らしながら鬼のテンポで叩いてる姿、
そして目の前でおばちゃんが信じられない動きをしているのを見て鳥肌ですよ。
なんちゃってでも参加させてもらえた。
調子に乗って、札に手を伸ばして、僕も真似してくわえてしまいましたからね。
超素人の俺がグリオに混ざって、最前列で叩かせてもらえて感激です。
この絵はほしかったな~。誰か写真撮ってくれーって気持ち。
人間業とは思えないBABAのジャンベに惚れこんでしまい、短い間でも習うこと確定。
バンバラ語とフランス語しか話せないBABAと、日本語と少しの英語しか話せないセイドゥー。
言葉を越えてのコミュニケーションで、翌日から練習と結婚式・セレモニー参加の日々。
自称、現地コミュニケーション型旅人の本領発揮だ。


