先日、お稽古に向かう途中、細い路地を留袖姿のご夫人が私の前を歩いておりました。
お連れ様は礼装の紳士。確かこの先にはレンタルパーティースペースがあり、新郎様か新婦様のご両親であろうお二人はそちらに向かっていらっしゃるのだな、と微笑ましく背中を見送っていたら、あららら。ご婦人のバックからひらりひらりとしろいものが風に舞って落ちたのに、慌てるお二人は気付かぬまますたすたと行ってしまうではありませんか。
落とし物を拾い、後を追いかけ呼び止めると振り返ったご婦人が開口一番。
「帯、下がってきちゃってない?これで大丈夫?直してもらえない?」
大切なパーティに遅れそうで、焦っていらっしゃるのでしょう。
落とし物についてはありがとう、でも、助かったでもなく、ひたすらご自身の着姿を気にしていらっしゃいました。
帯山を直して差し上げると、
「帯揚げはこれでいい?」
…………。
念のため、言っておきますが、彼女と私は初対面ですよ。逞しいというか、なんというか。
ご同行の紳士は「そこまでお願いしても申し訳ないし、もう、いいじゃぁないか。」とやや呆れ顔。
「私のことはお気遣いなく。女性はこういうことが気になるものです。
折角、綺麗に着ていらっしゃるのですから、直しましょう。」と私。
少し吃驚しましたが、晴れの日のお手伝いが出来たのは良かったです。