7月に解散してしまった東京カルテットですが、結成当時以来、質の高い演奏をしてきたと思います。
数か月も前に放送されたものですが、演目はシューベルトの「弦楽四重奏曲第15番」
演奏そのものは、精緻というよりは、よく練られた、息のぴったりあったもので、四人が紡ぎ出した音が、あたかも風船のように、空気をたっぷり内包した響きとなって会場の隅々まで広がっているようでした。
番組冒頭のインタビューでメンバーが語っておられたように、「作曲者へのリスペクト」「作品にどこまでも真摯に向き合う姿勢」「以前よりもより良い演奏を」という不断の努力がこういう演奏を生みだすのだ、と言わんばかりの素晴らしいものでした。

別にロマンチックな曲ではありません。
ピンクフロイドのファースト・アルバムに収録の曲ですが、初期のフロイドの礎となっていると言っても良く、シド・バレットのヒリヒリするような感性がいかんなく発揮されたサイケ・サウンドの名曲でしょう。
ロバート・フリップが「スターレス・アンド・バイブル・ブラック」で表現したかったものとの共通性も見受けられます。

アルバム名は「夜明けの口笛吹き」と奇妙でしたが、内容は今聴いても新鮮で、とても60年代後半に発表されたアルバムとは思えません。
アルバムの最後を締めくくる、ガチャガチャという雑音も、後の「狂気」収録曲である「タイム」冒頭に形を変えて転用されていたりと、フロイドの玉手箱のようなアルバムであると同時に、シドの奇才ぶりに驚くばかりです。

30年ほど前にLPレコードを買ったときは、その尖った音に馴染めませんでしたが、2011年リミックス・バージョンはかなり聴きやすい音へと変質しております。しかしながら、その本質は一つも変わっておりません。現代バレエや現代音楽の一部に強く惹かれることがあるのですが、そのときの感覚に似ていると言って良いかも知れません。

「狂気」や「ザ・ウォール」ばかりがピンク・フロイドではありません。商業的に成功しなくとも、彼らの本質はここだと言わんばかりの存在感を見せつけてくれるアルバムです。
ティーレマン指揮シュターツカペレ・ドレスデンのブラームス・チクルスの放送がありましたね。
交響曲に関しては、第二番のみの放送でしたが、日本公演での1番、3番よりは遥かにましではありましたが、それでも、ドレスデンの響きが一つもシンフォニックにならない。
金管など時に音が汚い。
はっきりいって、こんなドレスデンの音を聴いたのは初めてのことです。
(日本公演の記録を含めると2回目か・・・)

好きな人もいるでしょうから、こんな書き方をすべきでないのは重々承知しているのですが、これじゃあシュターツカペレ・ドレスデンが可哀そうです。