映画監督の宮崎 駿さんが、引退を表明されましたね。
私は、漫画家になる前は、ほんの数年だったのですが
アニメーターだった時期がありました。
藤子アニメを主に担当しており、
残念ながら宮崎作品に携われることはありませんでしたが、
きっと私が参加していたら、リテイクリテイクの嵐で
宮崎さんがブチ切れていたことでしょう(^_^;)
ご本人と直接お会いしたことはないのですが、
私が勤めていたアニメ製作会社の社長と宮崎さんは、
お友達でした。
「ナウシカ」のビデオが発売された時、
うちの会社にも宮崎さんから
(その頃まだジブリはなく、「二馬力」と言う会社でした)
「おたくの社員さんたち、ナウシカのビデオ買わない?」と
社長に打診がありました。
社員たちはこぞって「買う!買う!」と言い出し、
ビデオが来るのを心待ちにしていました。
もちろん、私もその中のひとりでした。
そして、いざビデオが届いた時・・・
社員たちは息を飲みました。
ビデオの1本1本のパッケージに、宮崎さんが
サインを入れてくださっていたのです。
その頃のビデオと言えば、
パッケージは紙製で、
まわりをうすっぺらいビニールで包んだだけの
簡単なものでした。
そのビニールにそっと切れ目を入れて
パッケージを取り出し、
宮崎さんはサインを入れ、
またそっとビニールの中にパッケージを戻して
くださっていたのです。
宮崎さんと言えば、アニメーターたちを
怒鳴りつけたり、
出来の悪い原動画をいきなり破り捨てたり、という
イメージが強いです。
でも、以前見たスペシャル番組で、
宮崎さんが自らおそばを手打ちし、
ジブリの社員さんたちにふるまっているお姿を
拝見しました。
震災後、
「パン屋さんだって、朝早く起きて頑張っているんだよ」と
おっしゃりながら、
パンをひとつひとつ社員さんたちに
手渡ししておられてもいました。
そして、ナウシカのビデオの1本1本に
丁寧にサインをくださったこと。
上司にすれば怖い方なのかもしれませんが、
まだ若くてアニメーターとしてはヒヨッコだった私は、
「なんて優しい人なんだろう」
と、感動したのを覚えています。
今、宮崎さんはお願いされても
サインはなさらないそうです。
なぜなら、自分のサインが営利目的ですごい高値で
取引されているのをお知りになって、
大変に心痛めていらっしゃることからだそうです。
それでも、東日本大震災の復興イベントでは、
サイン会を開いてらっしゃいました。
それは、たとえご自分のサインが売買されることになっても、
復興のためのお金になるならばそれでも良い、という
お考えのもとに開催されたサイン会だったのです。
宮崎さんは、長編アニメーション製作は
もうなさらない、とはっきりおっしゃいました。
もしかしたら短編は作るかもしれないし、
「やりたいことがある」ともおっしゃっていましたから、
まだまだ宮崎さんの創造の熱意は消えていないものと思います。
でも、はっきりと
「これで引退します。ありがとうございました」と
言われてしまうと、
失礼ながらご本人が亡くなってしまったような、
もう二度と画面を通してでもお目にかかれなくなるような、
そんな寂しさを感じます。
きっとまた、
「やっぱり作っちゃいました」と
短編でも新作をひっさげて帰って来てくださることを、
心から願っています。
「子供たちに、
『この世は生きるに値するところなんだ』と
伝えること。
それが僕たちの仕事の根幹になければならない」
子供向けに今まで仕事をして来た私には、
耳の痛いお言葉です。
ほんの数年、レベルの違いはあれど、
宮崎さんと「同業者」でいられたこと。
本当に幸せに思います。
宮崎さん、心に残る数々の名作を、
本当にありがとうございました。
そしてお疲れ様でした。
今まで通り、体調に気をつけられて、
いつまでもお元気でおられますように。
いつかお会い出来る日を楽しみにしています。