日本のサイトをみていると、フランスで差別を受けたとか、レストランで悪い席に案内された、という記事や投稿が目立つ。

僕も日本人なので、そうした記事には敏感で、みつけたら読むことが多いのだが、この人、勘違いしているなと思うことが大半だ。それに、予約の仕方が悪いとも思う。

その話をしたいのだが、「あれこれ文句いうのであれば、最初からミシュラン★レストランに行くべき」と考えるので、その前提で話をすすめる。

★レストランの、特に★★以上では、レストランの雰囲気を壊さぬよう、アジア人やアフリカ人などの有色人種の比率を50%までにしている。白人だからと言ってアメリカ人も好まれない。カメラを手にうるさいからだ。
 席が空いているのに断られた、というのは、その理由であり、そもそも予約なしで入ろうとしている段階で間違っているのだ。

ただ、予約が入っていれば、席は確保されている。でも、リコンファームが必要だ。リコンファームをしていないと、キャンセルされることがある。これは★レストランの常識としてほしいし、日本でも高級レストランは同じである。

次に、変な席に案内された、という人も多い。もしかすると、ウェイティングバーに案内されたのではないだろうか。ここは、席に進む前に一杯飲む場所だ。メンバーがそろっているのであれば、スキップして席に案内してもらえばそれでよい。

なお、女同士のグループは、ディナーでは嫌われるので、悪い席に案内されることがある。

ただ、悪い席と言っても、まがりなりにも★レストランであれば、本当に悪い席なんてことはない。
日本人が悪く感じるだけで、それは良い席かもしれないのだ。

フランス料理に関しては、上席にルールがあって、レストランの真ん中あたり、皆に見られるような場所が一番良い。ちやほやされる感じがあるし、黒服のギャルソンから見やすいのでサービスが良く流れるからだ。日本では窓際が好きな人が多いと思うが、あれはフランスでは悪い席なのである。

さて、料理がなかなか出てこない、という事は非常に多い。これは、フランス料理は、3時間くらい、へたすると4時間かけて、ゆっくり楽しむものであり、2時間くらいで終わることはない。オペラがあるなど、急いでいるのであれば、一番最初にそれを言っておく必要がある。その場合、オーダーするメニューに関しても、席の人皆が最適化できるよう、レストランから変更をアドバイスしてくれるだろう。

初めての店であれば、予約の際に、コースの内容と、ワインの確認をした方が良い。★付きレストランでは、オーダーが明確に事前にわかる客に関しては食材を必要数だけ仕入れる。高級な食材なので、無駄に在庫をすることを避けるだめである。確実に食したい料理を食するためにも必要なのだ。

初めての客の場合、自分の好みを事前に伝えることで、相手に強く意識してもらうことができる。店としては、あれこれリクエストする客は、たとえ初めての客であれ興味をもってくれるので、良い席に案内してくれること請け合いだ。事前に料理もワインもわかっているので、サービスが流れるように進むし、店の立場でも売り上げが把握できるので、上客としてあつかってくれる。

これは、日本のレストランの予約でも全く同じである。初めての店だからこそ、勝手がわからないからこそ、あれこれ聞いて、好みもあれこれ伝えて、事前にコミュニケーションをとるのが良い。

料理とあわせるワインも重要だ。赤ワインは店でオーダーしてスグ飲むわけにはいかない。セラーに入っているので、シャンブレという温度をなじませる儀式が必要なのだ。だから赤を最初から頼みたいときは、ボトルを出しておいてもらう必要がある。

 たとえば、僕は、シャンパンをギンギンに冷たくして飲むのを好んでおり、ぶどうの味がわからないくらいまで冷やしておいてくれ、というと昼からしっかり冷やしておいてくれる。

そして、チーズのありナシも聞いておいた方がよい。最近は、チーズの種類が少なくなってきつつあるので、仮にチーズのサービスがあったとしても、自分が食する時間に、好みのチーズはなくなっているかもしれない。ぼくの場合、ウォッシュとシェーブルが出る場合は、必ず自分のテーブル分を確保してもらっている。


フランス語は、僕はまったくしゃべることができない。
でも、★付きレストランであれば、英語では対応してくれる。うまくいくと、日本人が働いていることも結構あるので、先方の都合次第であるが、日本語で会話できる。日本人シェフがいるばあいでもスーシェフ以上であることが多く、当日は調理場で忙しいので当然会話することなどない。事前に予約するのがいかに重要かということである。

むかーし、僕は、日経新聞のコラムで恐ろしくおいしい店、という紹介があったパリの料亭に入ったことがある。31歳でMOFを獲得した天才シェフと、客席の倍ほどの人数が厨房にいるレストランで有名になった店だ。きちんと事前に予約しておいた。本当においしかった。最後まで残って、シェフとあれことおしゃべりできた。予約していたからだと思う。81年のことだ。

 また来たいと思い、1年後の席を予約した。その1年後、楽しみに再訪すると、★付きに昇格していた。そのまた1年後、★★に昇格していた。もうそのころには1年先の予約はできなくなってたのだが、何度も来ているので予約を受けてくれた。そして、その1年後、なんと★★★に上り詰めていたのだ。ジャマンといえばピンとくる人は多いと思う。シェフはジョエルロブション。

その後、94年に店名も変え自分の名前をつけたレストラン、ロブションとして場所も移転、いきなり★★★。東京には、なんとパリの老舗★★★であるタイユヴァンとコラボした店を恵比寿にオープンし、その店もあっというまに★★★になったのは言うまでもない。

なお、すでにロブション氏は2018年に他界しており、ロブション名のレストランを名乗る店は、恵比寿だけだった気がする。パリの2店はラトリエ(レストランより格下)だ。