認めましょう。

今回も、私はこのドラマにすっかり涙腺を壊されました。いえ、元々涙腺は崩壊しているに等しいのですが、やられました。

 

 

今回の冒頭はなんと、桐明(瀬戸康史)の転職相談シーンからです。


「1年目で転職を考える方は違う業種を選ぶ方が多いのに珍しい」

と転職コーディネーターに言われる桐明ですが、商社でキャリアアップしていきたいという気持ちは変わらないという。

父親が働く業界最大手の商社は避けたいという桐明に、コネを使わないことも珍しがられますが、「コネはみっともない、自分だけの力でやりたい。」と熱く力説。

その現場を、上司の結城(丸山智己)が見ていたのも知らず。

 

歩(中島裕翔)は楽しそうに営業3課で慣れた仕事をこなしています。

随分慣れました。

新規事業企画に挑戦しろと織田(遠藤憲一)に言われ、思わず笑みがこぼれます。

3課の三人のシーンは本当に楽しいです。

中島裕翔さんの笑顔だけじゃなく、もちろんエンケンさんと山内圭哉さんの好演です。

 

香月(山本美月)が先日完成させて財務部長(大島蓉子)に提出した企画は、財務部長からGOサインが出たのも関わらず、資源2課長の寺崎(矢柴俊博)の手によって握りつぶされることが確定。

寺崎は、それに納得しない香月に、

「お前は自分の手柄にしようと思っていたのか?」

と香月を責めます。

それは大きな間違いであり、香月は、自分に冷たくあたる主任の桧山(松田賢二)の発案だから自分は完成させたのだと返しますが、課長はそれでも結局香月の企画書を捨ててしまいます。

この時、

「桧山さんの企画だから少しでも役に立ちたくて。」

と香月が言ったのを、桧山はもちろん聞き逃しませんでした。

このドラマ、アップの多用は時々気にはなるのですが、こういう時の桧山を演じる松田さんの台詞のない表情の演技が本当に分かり易く、共感をうまく呼んでいると思います。

 

桐明のいる鉄鋼2課では、運送中の貨物船に亀裂入っていることが分かったと主任の結城(丸山智己)宛に連絡が入ります。

桐明は自分なりの案を出しますが、それは妥当ではないと即却下。

処理に向かう途中のエレベーターで、歩(中島裕翔)から

「亀裂を塞げば良いのでは?」

と、一見突飛なアイデアを受け、その歩の一言で結城は窮地を救われます。

結城はその歩の働きを営業3課長である歩の上司・織田に報告し、お礼を述べました。

織田は歩の成長に手ごたえを感じていました。

 

桐明は褒められる歩を見て嫉妬を覚えます。

そして、歩は様子がおかしい桐明を心配して声をかけますが逆効果。桐明から「君は余裕があっていいな。3人しかいない小さな営業3課だから人の心配までできるのだ。俺は君と違う、楽してここに来たわけじゃない。」と嫌味を言われています。

瀬戸康史さんの好演で、(このドラマは皆さんが好演ですが)桐明が嫌味を言ってもどこか憎めません。憎むどころかエリートであるはずの桐明に、逆に同情してしまうマジック。瀬戸さんは、「あさが来た」よりも断然この桐明役で活きています。

 

歩は織田と安芸の前で、自分が考えた企画のプレゼン練習していました。

歩の企画は美容と健康に良い、何やらドリンクのようです。

織田から、

「モノを売る本質が分かっていない」

と言われてしまいます。

 

人見(桐山照史)は相変わらず主任の鳴海(マギー)から新規企画書を提出しても全く相手にされず、鳴海は人見の企画書を電話のメモ代わりに使う始末。

おまけに

「ソシオパス」=社会病質者

とまで言われてしまします。

 

結城は桐明のデスクのごみ箱に、企画書が捨ててあるのを見てしました。

 

歩は織田から、安芸の提案で営業の伝統的な研修課題を言い渡されます。

1万円を元手に、モノを買って、誰かに売り、利益を出すというものです。

19時がタイムリミット。身内に頼んだりしてはダメ、

「買ってもらえるまで売り続けろ」

と安芸からアドバイスを受けます。(実は安芸は新人時代、母親に買ってもらっていたのですが。)

それを聞いていた結城は、自分の部下である桐明にも一緒に体験させてほしいと言い出し、歩は桐明と二人で外出することになりました。

 

外に出て早々、歩き出そうとした歩に、桐明は

「何を買うのか決まってもいないのに、計画も立てずに動くのは時間のロス」

とダメ出しします。

桐明の視線の先には暑さの厳しい中、ハンカチで汗を拭う人々の姿が。

 

人見はまだ鳴海から嫌味を言われ、早退することに。

 

その頃、毎度のことながら雑用を頼まれる香月に、桧山は別の仕事の指示を出し、香月をなんと遂に雑用から解放したのです。

桧山の心の変化をこうして少しずつ小出しに見せてくれます。

 

桐明は大学時代の先輩の会社を歩を連れて訪ねます。

先日の飲み会でご馳走になったことに対するお礼を述べ、持参したタオルを買って欲しいと頼みます。

すると先輩は、

「後輩として奢ることと、このタオルを買うことは全く別の話。俺には必要のないものだ。」

ときっぱり断りました。

 

香月は、桧山の指示で取引先に到着しますが、なんとその日はストライキで、指示された「コークスをコンテナに運ぶ」ことはできないと言われてしまいます。

会社に報告の連絡を入れると、桧山は外出中。

代わりに出た戸口(服部洋平)から

「お前が男なら自分で運べって言いたいところだけど仕方がないから帰ってこい。」

と言われ、香月はその言葉に自分で運ぶ決心をします。

この時の山本美月さんも表情が実に良いのです。

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この場面も特に台詞はありません。「私がやるわ」などという余計な台詞はありませんが、観ている者に、「ああ、きっと香月は自分で運ぶんだろうな」と思わせるのです。ここが優れているのです、この作品。

鳴海のパワハラに辟易して早退した人見も香月にくっついて来て、運転が荒いと文句をたれつつも香月の芯の強さを認めています。

そして、人見が実は幼い頃両親が離婚していて経済的に苦労しており、今も奨学金の返済に追われているという事情を打ち明けます。

 

人見は根っから明るい苦労知らずなオシャレ男子かと思いきや、そんな苦労をしていたとは。

桐山さんも芸達者な方、この方も「あさが来た」で個性を活かして見事な助演男優ぶりでしたが今回もお上手です。

 

歩と桐明は買ってしまったハンドタオルを工事現場の作業員に売り込みに行きますが、要らないと全く相手にされません。

工場や銭湯なども回りますがそれが必要な人たちは既に持っているのです。

途方に暮れる歩に桐明は、

「僕らで買って利益が出たと言えば済む話」

と一笑にふします。

「頑張ろう」

という歩に、

「素直に愚直に頑張りましょうというのが僕は一番嫌い。今まで苦労もしてこなかった君には分からないか。いくら努力してもどうにもならないことがあるって君は知らない。」

と返します。

歩は、

「いくら努力しても、かなわないことがあることは分かる。売り続けなければ売れない。残り30分で僕が売ってくる」

と、宣言。

 

慣れない運転で荷物を運ぶ香月に、人見は尊敬する、香月は強い、と言いますが、香月は人が変わるのを待つよりも自分が変わるほうが楽。前の職場で学んだことだと言います。

 

桧山が帰社し、まだ戻らない香月を心配すると、報告を受けていた戸口は「どこかでサボっているんじゃないか」と気にもとめません。

香月のスマホに会社から連絡が入りますが香月は

「最後まで運んで終わらせてから会社に報告する」

と電話には出ませんでした。

うーん、ここはね、社会人としては、世慣れてるはずだから、香月が報告を怠って勝手にことを進めたのは無理があります。ありますが、それも看過できてしまうのがこのドラマの底力です。

(私は我ながらこのドラマに甘いなぁ)

 

桐明に自分が売ると言った歩は、自分のホームグランドである囲碁会館を訪れました。

営業でスーツ姿で訪れた歩を見て、かつてプロを目指していた歩を知る人々は口々に「よくここへ来れたよな、俺ならできない」などと眉を顰めます。

そこへかつての歩の師匠が、

「確かにここにお前が来て事情を話せばみんな買ってくれるだろう。でもそれは本来の目的とは違うのではないか?楽な道に逃げるな。」と歩を諭します。

初めて訪れた囲碁会館で、桐明は歩の過去を知る人物たちから思わぬ歩の挫折を聞かされます。

歩には囲碁の才能があり、小学生の頃からプロに勝っていて、家の不幸がなかったならばきっとプロになっていたであろうと。プロの棋士には年齢制限があり、アルバイトをしながらの生活では戦績がふるわず諦めたのだと。

「努力してもかなわないことがあると分かる」と言っていた歩の顔が浮かぶ桐明。

 

囲碁会館を後にしたあと、桐明は自分が歩のことを何も知らず、言い過ぎてしまったことを詫びます。そして、自分は先輩にタオルが売れずに恥ずかしかったのだと本音を吐露。

歩も、「僕も君と同じことをしようとした」と、お互いが歩み寄りました。

そして、お互いにに「必要なモノを売るって、難しいな」と言い合います。

ここは今回の重要なシーン。

暑さを労う桐明は、歩と自分に自販機で冷えた缶コーヒーを買い、

「今日は本当に暑いな」

と、その冷えた飲み物を首に当てて冷やすのですが、その時に何か気づきます。

 

最初に訪ねた工事現場へ、歩と桐明は再度顔を出します。

同じ作業員から、

「だからタオルなら買わない」

と冷たくあしらわれるのですが、桐明と歩は最初に売り込んだのと全く同じタオルをキンキンに冷やし、クーラーボックスに入れたものを用意していました。

ここはちょっと強引な設定(どこでどうやって冷やしたの?的な)ではありますが、それも(私は)気にならないくらい今度はどんどん売れます。

「普通のタオル」ではなく、冷やしたことで、需要が生まれた瞬間でした。

 

歩は織田に、そうして生まれた利益を、タイムリミットは2時間も過ぎていましたが嬉しそうに報告します。

織田は驚き、

「売ればいってもんじゃないぞ」

と歩に言いますが、歩はもう分かっていました。

何を学んだのか尋ねた織田に、歩は

「必要なモノを必要な人に売ることが大切」

と答えます。

「もう一度企画考えてみろ。」

織田は嬉しそうでした。

 

同時に帰社した桐明は、帰りが遅くなった自分を結城が待っていてくれたことを知ります。

「待っててくれたんですか?」

この場面の結城を演じる丸山さんがまたいい!(それしか言ってない)

桐明は切り出します。

「基本からもう一度、教えていただけませんか?」

 

桐明は歩と行った研修で、自分の何が間違っていたのを知ったのです。

転職コーディネーターに、転職を思いとどまったことを伝え、その時にこう言いました。

「売り続けなければ、売れない。これからもこの会社で頑張っていきます。」

と。

歩の言葉です。

 

香月が取引先へ最後の運搬にトラックを乗り付けると、そこには桧山が待っていました。

桧山はきつく

「もし何かあって、怪我して労災にでもなったらどうするつもりだ?会社に迷惑かけるんだぞ」と。

桧山の口調は厳しいものでしたが、香月を本気で心配していたのです。

「心配かけんなよ。」

この台詞と表情が物語っていました。

人が人を思ってした行動は、時に人を変えるのですよね。

香月が変えようと望まなくても、桧山は変わったのです。

「あとは俺がやっとく。」

男気~!!

良かったね、香月。

 

歩の出した企画が、なんと採用されることになりそうで織田は部長に呼ばれます。

喜々として出向いた織田を待っていたのは、営業部長(松澤一之)の、

「1年しかいないかもしれない契約社員には企画の担当は任せられない。そういう決まり。」という非情な言葉。

もちろん織田は反論しますが前例がないものはないもの、聞き入れれません。

 

浮かない顔で3課に戻った織田は、事実を伝え、

「僕は正社員にはなれないんですか?努力すればいつかはなれますよね?」

という歩に、

「いや、なれない」

と断言します。

 

「高卒でうちの正社員になったのはいない。変な期待を持たせないほうがいい。」

織田なりの気遣いでした。

 

 

その夜、安芸は落ち込む歩をいつもの居酒屋に連れ出して励まします。

「俺も課長もお前のことは一度だって契約社員だからってそういう目で見たことはない!」

と威勢良く。

そして酔いつぶれた歩を自宅に送り届け、そこで歩の母親から初めて歩の、プロの囲碁棋士を目指していたという過去を聞きます。

「あいつのことが少し分かった気がする。」

 

翌朝、織田は歩の企画を、歩の企画として出せないならば営業3課の企画として進めることにすると安芸と歩に告げます。

嬉しそうな歩。

私まで嬉しいよ。

 

 

3か月後。

 

いよいよ来月から新規事業という時に、取引先の小売業者が潰れたという知らせが織田のもとに飛び込んできます。

商品の在庫が売れないとなれば、大きな損失です。

またもや3課を襲った悲しい知らせ。

 

香月は、桧山に雑用ではない仕事を任されるようになっていました。

桐明は、結城から、そろそろ新規事業の企画を出してみろと言われます。

二人は確実に周りを味方にしていました。

3か月の努力を、このわずか数秒のシーンで見せました。

こういうのが脚本の力なんです。わざとらしい説明台詞がない(少ない?)のがこのドラマの良いところ。

一方の人見は、まだ鳴海から賭けの道具にされて飲み会の支払いまでさせられている様子で、全く改善されていません。

人見も苦労人なのだし、人がいいのでなんとかしてあげたい気持ちでいっぱいに。

(え?私だけ?)

 

小売り業者の倒産により、煽りを受けた織田ら営業3課は解決策を考えますが良いアイデアが浮かびません。

するとお前も何か考えろと言われた歩が突拍子もないことを言い出しました。

みすみす在庫を処分しなければならないようなら、小売り業者を通さずに自分たちで売ればいいのでは?と。

安芸は

「俺たちは商社だぞ、小売り業者を通さないでどうする?」

と呆れ、反対しますが先入観のない歩は「でもルールはないですよね?」と。

 

その歩の発案は瞬く間に社内を駆け巡り、周囲から批判され、非難されます。

噂を耳にした人見は、歩にすぐやめるよう勧めます。

 

そんな中、織田は専務(風間杜夫)とエレベーターで遭遇し、その噂の話、正式な場所で詳しく聞かせろとチャンスをもらいます。

 

そんなことは知らぬ歩、3課の立場が悪くなることを鑑みて織田に

「あの発案は撤回します」

と詫びて頭を下げますが、織田の口から出たのは、

「撤回?お前いつからそんな偉くなった?俺が決めたことだ。」

安芸は、分かっています。

織田が、歩の企画に光を当てるために、何としても実現させたいという気持ちを。

「俺が矢面に立つ。お前たちに迷惑はかけない。見せてやろう、あいつにも踏ん張った先に、何があるのか。」

と。

 

役員へのプレゼンのリハーサル中、織田は何かが引っかかると言いますが安芸にはそれが何か分かりません。

そこへ歩の一言。

「説明の順番を逆にしてみては?」

世界地図を持ち、ひっくり返し見方を変えれると物事は違って見える、と織田を安芸へ提案すます。

ここもやや強引な展開ではありました。煮詰まった歩が逆さに置かれた人形を見て、逆立ちをして社内の世界時計を見て思いつくのですが、ここはもう少しひねりが欲しかったのは本音。

 

しかしその歩の言葉で織田は、定石を打ち破り、前例のない「自分たちで売る」ということのメリットを最大限伝えるプレゼンにするために、プレゼン内容をがらりと変える決断をします。

徹夜で迎えたプレゼン当日。

 

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織田は、真っ先に、過去の前例を全てデータ化し、これまで同じようなケースで在庫を抱えたことで会社に与えた損害を金額で示しました。

その被害、5億。

そして、その時にもしも自分たちで売り切っていたとしたら、出ていたであろう利益、5千万。

 

プレゼン開始直後は「何の話をしているんだ?企画の話じゃないのか?」と、役員たちからヤジが飛んでいましたが、織田の熱い思いと言葉はやがて説得力を持ちます。

 

与一物産の創業者はかつて、その足で行商することから始まったこと。

原点は、必要な人へ必要なものを届けるということ。

だから、自分たちで売ることは、決して悪いことではない、と。

 

 

専務が言葉を発します。

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「この企画は新人の彼の考えたと聞いた」

と。

織田が後ろにいた歩を引っ張り出し、ここぞとばかりに主張します。

「そうです、こいつが考えました」

 

「なぜこの企画を考えた?」

専務の問いに、歩は答えます。

 

「分かったんです。モノを売るのは大変だけど、仲間と一緒に売れば、楽しいこと。買ってくれた人たちが喜んでくれる。その顔を見れるのが嬉しい。」

 

「あの研修をやったのか?それでこの大胆な提案を。」

専務は合点がいきました。

 

更に歩は続けました。

「他にも理由があります。」

 

「我が社だから。我が社だから、何だってできると思ったんです。」

 

「我が社か、悪くない響きだな。」

専務がそう言うと、他の役員たちも続きます。

「ええ、改めて聞くといいものですね。」

 

「この案件、進めよう。」

専務が決断しました。

 

会社とは何か?

それを私も改めて教えてもらった気がしました。

 

ここで私は涙が溢れました。

どうもスピッツさんの「コメット」にも弱いみたいです(笑)。

その後で織田は、「この後が大変だが、踏ん張れ、会社では耐えた者が勝つ、必死で踏ん張ったその先に、希望があるんだ。」

 

歩に言い聞かせたこの織田の台詞こそ、タイトルの「HOPE」、なんですね。

 

数日後、出勤した3課の三人を待っていたのは、江部(宮川一朗太)という人物。

専務が言っていた新しい人材?

不敵な笑みが、織田の言っていた「本当の闘い」を示唆しているようです。

 

 

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※ソシオパス・・・過大な自我の持ち主。極度のナルシストであり、自分は特別だとい気持ちが強く、自分の失敗も他人のせいにする

 

 

 

偶然にもよくコメントを下さるsammyさんと同じHNの方です。