2/22の読売日本交響楽団 演奏会にて配布された、読響「MONTHLY ORCHESTRA」を読み流していたところ、恩田陸さんが、「シューマン様に謝れ! シューマン:ピアノ協奏曲 イ短調 op.54」というエッセイを寄せていました。
内容は、この曲の協奏曲としての難易度を思い知らされたというコンサートについて。
シューマン:ピアノ協奏曲 イ短調 op.54は我々も2016年2月21日(日)、パーヴォ・ヤルヴィ指揮 NHK交響楽団とカティア・ブニアティシュヴィリのピアノで好きになった曲(奇しくも翌日は辻井伸行×三浦文彰 究極の協奏曲コンサートを聴きに行って、辻井さんのような全盲のピアニストもいれば、館野泉さんのように、左手だけで演奏するピアニストもいる。そして、カティア・ブニアティシュヴィリのような、全身でオーケストラを感じて華やかなピアニスト(真っ赤なドレスを身にまとったカティア・ブニアティシュヴィリに対してむーきんぐは、「歩くとおっぱいがぼよんぼよんってしているねこ」という率直な感想をもらしていました。)もいる……ピアノは素敵だと大きな感動を覚えました。)でもあるので、非常に興味を引かれて読みました。
以下、読響「MONTHLY ORCHESTRA」
恩田陸 「シューマン様に謝れ! シューマン:ピアノ協奏曲 イ短調 op.54」からの引用
「……年の瀬の帰省前。
実は生でシューマンのピアノ協奏曲を聴くのは初めてだった。
新進気鋭の某国のピアニストで、何度も来日していて、ここ数年は複数のピアノ協奏曲を演奏するというのが恒例になっていたらしい。
ホールは都内の一流どころだし、今年のライブ聴き納めととても楽しみにしていた。
第一部の協奏曲はベートーヴェンの<皇帝>。」こちらは余裕綽々出実に素晴らしい弾きっぷり。
さすが若手ホープ、と気持ちよく効いて第二部のシューマンをわくわくしながら待った。
しかし、スタートしてすぐに、「?」と思った。
<皇帝>よりも全然音が小さいのだ。やがて分かった。
明らかに練習不足であると。
恐らく、彼ほどの才能なら、曲そのものをさらって暗譜するのはそんな時時間が掛からなかっただろうから、このくらいで大丈夫、と思ったに違いない。
おまけに、オーケストラともあまり曲を合わせていなかったらしく、本番で始めて、いかにこの曲をオーケストラとともに引っ張っていくのが難しいのかに気付いたのだ。
特に第三楽章は大部分が掛け合いで途切れなく、仕切り直してあわせられるところがほとんどないので、互いの音を聴かないと合わせられないのだが、ピアニストに自信がなく、どんどん音が小さくなっていくので、オーケストラもピアニストの音を聴こうとつられていよいよ音が小さくなっていく。
止まってしまうのではないかと非常にハラハラさせられ、なんとか終了。
ピアニストと指揮者が抱き合ったのはどう見ても「止まらなくてよかった」という安堵であった。
私も安堵したものの、やがて猛烈に怒りが込み上げてきた。
私の一番好きなピアノ協奏曲を練習不足で披露するとは!シューマン様に謝れ!
拍手もせずに即座に席を立って帰ったのは、いまだにあの時だけである。」
読響「MONTHLY ORCHESTRA」 「恩田陸 「シューマン様に謝れ! シューマン:ピアノ協奏曲 イ短調 op.54」(pdf版) ⇒ コチラ
いったいこのピアニストとは誰なんだろう。
ピアニストの素晴らしい演奏の裏にはすさまじい努力があるんだろうなと改めて思いました。
N響ではありませんが、カティア・ブニアティシュヴィリさんの「シューマン:ピアノ協奏曲 イ短調 op.54」の演奏↓
Schumann: Klavierkonzert ∙ hr-Sinfonieorchester ∙ Khatia Buniatishvili ∙ Paavo Järvi ⇒ コチラ