市ヶ尾の坂 その1 | Charming Voice

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市ヶ尾の坂-伝説の虹の三兄弟- 公式サイト

 

(作・演出)岩松了

(出演)大森南朋 麻生久美子 三浦貴大 森優作 池津祥子 岩松了

 

5月19・20日 6月2.・3日 本多劇場

6月9・10日 シアター・ドラマシティ

6月17日 三島市民文化会館

 

1992年、市ヶ尾の坂で暮らす三人兄弟・司、隼人、学。両親は既に他界。田園都市計画の名の下、無くなることを余儀なくされている兄弟の家。カウンターがあって。障子があって。ソファーがあるけど、テーブルがない。掛け時計もない。ちょっと不思議な家。
その家に訪れる美しい人妻朝倉カオル。母亡き三兄弟は彼女を慕い、互いにけん制しあったり、喧嘩したり。そこにカオルの夫、家政婦も絡んできて・・・

 

今までに観た岩松さんの作品は観た後モヤモヤする事が多かったけれど、今回はそんな事なく、胸いっぱいになりました。

あ~良かった。このお芝居大好きになりました。

 

二人での会話が多かったな。何か二人だけの秘密のような・・・

そこに誰かが加わり、会話が続いていく。秘密を共有、でも全ては話さない。そこがミステリアスだしエロスも感じました。

三連水車、隠れ家、麺道場、忘れた定期券、レコード、子供用の松葉杖・・・

兄弟の記憶の中にある思い出は、確かなものや不確かなものも。

だから兄弟喧嘩もしばしば。

 思い出の記憶をいつまでも確認し合えるのが良いなあ。

三兄弟のじゃれ合い具合が半端なく可愛かったです。さっき喧嘩していたらもう仲良くなっているし。男ばかりの兄弟ってあんな感じなのかな。観ていて自然とこちらも笑顔になりました。

 

カオルさんが小さい頃に見た三連水車の話。三つの水車の回る速度が違う事に気づいたのは自分だけ。三つの水車はこの三兄弟に重ねていたのかも。三つは速度(個性)が違う、跳ねた水の輝きのタイミングも違うけど、力を生んでいく。

その話を聞いている兄弟の表情がとても良かったのです。

あのシーン、とってもキラキラしていた。輝いていました。

その時、虹が架かった事をとっても嬉しそうに話すカオルさん。想像して私の心の中もキラキラしていたように思います。

 

カオルさんは、朝倉の後妻で、血の繋がらない5歳の息子の育児で悩んでいました。

何気ない日常が続く中、三男・学は息子の好きなドナルドのバッジを購入し、カオルから息子へのプレゼントにするよう彼女にそれを渡します。これが4人の関係を壊しそうになる小さな事件へと。

それから、息子は先妻が再び引き取る事になります。悲しい決断。

子供がいなくなってから、彼女はバッジを渡したと話しますが、彼女のバックの中にそのバッジがあるのを学は発見。嘘をつかれた事、渡していなかった事へのショックで彼女に対して怒りが。

横柄な態度をとり、長男・司と喧嘩になります。その時飲み物を彼女の洋服にかけてしまいます。泣きじゃくる司。

今までほんわかムード漂っていた空間が、ピーンと張り詰めたような緊張感に。食い入る様に成り行きを見守りました。

カオルさんは学に詰め寄り責めます「渡して喜んでくれたと」

バッヂは、渡せなかったのか、渡したけど置いていかれたのかもしれません。学が自分の事を気にして買ってきてくれたのは分かる。それに甘えてしまった事がいけなかったのか。自分なりに頑張ってきた事が崩れたような・・・

解釈がとても難しい・・・

学は叱られた子供のように反抗し泣きじゃくります。

 

このあと、司が持ってきた着替えを手にカオルさんは、二階へ。

さて三兄弟。あの緊迫した空気はなんだったのと思う感じで、司と隼人が学をからかい始めます。

そして、母の形見である浴衣を着たカオルが階段をゆっくり降りてきます。

ここのシーンがとってもエロくて美しいの。

カオルを見つめる三兄弟。母の面影を重ねていたのでしょうね。

 

岩松さんの描く本の台詞は本当に美しくて。それゆえ毒があります。いろんな意味が含まれていて解釈が難しい。でも自分なりに消化出来ればいいかなと思いながら観ていました。

 

次男・隼人の言葉

「親が自信ないから、子供は大丈夫なんじゃないか。相手がいて、自分がいて、何にも自信がないから、相手と自分の間に何か育てるわけじゃないか。自信があったら、もう、何もないよ、相手と自分の間には。」

自信が持てない私には心に深く残る言葉です。

 

今日はここまで。今度はそれぞれの役者さんの事を書こうかな。