「革新を呼ぶ者はまず身を国民に捧げて立たねばなりません。生命に値するものは常に生命を以てのみすべきこと申すまでもありません。救国済民の大道にただ死を以て捧げたる志士の一団のみよく革新の国民的大行動を率いて立ち得べく、国民大衆はまたかくの如き志士にのみ従うほかないのであります。かような志士の一人は、あるいは時に高利貸の子から出るかも知れん。あるいは時に百万長者の子から出るかも知らん、大勢はよく瓢箪から駒を出すようなことをいくらでもするからです。しこうして日本の現状に訴えて見る時どこよりも先にみなさまの如き軍人層にかような志士を見出すほかないのであります。そしてこれに応ずるものは何よりも農民です。日本は由来兵農一致することによってのみ日本たり得るのです。この未曽有の危機において何よりも先にあらねばならんのは愛国観念であり、同胞精神です。そしてこれを最も強烈に抱いておる者は申すまでもなく、みなさま方軍人と我々農民の他ないのであります。そして日本をしてこの未曽有の危機より脱出せしめ、さらに世界革命の火蓋を切らしむる者は、日本愛国革新の国民的大行動のそれにおいて兵農一致する時以外に求めらるるものでは断じてありません。あえてみなさまの深甚なるご考慮と鉄の如き決意をお願いせざるを得ない所以です。」
これは、橘孝三郎『愛国革新本義』の一節である。本著は、昭和7年1月22日、土浦の料亭「霞月楼」において孝三郎が霞ヶ浦航空隊教官、飛行学生らに講演した内容を元にした書である。橘は、明治26年水戸の生まれで東大一高に入学したが中退して帰農し、信仰と自給自足の生活に身を投じた。周囲は発狂したと思ったという。後、愛郷塾を開いて農本主義を唱え、三上卓等海軍青年将校に影響を与えた。三上等が決起した515事件には、橘も愛郷塾から農民決死隊を率いて参画し、変電所の爆破を企てたが未遂に終わった。『愛国革新本義』は5・15事件の直前になされた講演が元になっており、印刷日は奇しくも5月15日である。いわば515事件の思想的根拠を記した書である。
橘は、英国が主導した金融グローバリズムの破綻を受けて「土とまごころ」に基づいた愛国同胞主義による完全国民社会の実現を目指した。それは今日、米国主導の金融グローバリズムの破綻を目撃しつつある我々にとって必要な思想でもある。
今年は橘孝三郎、生誕130年、没後50年に当たる。この節目の年に際し、先般『維新と興亜』副編集長の小野耕資氏が同著を復刻・解説し『日本を救う農本主義』と題して望楠書房から刊行した。
去る令和5年8月19日には、福島伸享代議士、橘家の方々等と共に水戸市内の祇園寺にある橘家墓所をお参りし、愛郷塾をお借りして勉強会を開催、小野氏が同著について講義した。
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