3/2松崎ひでき氏との音楽ホール問題をめぐる公開討論【要旨】 | 折本たつのり千葉県政報告(浦安市)

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千葉県議会議員、折本龍則による政治活動報告
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令和3年3月2日、午後7時から松崎前市長と公開討論しYoutubeでライブ配信しました。音楽ホールにまつわる疑惑について率直に疑問をぶつけました。私なりに聞くべきは聞き、言うべきは言いました。松崎さんも胸襟を開いて説明して下さいました。この様な場を設けて下さった事に敬意を表します。以下に討論の要旨を掲げます。
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最初に折本から問題提起

〇音楽ホールとは
・松崎前市長が「文化芸術の拠点施設」として整備し、平成29(2017)年4/8開館(今年で開業4年目)
・新浦安駅前の施設は市の所有物ではなく、テナントビルの一部フロア(4~7階)を賃借
・文化会館の混雑緩和、優れた音響設備による質の高い音楽サービスの提供が期待される
・総額150億円近くを費やし、30年の賃借契約で期間内解約ができないことから財政の足かせになる(初期費用24.7億円、賃料54億円、指定管理料65億円、中規模改修5億円、計148.7億円、使用料収入は8.4億円)
・1日当たり135.8万円、市民1人当たり2915円(年間)
・令和元年度には音楽ホールの管理運営費に約3.8億円(内、指定管理料1.97億円、賃料1.81億円)支出されている。



多くの公共施設のなかでなぜ殊更音楽ホールを問題視するのか、その最大の理由は事業決定に至るプロセスだ。

〇音楽ホール事業の経緯
平成25(2013)年10月「等価交換」覚書締結(市長による専決)
平成26(2014)年3月 新年度予算(解体工事費、交換差額分、音楽ホールを前提に調査委託費用計上)に9名反対
同年10月 市長選挙(市長公約には謳っていない)
同年12月 設計料を予算計上
平成28(2016)年 着工
平成29(2017)年4月 開館
同年3月内田市長就任
同年7月「音楽ホール検証委員会」設置

〇不透明な不動産の「等価交換」の経緯


平成25年、浦安駅前再開発の用地であった入船1丁目の市有地(現音楽ホールの敷地)と猫実4丁目の民有地及び建物が「等価交換」された。この際、市有地は6.6億円(33.3万円/㎡)、民有地は5.51億円(65.7億円)で評価されたが、平成22年の鑑定評価では、市有地13.18億円(59.9万円/㎡)、民有地4.67億円(55.7万円/㎡)で評価されていた。つまり僅か3年の間に市有地の価値が半減したことになる。たしかに平成23年の東日本大震災によって時価は大きく下落していたものの、市有地の評価額は近隣地(美浜1丁目)の公示価格59.9万円よりも26万円近く安く、民有地の評価額は同じ猫実4丁目の公示価格41.5万円よりも24万円近く高い(下図)。さらに不動産交換の翌年には美浜1丁目の旧東レビルが公示価格以上で取引されている。実は平成25年の不動産鑑定を行ったのは、民有地の所有者であったタカミが指定した鑑定士であり、市有地の不当に低く評価され、民有地が不当に高く評価されたことで、市民の財産が失われたのではないかという疑惑がある。またよりによって何故震災後のこのタイミングで不動産交換をする必要があったのか。





松崎氏ー「等価交換」の経緯について

・熊川町長の時代から、浦安駅前は新浦安駅前と比べて差がありすぎるとして、再整備の必要が認識されていたが、地権者は誰も賛成しておらず100年かかると言われていた。駅前ロータリーの再開発は難しいので先ずは南側の用地を取得しバスターミナルの整備を目指した。
・その再整備の種地としてタカミの土地はどうしても必要だった。タカミも市に協力的だったが、FM局の立ち退きが難航し、市との交渉は長期化した。タカミは立ち退きのために月300万円の賃料収入を9年間→3億2400万円(3600万円×9年間)もの機会損失、FM局の立ち退き料として3500万円、合計で3億5900万円ものコストを強いられた。

・ようやく立ち退きが終了したとき、タカミはビジネスホテルから不動産購入の話が何件も来ていた。平成22年の鑑定評価額ではとても市との交渉には応じられないと告げられていた。いまこのタイミングを失えば二度と浦安駅前の再整備は不可能であった。
・平成22年に行った不動産鑑定は簡易鑑定であった。不動産鑑定士は有資格者なのでその鑑定評価を否定したら話にならない。タカミが指定した不動産鑑定士の評価は市でも検証したが問題はなかった。震災直後の交換となったことは忸怩たるものがあるが、あのタイミングしかなかった。

折本ー市民へのアカウンタビリティーが欠如していたのでは?平成25年に行われた不動産交換は市長の専決で行われ、その事実を議員や市民が知ったのは翌26年の新年度予算においてだった。議会の承認を得てから進めるべきではなかったのか。土地交換の経緯も市民へのアカウンタビリティーが欠如していた。

松崎氏ー全て議会案件で通している。途中経過をお話しするのは適切ではないと判断した。

〇音楽ホールの必要性について

松崎氏ー内田市長は音楽ホールについて「大都市東京に隣接している浦安市において、音楽ホールや美術館といった専門的で高質なサービスを提供する施設は、東京に依存する」と言っているが私とは全く認識が異なる。高質な音楽を提供するのは行政の義務。文化会館の音響が中途半端で音声が外に漏れ伝わるという状況の中で700席の音楽ホールを求める声も上がっていた。

折本ー数ある行政課題のなかで何故音楽ホールを優先したのか。当時数ある行政課題や市民ニーズがあったなかで音楽ホールを優先したのは何故か。例えば、音楽ホールが文化会館の代替というならば、他にも代替施設が必要な行政サービスは幾らでもある。例えば、特養などの高齢者福祉施設は現在も数百人もの入居待ちや待機者がいる。内田市政の下で令和3年度中に待機児童は解消の見込みだが、松崎さんの時には7,80人の待機児童がいた。それらの行政課題があるなかで音楽ホールを作ったのは、十分な市民ニーズや財政見通しの調査をせずに市長がトップダウンで事業決定したからではないか。平成26年には音楽ホールを前提にした調査委託が行われていたが、同年10月の市長選挙でも松崎氏は音楽ホールを選挙公約で謳っておらず、議員が同事業の存在を知ったのは市長選挙後の12月議会(設計料を予算計上)であったと聞いている。
 

松崎氏ートップダウンではない。タカミビルは所得税法の特例を使っていたので、不動産交換から一年以内に建設に着工せねばならず急いでいたのは事実だ。ただ最初から音楽ホールと決まっていたのではなく、当初はプラネタリウムやクライミングウォールも検討した。様々な検証をするなかで音楽ホールに決定したのでトップダウンではない。浦安の基本構想にも「高度な文化芸術の拠点を作る」と謳われている。音楽ホール事業については議員には知らせていた。財政的にも、当時の浦安は音楽ホールに耐えうる財政力があったと思っている。

折本ー音楽ホールに耐えうる財政力があったとは思わない。浦安はこれまで高齢化率が低かった反動で今度は高齢化率が非常に高い自治体になっている。松崎市長が平成28年に発表した「人口ビジョン」には、「本市の生産年齢人口は平成36年をピークに減少する一方で、老年人口は平成55年まで増え続け、その割合は2015年の15.5%から2060年には23.5%まで上昇する見込み」と記されている。生産年齢人口が減ることで税収が減る一方で、急速な高齢化で社会保障支出が拡大する結果、財政収支の悪化傾向が強まることは当時から予測しえたことだ。そうしたなかで、30年の賃借期間で中途解約できない音楽ホールを作ったことが、将来にわたる浦安の財政的足かせになったのではないか。

松崎氏ー30年の契約で期間内解約できないとしたのは、音楽ホールはタカミビルの容積率の70%を占めていることから構造計算に大きく影響し、建築費を押し上げるため、賃料の上増しを要求されていた。契約期間を短くすればその分賃料が高くなる。10年や20年の賃借期間では、誰も貸さない。自分でも貸さない。人口構造の変化に対しても30億円を繰り入れて少子化対策基金を創設し人口ピラミッドの底辺を拡大することに努めた。


〇今後のあり方について
折本ー音楽ホール問題については、批判ばかりではなく今後の建設的な方針を議論し提示するのが私の責任だと思っている。前述したように令和元年度の管理維持費用で3.8億円支出されている一方で、使用料収入は4039万円しかない。つまり純粋に3.4億円を市が持ち出している。浦安市の公共施設の「使用料等設定及び改定基準の指針」に定められた受益者負担比率に基づいて算出するとコンサートホールの一時間あたりの使用料は約8000円だが、実際には類似施設の文化会館小ホールに合わせて2300円に設定された。その差額は音楽ホールを利用しない市民が負担している。来年度での指定管理者の契約期間満了に伴い、内田市長は音楽ホールへの利用料金制(指定管理料を削減し、使用料を市ではなく指定管理者に支払う)を導入するとしている。それも一計だが、今後、使用料の見直しや官民連携を推し進め、民間の資金とノウハウを最大限活用することで、採算性や収益性を図れるスキームに作り替えていくことが必要だ。またそのために、内田市長が設置した職員だけの「音楽ホール検証委員会」ではなく、公正中立性の確保された検討委員会を設置し、廃止を含むあらゆる可能性を検討し今後の方針を議論すべきだ。市長選挙における論点の一つだと思っている。

松崎氏ー公共施設に関して「何が何でも採算や収益」といった考えは間違っている。採算性や収益性があるなら民間がやればいい。民間でできないことを補うのが公共施設だ。採算性を目指すという考えには同意する。音楽ホールの有効活用という考えには賛成だが、廃止を含むあらゆる可能性を議論する検討委員会を設置するつもりはない。音楽ホール問題は市長選の論点でもないと思っている。