誰も死後の世界は知らない。
本当に死んで生き返った人はいない。
死にかけて蘇生した人が、死後の世界を見てきたという例があるらしいが、
実際に死んでいないので、本当に死後の世界に行ったかは定かでない。

一緒に会って、顔を合わせ、話をした事のある人が、急に逝かれる。
そんな事がだんだんと年を重ねると増えてくる。
祖父や祖母は当然の事ながら、中学の同級生の母親が急死し、通夜に参列したのは、
確か大学生の頃だった。今でも悔いているのは、その告別式に
あえて出席しなかったことだ。

その頃は、一人で葬儀に参列することなどない事で、未知の世界への恐怖と
通夜の時、死に顔を拝見した衝撃が入り混じり、どうしても葬儀に行く気になれなかった。

確かに、単位のためにどうしても出席したい講義があることにはあったのだが、
母親の死という、とてつもない暗闇にいる同級生を見捨ててしまったという後ろめたさは、
今でも忘れずにいる。

毎年年賀状だけの間柄になってしまったが、おめでたい元旦に、
年賀状を見るたびに、重苦しい記憶が蘇る。

幸いにも両親の死はまだ経験していないので、未だに同級生が体験した母親の死という
つらさや苦しみを本当には理解できていない。
正直なところ、これからもずっと体験したくないと思うが、こればかりは必ず訪れる事。
ひょっとしたら、先に私の方が迎えが早い可能性も否定はできない。

生きていることが当たり前な今、足元には人生の影ともいえる死が、
いつも隣り合わせであることを、この悲しい儀式は教えてくれる。

明日はまた告別式・・・。

影