当初、私にとって車は一つの交通手段でしかなかった。
通勤や休日の移動手段として
時間を問わず動ける便利さがあった。
そこには何か別の目的があり、それを達成する過程で
車を使用していたに過ぎなかった。
仕事に行くため、店に行くため・・・目的地がそこにはあった。
しかし、車に乗り続けていると、車自体に楽しさを見出すように
なっていた。一番初めに買った車がスポーツタイプだったことも
影響しているかもしれないが、
時間が空けば、シートに座っていた。
20代の活気盛んさが手伝って、
気がつけば高速道路を走っていることが多くなっていた。
何かものすごく走り屋みたいな印象になってしまうかもしれないが、
実際はものすごく安全運転である。
スピード違反で捕まったこともないし、
むろん信号無視で捕まったこともない。
いまや交通安全協会から表彰された、れっきとしたゴールド免許保持者である。
ただ、車を走らせることにすごく楽しみを感じていた。
スピードではない何かに。
それは、自分の思うままに操ることの快感。
なかなか自分の思うままにならない社会、
自分自身の感情でさえもコントロールできない現実の中で、
唯一といっていいくらい日常で操ることの出来る数少ないもの。
それが車であった。
ハンドルやアクセル、ブレーキを媒介して、
自分の意思の通り動くもの。
ひとつ間違えれば殺人の道具にもなりかけない物体を
制御しながら走る。
それは、車がくるまという血の通った身体の一部へと変化した瞬間であった。
今は2代目の愛車に変わり、昔みたいにキビキビした走りは
追求できないが、メタボよろしく一回り大きくなった車体の、
雄大な空間に身をおきながら、今もくるまを楽しんでいる。
愛車2