「静寂機械」//000 | Silent Code

「静寂機械」//000

夜の種族のみなさんこんばんは。
静寂をたたえた夜の時代、芸術が魔術だったころに思いを馳せて


今宵は「静寂機械」の第三回です。


-開演(または静寂)-
テントの中は大勢の観客のたてるガサツなざわめきと町の轟音が混ざり合った醜悪な音で満たされつつあった。
気分が悪くなるほどの醜音の中で冷や汗が出るのを我慢していると、透き通るような空気の振動を感じた。
刹那、全ての醜い騒音が退散し完璧な静寂が姿を現し、観客達は初めて体験する静寂に神を感じ羨望と畏怖の入り交じった宗教的な熱心さを持ってステージの光の中に居るオブジェを見つめた。
あまりの緊張に客席の片隅で突然キイキイと子供が笑い声を上げた。

オブジェはゆっくりとした動作で顔を上げ観客を睥睨した。
信者を導く司祭のようなその態度はまったくその場に調和をもたらしていた。


そして喉が震えたかと見えた刹那、頭上から微細な生物のような「声」が降り注ぎ始めたように感じた。
全ての空間から微細な「声」が生まれていた。観客はそれぞれ自分の手のひらを不思議そうに見つめたりキョロキョロと天上を見渡したり、隣の知人の口元を見たりしていて、いったいどこからその「声」が現われるのか確かめようとしているようだった。そして徐々にその視線は舞台の中央に立つ彼女(またはオブジェ)に集約していった。


今夜もまた、静寂に帰ろう
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