さて今宵は詩、タイトルは「植物時間」 | Silent Code

さて今宵は詩、タイトルは「植物時間」

夜の種族のみなさんこんばんは。
静寂をたたえた夜の時代、芸術が魔術だったころに思いを馳せて

さて今宵は詩、タイトルは「植物時間」


優雅な鉄骨が絡み合う教会のような植物園の片隅で
男が待っている

遠くから聞こえる掠れた鍵盤の音階
男の鼓膜はもうかすかにしか震えてくれない

天井から降り注ぐ柔らかい光
男の目は白濁し、光と影が混ざり合う

何を待っているのかさえおぼろげになるほどの時が存在し

植物達の時間の中で男は朽ちて行く


優雅な鉄骨が絡み合う教会のような植物園の片隅で
現れた女は男の隣に座る
溌剌とした唇で男の名をつぶやく

男の鼓膜はもうかすかにしか震えてくれない

女の溌剌とした瞳が男を見つめる
男の目は白濁し、光と女が混ざり合う

男は女の柔らかい腕の中で最後の息を吐く

遠くから聞こえる掠れた鍵盤の音階

そして女は待ち始める
植物達の時間の中で待ち始める



今夜もまた、静寂に帰ろう
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