さて今宵は詩を5編
夜の種族のみなさんこんばんは。
静寂をたたえた夜の時代、芸術が魔術だったころに思いを馳せて
今宵は詩を5編
黒い画集
晴れた日の夕方
俺は公園のベンチで初老の男が黒い表紙の本を読んでいるのを見かけた
中身が気になりそっと隣に腰をおろし覗き込んだ
驚いた事にページも漆黒だった
しかしよく見ると片方のページには小さな点がちりばめられていて
宇宙にきらめく星のように見えた
もう片方のページには不可思議なレリーフが施されている
俺は盲目の老人に何を読んでいるのか尋ねた
彼は指でゆっくりとページを愛撫しながら
サルバドール・ダリの画集を鑑賞しているのだと答えた
パズル
俺は美しい絵画を買った
全ての財産を差し出して買った
ほんとうに美しいんだ
しかしあまりにも巨大な美しい絵画は俺の部屋の扉を通らなかった
俺は絵画をぶち壊し 粉々にして部屋に入れた
美しい絵画が神々しい切れ端となって俺の部屋に散らばる
美しい絵画は憂鬱なパズルとなった
バイブル
カウンターの女が俺に汚れた紙幣でつりを渡した
俺は自分の手のひらの汚れた紙幣を握る
手を洗いたくなる
しかしその汚れた紙切れこそが俺のバイブル
清らかなものを手に入れる為の汚れた紙切れ
白い本
真っ白な表紙の本を買った
店員が薄汚い手で少し汚した
少し汚れた真っ白な表紙の本
微かな汚れを見つめながら
俺はその真っ白な表紙の本に興味を失ってゆく
ノイズ
彼方から聞こえる微かなノイズ
街の連中は感じないらしい
俺は感じる
心地よいノイズ
なつかしい宇宙のチューニング音
今夜もまた、静寂に帰ろう
www.silentgraphic.jp
静寂をたたえた夜の時代、芸術が魔術だったころに思いを馳せて
今宵は詩を5編
黒い画集
晴れた日の夕方
俺は公園のベンチで初老の男が黒い表紙の本を読んでいるのを見かけた
中身が気になりそっと隣に腰をおろし覗き込んだ
驚いた事にページも漆黒だった
しかしよく見ると片方のページには小さな点がちりばめられていて
宇宙にきらめく星のように見えた
もう片方のページには不可思議なレリーフが施されている
俺は盲目の老人に何を読んでいるのか尋ねた
彼は指でゆっくりとページを愛撫しながら
サルバドール・ダリの画集を鑑賞しているのだと答えた
パズル
俺は美しい絵画を買った
全ての財産を差し出して買った
ほんとうに美しいんだ
しかしあまりにも巨大な美しい絵画は俺の部屋の扉を通らなかった
俺は絵画をぶち壊し 粉々にして部屋に入れた
美しい絵画が神々しい切れ端となって俺の部屋に散らばる
美しい絵画は憂鬱なパズルとなった
バイブル
カウンターの女が俺に汚れた紙幣でつりを渡した
俺は自分の手のひらの汚れた紙幣を握る
手を洗いたくなる
しかしその汚れた紙切れこそが俺のバイブル
清らかなものを手に入れる為の汚れた紙切れ
白い本
真っ白な表紙の本を買った
店員が薄汚い手で少し汚した
少し汚れた真っ白な表紙の本
微かな汚れを見つめながら
俺はその真っ白な表紙の本に興味を失ってゆく
ノイズ
彼方から聞こえる微かなノイズ
街の連中は感じないらしい
俺は感じる
心地よいノイズ
なつかしい宇宙のチューニング音
今夜もまた、静寂に帰ろう
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