待てども待てどもメールは帰ってこなかった。
相変わらず遅い。
既にメイド喫茶で時間を潰し日本橋を歩き回り
あげくうどんまで食べて天王寺まで来てしまった。
3時間たってしびれをきらせて再度メール送信。
そしてモスバーガーで寝たふり。
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それから3週間と少し前の話。
私は大切な彼女のためにプレゼントを贈ることにした。
それはベートーベン直筆の第九が彫られたZIPPOライター。
昔彼女が探し回っていた品だ。
今では通販でしか見かけなくなっていた。
イニシャル刻印サービスというのがあったので頼んでみた。
楽譜に重なるのでは、と質問のメールも送って確認もとった。
楽譜に重ならないように蓋のヒンジ部に記すと回答があったので
快く承諾。確認メールと4日後発送の知らせが来た次の日、別れた。
こうして3週間ほど届いたライターと睨めっこしながら考えた。
贈るか捨てるべきか。
元々クリスマスに贈ろうと考えていた品だ。
イニシャルまで入ってる上に既に買おうということを知らせた人間までいる。
使うくらいなら捨てる。長瀬川にでも。
そう思って訪れる24日まで唸っていた。
結論としては贈りたかった。最後の嫌がらせだ。意地でも使ってもらおう。
しかし彼女とは別れて以来一度も口を聞いていなかった。
実際数メートルの距離でお互い挨拶すら交わさなかった。
交わせなかった。恐らく似たような心境だろう。
そしてその後もただ流れる時間に従うまま24日になった。
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気づけば閉店時間を30分もオーバーしていた。
やっとメールが返ってきた。
時間はとらせない。と前置きしたのに答えは
今日はケーキ買って帰るから会えない。ということだった。
的外れ・・・。別に5分でも30秒でも良かった。
要るか要らないか聞いたのにそれに関しては放置。
それでお前はいいのか。とツッコミを入れたくなったが今日だけは譲れない。
宙に浮いたZIPPOライターをこのまま持っていても
年越しまでには投げ捨ててしまう。
再度場所を知らせて送信。
最初に言っておけば良かったと少し後悔した。
いつもどおりの笑顔だった。
捨てられる運命にあったzippoライターを渡す。
中身を開けるまでもなく鞄にしまった。
きっとバレてるんだろう。
何気ない話をして別れた。特に真面目な話はしなかった。
その方がいいやと思った。折角の笑顔だから。
いつもいつもそう思ってたのが仇となったのだが、最後だからいいか。
帰りはずっと歓喜の歌を聞いた。
再び邂逅した時、彼女はきっと良き親友になっていることだろう。
そうなることを信じ、メリークリスマス。