関連エントリ:論文
Choma, B. L., & Hodson, G. (2008). And so the Pendulum Swings: A Framework for Conceptualizing the Causes of Prejudice. In M. A. Morrison & T. D. Morrison (Eds.), The Psychology of Modern Prejudice (pp1-26). New York: Nova Science Publisers.
偏見研究を個人⇔社会(文脈),正常⇔異常の2軸で整理。整理しただけなんだけど,これまでの研究の大雑把な把握に役立つし,どういう研究が欠けているかの見通しにも役立つ。現在の僕の研究は第2・第3象限。正常な人々における偏見ですね。第4象限の研究は多分日本では欠けている。昨今の歴史修正主義の動向や,テロとの絡みから見るに,必要とされている研究領域でないかと思う。第1象限は過去に流行し,最近は偏見研究ではあまり省みられていない。犯罪心理学とかと連携できる領域か。
内容 ★★★★☆
読みやすさ★★★★☆
入手容易度★★★☆☆
総合評価 ★★★★☆
Dovidio(2001)による偏見研究の展望。
1.偏見を病理的な現象として捉える。
Adorno et al.(1950)などが代表的
無意識,精神力動,敵意の投影,置き換えなどがキーフレーズ
個人差…パーソナリティ(権威主義など),認知(教条主義など)に注目
2.偏見がノーマルな心理過程の産物であることに注目
社会的アイデンティティ理論(Tajfel & Turner, 1979)などが代表的
1960s 社会的・文化的規範,関心
1970s 集団間関係,構造的条件
1980s~1990s初 普通の認知の不幸な結果としての偏見
3.ますます多次元的な問題に。
潜在的 vs 顕在的 など
本研究では,個人⇔社会(文脈),正常⇔異常の直行する2軸で,偏見研究を整理。
![$Accipiter-振り子モデル](https://stat.ameba.jp/user_images/20100331/16/silegrainnemeurt/87/35/j/o0563058610475321847.jpg?caw=800)
*元の図は左下から時計回りに象限を配置してあったが,一般的ではないので右上から反時計回りになるように回転させて配置しなおした。象限名と内容の対応は元の図のままである。
第1象限:不適応な人々
初期には精神力動理論の影響。
投影→ホモフォビア(Adams et al., 1996)など,実証に成功したものも一部にはある。
Adorno et al.(1950)の権威主義
一貫しない結果や尺度の妥当性の問題,精神力動理論一般が抱える問題
精神力動的な研究は
社会的構造の解明や一般の人への適用に限界
恐怖や不安への注目は,保守的権威主義などに示唆を与えた
人間の嫌悪感に不合理なまでに敏感な人は偏見が強く権威主義に基づくイデオロギが媒介
強迫性‐依存性人格障害は権威主義を介して偏見に影響
第2象限:脅威に敏感で認知的に硬直した人々
病的でない人々の個人差
イデオロギー,パーソナリティ,認知スタイル,感情
Allportの権威主義,Rokeachの教条主義,保守的権威主義,社会支配指向,Need for Structure
保守的権威主義と社会支配指向で集団間態度の分散の50%を説明できる
第3象限:競争的文脈と地位自体の永久化
現実的葛藤理論(Sherif, 1966)
社会的アイデンティティ理論(Tajfel & Turner, 1979)
社会的カテゴリ理論(Turner, 1986)(SITより認知寄り)
認知のバイアス:母比率の見落とし,帰属のバイアス,スキーマ,期待,錯誤相関など
システム正当化理論(Jost & Banaji, 1994)
第4象限:激烈な対立と死すべき運命
フラストレーション‐攻撃仮説→実証は上手くいってない
没個性化(Zimbardo, 1969)
→実際にはポジティブな行動が促進されることもある(Postmes & Spears, 1998)
スケープゴート
非人間化
Staubのジェノサイド研究
存在脅威管理理論*(Greenberg et al. 1986)
振り子は第1象限から始まり振れているが,どれかの象限のアプローチが優れているわけではない。
*存在脅威管理理論は,脅威の普遍性を説いているので,個人的には第3象限ではないかと思う
◆出典◆
The Psychology of Modern Prejudice/Morrison & Morrison
![](https://img-proxy.blog-video.jp/images?url=http%3A%2F%2Fecx.images-amazon.com%2Fimages%2FI%2F51uJGvtloeL._SL160_.jpg)
¥10,485
Amazon.co.jp
本自体は現代的偏見のみを扱った論文集というとてもマニアックな本。人種差別主義だけでなく性差別や同性愛,レイプ神話などが含まれる。しかし高い。無意味にカラー印刷を使ってたり,ハードカバーしかなかったり,もう少し安くする工夫をして欲しかった。
内容 ★★★★☆ 研究者専用の本でさらに必要な人は限られる。いい論文も多い。
読みやすさ★★★★☆ とりあえず既読分は平易な英語
入手容易度★★★☆☆ 高い…。
総合評価 ★★★★☆
Choma, B. L., & Hodson, G. (2008). And so the Pendulum Swings: A Framework for Conceptualizing the Causes of Prejudice. In M. A. Morrison & T. D. Morrison (Eds.), The Psychology of Modern Prejudice (pp1-26). New York: Nova Science Publisers.
偏見研究を個人⇔社会(文脈),正常⇔異常の2軸で整理。整理しただけなんだけど,これまでの研究の大雑把な把握に役立つし,どういう研究が欠けているかの見通しにも役立つ。現在の僕の研究は第2・第3象限。正常な人々における偏見ですね。第4象限の研究は多分日本では欠けている。昨今の歴史修正主義の動向や,テロとの絡みから見るに,必要とされている研究領域でないかと思う。第1象限は過去に流行し,最近は偏見研究ではあまり省みられていない。犯罪心理学とかと連携できる領域か。
内容 ★★★★☆
読みやすさ★★★★☆
入手容易度★★★☆☆
総合評価 ★★★★☆
Dovidio(2001)による偏見研究の展望。
1.偏見を病理的な現象として捉える。
Adorno et al.(1950)などが代表的
無意識,精神力動,敵意の投影,置き換えなどがキーフレーズ
個人差…パーソナリティ(権威主義など),認知(教条主義など)に注目
2.偏見がノーマルな心理過程の産物であることに注目
社会的アイデンティティ理論(Tajfel & Turner, 1979)などが代表的
1960s 社会的・文化的規範,関心
1970s 集団間関係,構造的条件
1980s~1990s初 普通の認知の不幸な結果としての偏見
3.ますます多次元的な問題に。
潜在的 vs 顕在的 など
本研究では,個人⇔社会(文脈),正常⇔異常の直行する2軸で,偏見研究を整理。
![$Accipiter-振り子モデル](https://stat.ameba.jp/user_images/20100331/16/silegrainnemeurt/87/35/j/o0563058610475321847.jpg?caw=800)
*元の図は左下から時計回りに象限を配置してあったが,一般的ではないので右上から反時計回りになるように回転させて配置しなおした。象限名と内容の対応は元の図のままである。
第1象限:不適応な人々
初期には精神力動理論の影響。
投影→ホモフォビア(Adams et al., 1996)など,実証に成功したものも一部にはある。
Adorno et al.(1950)の権威主義
一貫しない結果や尺度の妥当性の問題,精神力動理論一般が抱える問題
精神力動的な研究は
社会的構造の解明や一般の人への適用に限界
恐怖や不安への注目は,保守的権威主義などに示唆を与えた
人間の嫌悪感に不合理なまでに敏感な人は偏見が強く権威主義に基づくイデオロギが媒介
強迫性‐依存性人格障害は権威主義を介して偏見に影響
第2象限:脅威に敏感で認知的に硬直した人々
病的でない人々の個人差
イデオロギー,パーソナリティ,認知スタイル,感情
Allportの権威主義,Rokeachの教条主義,保守的権威主義,社会支配指向,Need for Structure
保守的権威主義と社会支配指向で集団間態度の分散の50%を説明できる
第3象限:競争的文脈と地位自体の永久化
現実的葛藤理論(Sherif, 1966)
社会的アイデンティティ理論(Tajfel & Turner, 1979)
社会的カテゴリ理論(Turner, 1986)(SITより認知寄り)
認知のバイアス:母比率の見落とし,帰属のバイアス,スキーマ,期待,錯誤相関など
システム正当化理論(Jost & Banaji, 1994)
第4象限:激烈な対立と死すべき運命
フラストレーション‐攻撃仮説→実証は上手くいってない
没個性化(Zimbardo, 1969)
→実際にはポジティブな行動が促進されることもある(Postmes & Spears, 1998)
スケープゴート
非人間化
Staubのジェノサイド研究
存在脅威管理理論*(Greenberg et al. 1986)
振り子は第1象限から始まり振れているが,どれかの象限のアプローチが優れているわけではない。
*存在脅威管理理論は,脅威の普遍性を説いているので,個人的には第3象限ではないかと思う
◆出典◆
The Psychology of Modern Prejudice/Morrison & Morrison
![](https://img-proxy.blog-video.jp/images?url=http%3A%2F%2Fecx.images-amazon.com%2Fimages%2FI%2F51uJGvtloeL._SL160_.jpg)
¥10,485
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本自体は現代的偏見のみを扱った論文集というとてもマニアックな本。人種差別主義だけでなく性差別や同性愛,レイプ神話などが含まれる。しかし高い。無意味にカラー印刷を使ってたり,ハードカバーしかなかったり,もう少し安くする工夫をして欲しかった。
内容 ★★★★☆ 研究者専用の本でさらに必要な人は限られる。いい論文も多い。
読みやすさ★★★★☆ とりあえず既読分は平易な英語
入手容易度★★★☆☆ 高い…。
総合評価 ★★★★☆