(賠償予定の禁止)
・使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。(法16条)
【違約金の意義】
損害発生の有無にかかわらず、労働者本人や身元保証人が支払うべきものとして、予め定められたもの。
現実に生じた損害について損害賠償を請求することは禁止されていない。
(前借金相殺の禁止)
・使用者は、前借金その他労働することを条件とする前貸の債権と賃金を相殺してはならない。(法17条)
【労働することを条件とする前貸の債権の意義】
労働者が使用者から信用に基づいて融資を受ける場合など、明らかに身分的拘束を伴わないものは該当しない。
また、労働者が自己の意思によって相殺をすることは、禁止されていない。
(強制貯蓄の禁止)
・使用者は、労働契約に付随して貯蓄の契約をさせ、又は貯蓄金を管理する契約をしてはならない。(法18条①)
(任意貯蓄)
・使用者は、労働者の貯蓄金をその委託を受けて管理しようとする場合には、法定の措置をとらなければならない。(法18条②他)
社内預金:使用者が直接預金を受け入れて、直接管理。
通帳保管:使用者が受け入れた預金を労働者名義で金融機関等に預入れ、その通帳や印鑑を使用者が保管する。
【共通の措置】
労使協定(貯蓄金管理協定)を締結し、所轄労働監督署長へ届け出る。
貯蓄金管理規程を定め、労働者に周知させるための措置をとる。
労働者が貯蓄金の返還を請求したときは、遅滞なく返還する。
【社内預金】
労使協定に以下の事項を定め、その具体的取扱いについて貯蓄金管理規程に定める。
・預金者の範囲
・預金者1人当たりの預金額の限度(賃金の一定率とすることも可)
・預金の利率・利子の計算方法
・預金の受入れ・払い戻しの手続
・預金の保全方法
毎年3月31日以前1年間における預金管理状況を、4月30日までに、所轄労働基準監督署長に報告する。
年5厘以上の利率による利子をつける。
【通帳保管】
貯蓄金管理規程に、預金先の金融機関名・預金種類・通帳保管の方法・預金入出金の取次方法等を定める。
(中止命令)
・労働者が、貯蓄金の返還を請求したにもかかわらず、使用者がこれを返還しない場合において、当該貯蓄金の管理を継続することが労働者の利益を著しく害すると認められるときは、行政官庁(所轄労働基準監督署長)は、使用者に対して、その必要な限度の範囲内で、当該貯蓄金の管理を中止すべきことを命ずることができる。
この場合、使用者は、遅滞なく、その管理に係る貯蓄金を労働者に返還しなければならない。(法18条)