2本目は君に渡した | 海底で盆踊り

海底で盆踊り

i dance with me


君の涙の上を歩いて回った
どこにもいなかった

僕は今日2本目のジュースを買った
1本目は仕事の休憩中に、2本目は君に渡した

生きようって思った

自分以外の泣き顔を見るのは何年ぶりだろう
自分の泣き顔もまだ片手におさまるほどしか見たことがない

懐かしかった
すべてが懐かしかった
これだって思った

エナメルバッグを斜めにかけて
後ろでひとつ結んだ黒い髪
肌は少し焼けていて
表情は顎の先まで濡れていた
ふらふらしながら泣いていた
声を出して泣いていた

窓から大丈夫ですか?って声をかけた
返事がなかったからきっと聞こえていなかった

胸騒ぎがした

ドライヤーを止めて普段着に着替えて走った

近くの自動販売機でとっさにデカビタを選んだ
今まででもらったことがあって嬉しかったジュースだった
気遣いが嬉しかったジュースだった

走って追いかけたらまだふらついてやっぱり声を出して泣いて歩いてた

息が切れたのも何年ぶりだったんだろう、物凄く久しぶりの気持ちだった

すみません、あの、アパートにいたんですけど、泣いてたから…
大丈夫ですか?
あの、これ。

すみません、ありがとうございます。。。。

気を付けて帰って下さい、頑張って下さい。

今までで言われたことがあって嬉しかった言葉で別れた
気遣いが嬉しかった言葉で別れた

不審に思われるのが嫌ですぐに背を向けて自宅を目指したけど
30秒後には後悔が押し寄せてきてすぐに追いかけた
けどどこにもいなかった

彼女にまた会えたらゆっくり話を聞きたい、そして話したい

声を出して泣くこと
それが人間だなって気付けたんです
もうほとんど泣けなくなってしまったけど
まだ泣ける時間はあるんなら大事にしようと思いました

僕は泣いてる人が好きです