点滴中毒死無期判決 | しかまち心療内科のブログ

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精神科の記事は一応専門として書いていますが、政治経済は素人ですので趣味で書いています。

2021.11.10

点滴に毒物を入れて3名死亡させた看護士が無期となった。自閉スペクトラム症があり当時心身耗弱であった、と。

私は判決に精神鑑定を中心に据えるのはよくないと思っている。参考意見程度にしてはどうか。そもそも心神耗弱というが精神症状のために誤った判断をして凶行に及んだというのか?この人は冷静に判断して行動しているように思える。たとえ自閉スペクトラム症であっても判決はそうでない人と同様に行うべきだと思う。自閉スペクトラム症は性格のようなものであり病気と捉えないほうがいいというのが精神科の一般的な見方だ。スペクトラムという言葉は虹のような、薄い物から濃ゆいものがあるという意味だと思う。0か1ではないのだ。みなだれしもこの傾向を大なり小なり持っていると考えてもいいと思う。体重の思い、軽いのようなものですか。反社会的行動をとる人たちも同じようなものだと思う。衝動性の高さ、倫理観のなさ、ストレス耐性の低さ、共感性の乏しさ、それらを持っている人たちが刑務所には多いだろうと思う。この反社会的人格障害を病気としてとらえたら刑務所にいる大勢の人は外に出すということにならないか。自閉スペクトラム症を刑の軽減理由にすることにはそれくらい抵抗を感じる。こういう判例を出してしまうと、自閉スペクトラム症はこのような行動を起こす人たちだという誤解を招くと思う。そうではない。彼女が異常であって自閉スペクトラム症には罪はない。

 

すみません、心神耗弱と言っているのは弁護側ですね。鑑定医は統合失調症だった、と。統合失調症としての症状は紙面からはわからない。判決は完全に責任能力ありなのに減刑になっている。更生の可能性があるというが犯罪者のほとんどは更生の可能性はあると思う。しかし、

結果責任で刑を追うというものではないだろうか。

 

 

11.15文芸春秋12月号

そこの病院で3か月間に不審死した人は40人以上いる。火葬されて原因がはっきりしない例は他にもある。

鑑定した昭和大学医学部教授岩波明氏のコメント。(松沢病院時代の私の先輩です)

久保木氏は保護室内の便器に雑誌を詰め込んであたりを水浸しにした。「排泄後に手を洗わず雑誌をあつかってしまった。それをスタッフの目から隠すために便器に流した」折り紙のつるがなくなったのが自分のせいだと言われたと相手の耳と鼻に綿棒で洗剤を押し込めた。幻覚妄想が見られ統合失調症と思われた。「死ね、ブタなどという悪口がひどい」後頭部をぶつける自傷行為が始まり、薬なしの鑑定は不可能になり再び抗精神病薬を内服することとなった。

勤務中死亡した事例に当たってしまい、家族から激しく攻められた。(終末期の病院なので人が死ぬことはちょくちょくある。家族によっては憤りをぶつける人もいる。これは時々あること) その後その体験がきっかけになり、自分が勤務しない時間に点滴に毒物を混入し、他の人の時間に患者さんがなくなるようにしていった。(点滴は一日に4本とか使ったりするので何時から何時まではこのパックというように準備をするのが普通なのでそういったこともできる)

 

彼女は明らかな統合失調症のようであり、しかも思考が合理性を欠き、人格も崩れている印象を受ける。これは心神喪失といってもよいのではないでしょうか。心神耗弱は間違いないと思う。しかし、多数の人間を死亡させているため彼女を無罪にするというのは最近の司法ではやらない。病気はなかったことにして刑を科している。現場では精神障害者は罰せずという現行法は破綻している。法律を変えるか、あるいは彼女のような例は法律にのっとって罰しないようにすべきでは。個人的には法律を変えるべきと思う。精神障害者の人でこのようなことをする人はほとんどいない。殺人を犯す患者さんは特別なんじゃないかと思う。医療ではなく、司法で判断してほしい。今のままだと一般の患者さんも罪を犯す人もひとくくりにされてしまう。