不法行為において、直接の被害者ではないが、当該不法行為に起因して第三者に財産的損害や精神的損害が生じる場合がある。

この場合の処理のまとめ。

  1 一般原則

不法行為の原則からいえば間接被害者であっても、その間接被害者との関係で独立に不法行為の要件が充たされれば、加害者に対する損害賠償請求権が発生する。

 

  2 修正

間接被害者という特殊性から、加害者に対する請求が認められやすくなったり、認められにくくなったりする場合がある

 (1)間接被害者であることから、一般原則より請求が認められやすくなる場合

ア 被害者の損害に含まれる損害を間接被害者が支出した場合(例:間接被害者が被害者の治療費を出した)

直接の被害者に生じた損害の中に含まれる費用項目については,その損害を実際に填補した間接被害者からの請求が認められる。

この場合、第三者は,自己に対する独立の不法行為の成立を立証するまでもなく賠償請求が認められる。つまり,一般原則より請求が認められやすくなっていることになる。

Qこのことをどのように説明するか(理論構成)

⇒間接被害者が被害者に対する扶養義務者であれば422条の賠償者の代位の法理の類推により、間接被害者は加害者に請求できる。

間接被害者が被害者に対する非扶養義務者であれば、事務管理(722条)の法理の類推により、間接被害者は加害者に請求できる。

※つまり、被害者に生じた損害を、422条or722条により支出した者が加害者に請求できるという話。

 

イ 定型的付随損害と言われる損害の場合(例:家族が被害者のものに駆けつけるための交通費)

直接の被害者に対する不法行為に伴って,一定範囲の第三者に定型的に発生する損害といえれば、その第三者からの賠償請求が認められる(711条の慰謝料請求権はこのことを明文で定めたものと理解される。)。

定型的付随的損害が生じた第三者といえれば、その第三者は、自己に対する独立の不法行為の成立を立証するまでもなく賠償請求が認められる。つまり,一般原則より請求が認められやすくなる。

Qこのことをどのように説明するか(理論構成)

⇒学説 直接の被害者に生じた損害の金銭的評価の問題の含めて考えることができる。

 判例 相当因果関係概念をもちいてこれらの損害を処理。

 ※つまり、間接被害者に生じた損害を、直接被害者に生じた損害の範囲に含まれるとみることで、間接被害者は加害者に請求で  きることになるという話。

 

 (2)間接被害者であることから,一般原則よりも請求が制限される場合

⇒企業損害についは,一般原則よりも限定された範囲で賠償を認めるべき(最判昭和43年11月15日)。

∵被害者が会社の重要人物であり、その死傷により会社に多大な損害が生じた場合、因果関係が認められるとしても、賠償額があまりにも高額になりかねず、そうすると、いかに過失ある加害者であるとしても、ここまで遠い範囲ともいいうる損害についてまで賠償責任を肯定することは、損害の公平な分担からは問題である(ここは理論というより価値判断)。

また、企業はこれらのリスクを予測し、被害拡大を分散させる手立てを講じておくことが可能。

※判例の立場からは,昭和43年判決は,相当因果関係の判断要素について制限的に判断するにあたってのファクターを指摘したものと考えられる。

学説であれば,賠償範囲の判断要素とみることになると思われる。