一冊の絵本があったの。
『わすれられないおくりもの』
どうしてこんなにも、心の中に残り続けているんだろう。
そう思って、もう一度ページをめくったの。
アナグマさんは、長い人生の終わりに、みんなへ言葉を残した。
「長いトンネルの向こうへ行くよ。さようなら。」
そうして、その姿は、みんなの前から消えてしまう。
悲しいはずなのに。
どうして、この物語は、こんなにも優しいんだろう。
アナグマさんは、モグラさんにも、カエルさんにも、キツネさんにも、ウサギさんにも。
それぞれの心へ、消えることのない贈りものを残していった。
姿はなくなっても。
アナグマさんは、みんなの中で生き続けていたの。
読んでいると、わたしはいつも彼女を思い浮かべる。
手紙を贈ることが好きだった、あの人。
どんな言葉も、優しく包むように綴ってくれる人だった。
だから、ときどき怖くなるの。
もし最後の一通が届く日が来るのなら。
その手紙は、別れの挨拶になってしまうんじゃないかって。
あなたの、たったひとつの物語。
最後の一ページは、どんな結末を迎えるのだろう。
でも、わたしの物語の中であなたはきっと、最後まで読み終えることのできない一ページ。
だから。
その一ページだけは。
きっと一生、めくれないよ。
