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●世界が注目する「金融×IT」のオープンイノベーション
本連載の第5回で、オープンイノベーションを活用して新規事業開発に取り組むグローバル企業の事例を取り上げた。最近、同様の動きが活発化しているのが金融業界だ。
ユーザーの利用する端末が、PCからスマートフォン、タブレット、ICカード、ウェアラブル機器へと拡大し、GoogleやTwitter、Facebook、LINEなど、ソーシャルメディア系企業が電子決済サービスを本格化させつつある。こうした中で既存の金融機関は、オープンイノベーションを介して「金融テクノロジー」(Fintech)系のスタートアップ企業とエコシステムを構築し、競争力の強化を図ろうとしている。
Accentureが3月26日に公表した「Fintechと金融の未来」と題するレポートによると、世界のFintechベンチャーへの投資額は2013年の40.5億ドルから、2014年は122億ドルへ約3倍に拡大している。地域別にみるとウォール街を抱える米国の市場規模が大きいものの、成長率ではシティを抱える英国やアイルランドに加え、北欧諸国やオランダ、ドイツなど、欧州の伸びが顕著になっている。
Fintechを積極的に支援している例には、金融機関同士の通信ネットワークを運営する国際銀行間通信協会(SWIFT)が2009年に立ち上げた「Innotribe」がある。筆者が2012年に大阪で開催されたSWIFTの「Sibos」に参加した時、モバイルペイメントなどの新技術の紹介はあったものの、メインテーマはコンプライアンス対応であり、Innotribe自体は話題になっていなかった。それが、今や「SWIFT Innotribe Incubator」など、Fintech系スタートアップ企業向けのオープンイノベーションコンテストを企画運営する組織として、金融以外の業界からも注目を集めるようになった。
欧米ではLending Club、On Deck Capitalなど、Fintech系企業による株式公開が行われている。この他に英Barclaysグループ、米Citiグループ(米国)、スペインのBilbao Vizcaya Argentaria銀行やSantander Central Hispano銀行、ロシア貯蓄銀行(SBERBANK)(ロシア)など、既存の金融機関がFintech向けの投資ファンドを設立したり、Fintech企業を買収したりするケースも増えている。…