古新築っぽいペンキの秘密
古新築の現場に再びお伺いする。
なんだか空模様が怪しく、今にも嵐が来そうだなあー。
と思っていたが、駅に降りたとたん大粒の雨が降ってきた。
空が真っ暗になり冷たい風が吹いてくる。
逃げ惑う駅前の人々。
でも私は大丈夫。傘を持ってきているのだ。天気予報バンザイ。
現場につくと、足場がはずれ、Mさん宅の全貌が露わになっていた。
まあ、なんというカワイイお家!!
シンプルな造形におさえた配色。
店舗部分は赤い壁にモスグリーンの屋根。
「最近よく見る新築」とは全く違う「Mさん邸」だった。
道の方を向いた店舗部分が真っ赤に塗られている。
これは目立つなあ。何のお店かわからなくても人が引き寄せられてきそう。
赤色をよくよく見ると…あれ?
ペンキ塗りたてなのになんだかちょっと違う。
つやつやピカピカしていないぞ。
建築家の大川さんにお話しを伺う。
「このペンキは、下地を塗っていないんです」
通常ペンキを塗る場合は、発色をよくするため下地材を塗る。
材料が色を吸わないようにするためでもある。
木材がペンキの色を吸ってしまうと、出来上がりの色味が変わってしまうのだ。
「でも、それが味になるようなペンキの塗り方をしているんです」
そうだ、このお家は「古新築」だった。
新築なのにピカピカの作り立てには見えないお家をつくっているのでした。
だから、ペンキもキレイに塗るのではなくて、
最初から、少し色が褪せた風。
よ~く見ると色ムラがある。
下地材も発色のよいサイディングではなく、あえて本物の木を選んでいる。
それが古新築の味になるのだ。
「ペンキの色味は時間が経つにつれて変化するので、一年くらいたってからまた見直したいと思います」
と大川さん。
お店の外観のペンキは大川さんとスタッフさん、Mさんご夫婦で塗った。
2日間かかったそうだ。お疲れ様でした。
建具の秘密
Mさんのお宅の隣は、Mさんのご両親の家だ。
今まで建っていた一軒家を解体し、新しくご両親の家とMさん夫婦の家を建てた。
ご両親の家は某ハウスメーカーで施工。
古い家で使っていた建具をとっておいて、Mさん夫婦の古新築で使う予定だ。
保管してある建具を見せていただく。
一枚の板で作った立派な引き戸。
模様のはいった小さいガラス窓。
装飾のある欄間。
昭和な香りのするステキな建具ばかりだ。
これが新築の家にしっくりなじんでいたらステキだろうな、と思う。
建具も現役続行のポジションが決まり、とってもうれしいことだろう。…