■「安心、雇用も増」×「レーダーで健康被害」
■拘束力なし 中学生・永住外国人にも投票権
日本最西端の与那国島(沖縄県与那国町)への陸上自衛隊「沿岸監視隊」配備の賛否を問う住民投票が22日に行われる。18日に期日前投票も始まり、配備賛成派と反対派双方の訴えは熱を帯びる。ただ、政府は中国の脅威を念頭に「部隊配置は必要」(中谷元・防衛相)として投票結果にかかわらず配備を進める方針で、中学生と永住外国人に投票資格を与えた住民投票には識者の批判も多い。
賛成派と反対派は団体を結成、支持を訴えている。
賛成派は配備の意義をまとめた資料を作った。災害対応を含め「安心・安全が守られる」ことに加え、人口減と高齢化が進む中、陸自隊員と家族が町民になることで税収と雇用が増えて活性化すると訴える。
反対派が作成した資料では、沿岸監視レーダーによる健康被害についてレーダーの電磁波が「私たちをむしばむ」と不安をあおる。「私たちの体は、私たち自身が守らなければなりません」とも強調している。
賛成派の金城信浩さん(71)は「住民投票には問題が多いが、やるからには勝つ。これで決着をつけたい」と語る。反対派の町議は「陸自配備に絞った住民投票で民意を問い、流れを止める」と話す。
陸自配備で町民が判断を示すのはこれで3度目。平成21年と25年の町長選は陸自配備を最大の争点とする一騎打ちで、いずれも陸自を誘致した外間守吉(ほかま・しゅきち)町長が反対派を破っている。
今回の住民投票実施は町議会野党が主導した。麗澤大の八木秀次教授は「住民投票は首長選で勝てない少数派の奇策として行われることが多く、邪(よこしま)な手法だ」と批判する。
住民投票の投票資格がある町民は1284人で、このうち選挙権のない中学生は41人、高校生や20歳未満は56人、永住外国人は5人で計102人だ。25年の前回町長選は外間氏と相手候補は47票差で、その票差を埋めるため町議会野党は中学生や外国人に投票資格を与えることにこだわった。
反対派は「自衛隊基地ができたら米軍もやって来る!」と書いた横断幕を掲げる。米軍の配備や展開は想定されていないが、米軍を持ち出すことで昨年11月の沖縄県知事選と12月の衆院選の県内選挙区で米軍普天間飛行場(宜野湾(ぎのわん)市)の名護市辺野古移設に反対する勢力が完勝した余勢を駆る思惑がある。
住民投票は1月15日に町議会で可決した条例に基づき実施され、法的拘束力はない。(半沢尚久)