原爆ドーム前にカキ船はだめ? =移転計画めぐり論争―広島 | 国際そのほか速

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 川岸に係留した屋形船でカキ料理を提供する「カキ船」を広島市中区の原爆ドーム近くに移転する計画をめぐり、一部の市民から「祈りの場であるドームの世界遺産としての価値が損なわれる」と反対の声が上がっている。市は「カキ船は江戸時代から続く広島の文化。手続きにも法的にも問題はない」と理解を求める考えだ。
 カキ船は現在、ドーム前を流れる元安川に2店ある。このうち、ドームの約600メートル下流で営業している「かなわ」が今年夏にも、原爆忌の式典などが行われる平和記念公園脇の元安橋のたもとに移転する。台風などで流され橋にぶつかる恐れがあるとして、川を管理する国が流れの少ない場所への移転を求めたからだ。
 かなわは市などと移転先を協議。市が事務局を務める「水の都ひろしま推進協議会」は昨年11月に移転を認め、国も河川の占用許可を出した。
 これに対し、一部の市民らは「カキ船のにぎわいは平和の地にふさわしくない」と反発。国連教育科学文化機関(ユネスコ)の諮問機関「日本イコモス国内委員会」も1月末、移転先が「鎮魂と平和への深いつながりを持ったエリア」だとして、カキ船がドームに近づくことを問題視し、松井一実市長に懸念を表明した。
 市は「慰霊碑の管理者や被爆者団体などへの説明を行ってきた。(今後も)説明を尽くす」とコメント。松井市長は9日の記者会見で、元安橋付近で既に営業中の飲食店に触れ、「問題は生じていない」と指摘した。かなわの三保二郎社長も「カキ船文化は絶対に必要。平和の発信も昔からやっている」と話している。