本との幸せな出会い演出 | 国際そのほか速

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 ToMAブログ -Jリーグ速 婚活 三省堂書店有楽町店(東京)の文芸コーナーはにぎやかだ。

 「絶対評価でA。」「おすすめ文が長すぎてQRコードにしちゃったよ」。ノリのいい言葉が並ぶカラフルなPOP(商品広告)が、競うように作品の魅力をアピールする。すべて、文芸担当の新井見枝香さん(34)が作ったものだ。「大好きな作家さんや作品のために何ができるか、いつも考えています。ほとんど恋愛ですね」

 自ら執筆し「妄想書評」と名付けた冊子まで手作りしてしまう熱の入れよう。書籍の傍らに置いているが、印刷が間に合わず、すぐ品切れになる。

 小説だけで年間約250冊を読む本好きだが、同店の書店員になったのは偶然だった。2007年、あるアルバイトの面接帰りに寄った同店で、たまたま「アルバイト募集」のポスターを見つけ、面接を申し込んだ。レジ担当として採用。契約社員を経て正社員になった。

 11年には、念願だった文芸担当に。どの本を何冊仕入れるか、棚のどこに並べるか、どんなPOPをつけるか――など、作品の売れ行きを左右する大事な業務を任されている。

 作家と直接交渉しサイン会を開くこともある。最初は、本格推理小説で知られる島田荘司さん。11年、ある文学賞のパーティーで見かけるや突進。大ファンであることを伝えて頼み込んだ。「そこまで作品を好きでいてくれるなら」と実現させてしまった。「行動する書店員」なのだ。

 閉店後の店内で、自分と作家が対談する「新井ナイト」も企画。作家の人柄がわかる話が聞けると好評だ。「同じ作家を好きな人が集まる機会は案外少ない。書いた人のことを知れば、作品をもっと好きになる。『この作家を応援したい』という気持ちを持ってもらえれば」と話す。

 同店には、高校時代からよく来ていたという。「お客さんが、いつもは手にしない本を買い、面白かったと満足する。そんな幸せな出会いをどう演出するか。それが書店員の醍醐味(だいごみ)なんです」(針原陽子)

【空き時間】アイス大好き 食べ歩き婚活サイト子どものころから、本と同じぐらい好きなのがアイスクリーム。朝食代わりにすることもあるほどで、ほぼ毎日、2回は食べる。有楽町店のある複合ビルには自治体のアンテナショップがいくつもあり、休憩時間に様々なアイスを食べ歩くのが楽しみだ=写真=。

 仕事の参考に、他の書店や雑貨店などを見て回ることも多いが、アイスクリーム店を見つけると、立ち寄らずにはいられない。「同行者には『またか』とげんなりされます」。作家の川村元気さんと「宝くじで3億円当たったら、何に使うか」を話した時には、「とりあえず毎日『ハーゲンダッツ』を食べます」と言ってあきれられた。

 「ちなみに、ジェラート屋さんの技量を知ろうと思ったら、『ミルク』を食べれば、すぐわかります」。好きなモノにとことんのめり込むのは、本もアイスも一緒のようだ。

あらいみえか

【道具】お薦め情報などSNSで

  •  有楽町店のSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)も担当しており、iPad=写真=が手放せない。使い始めたのは昨年。「写真はきれいで文章も書きやすい」。撮った写真をすぐSNSにアップできる便利さにも感激した。

     SNSは書店に足を運ぶことが少ない人に対する重要な情報提供ツールだ。「面白かった」などと本の感想を書くと、その作品の購入者がぐっと増える実感がある。読んだ人がSNSに直接、感想などを書き込んでくるほか、レジで「SNS見ました」と声をかけられることも多い。

     「本離れと言われるけれど、取っかかりがないだけだと思う。本は、内容についての情報が少ない上、発売時期がCMで流れることもない。SNSが、本を手に取るきっかけになれば」と話す。

    あらい・みえか 1980年、東京都生まれ。大学時代はバンド活動に明け暮れ、就職せずフリーターに。2007年、三省堂書店有楽町店にアルバイトで入職、13年に正社員。同年から、全国の書店員の投票による文学賞「本屋大賞」実行委員。 政治そのほか速