和歌山県紀の川市で市立名手(なて)小5年、森田都史(とし)君(11)が刺殺された事件で、殺人容疑で逮捕された無職、中村桜洲(おうしゅう)容疑者(22)が事件当日の状況について、自宅の庭でダンベルを持って運動中に森田君にからかわれたため、いったん自室に凶器を取りに戻ったという趣旨の供述をしていることが15日、接見した弁護士への取材で分かった。
中村容疑者の自宅から現場の空き地までは約50メートル離れ、凶器のなたを持って森田君を追い掛けたらしい。なたは事件後に洗ったと説明していることも分かった。県警が自宅から押収したなた3本(いずれも刃渡り約40センチ)のうち、狩猟や軍隊などで使われる「ククリナイフ」1本から、森田君のDNA型と一致する血液反応を検出。なたの入手経路についても「警備員のアルバイトをしていた約1年前に護身用としてインターネットで購入した」と具体的な説明を始めているという。
捜査関係者によると、中村容疑者は調べに対し「ずっとからかわれていた」との供述をしているといい、日ごろから恨みを募らせていた可能性がある。しかし、中村容疑者は取り調べ中の会話がかみ合わないこともあるため、引き続き供述内容を慎重に裏付けながら捜査を進める。
事件は5日夕に発生し、森田君の胸を刃物で刺して殺害したとして、県警は7日未明に中村容疑者を逮捕した。中村容疑者は当初、当日の状況について「(犯行時間帯は)家でテレビを見ていた」などと供述。最近になって「(私が)やりました」と容疑を認め始めたが、取り調べ中に突然立ち上がるなど不自然な行動があり、県警は精神鑑定も検討している。【倉沢仁志、高橋祐貴】埼玉県所沢市で15日、航空自衛隊入間基地に近い防音校舎の小中学校にエアコンを設置すべきかどうかを問う住民投票が行われた。午後9時前に市が発表した投票率は31.54%にとどまり、市条例の「多数票が投票資格者の3分の1以上の場合、市長や市議会が結果の重みを斟酌(しんしゃく)しなければならない」との条件を満たさないことが確実となった。
条例に基づけば、エアコン設置中止の方針は変更される可能性は低くなった。しかし開票作業は進められ、賛否の状況によって市が自発的に方針を変更する余地は残っている。
市の発表では、15日現在の投票資格者数は27万8248人。投票者数は8万7763人で「3分の1以上」に達しなかった。
エアコンの設置が問題とされたのは、市立の47小中学校のうち自衛隊機の騒音対策として特殊サッシなどの防音対策が施されている防音校舎29校。市は2006年にエアコンの設置方針を決定し、1校への設置を2億1700万円で完了後、新たな2校への設置準備を進めていた。
しかし、11年3月の東日本大震災と東京電力福島第1原発事故後の同年秋の市長選で当選した藤本正人市長が「これまでの(快適で便利な)生活を変えるべきだ」と方針を転換。準備していた2校へのエアコン設置を取りやめていた。
このため、エアコンの設置が中止された中学の保護者代表らが「(エアコンのない不快な環境で)生徒らの学習する権利を妨げてはならない」と住民投票条例を直接請求し、市議会が昨年12月に可決。今月8日、住民投票が告示されていた。【海老名富夫】