◇37万個販売に回収は7万個にとどまる
業務用デザートなどの食品輸入販売会社「アンジュ・ド・バージュ」(大阪市福島区)が販売したイチゴのアイスクリームから昨年12月、カビが検出されたことが13日、分かった。全国で約37万個を販売していたが、同社はカビ検出の事実を伏せ、「砂などの異物が混入した」として商品を回収。大半は既に消費されたとみられ、回収は約7万個にとどまった。健康被害はなかったという。
同社によると、カビが見つかったのはイチゴをくりぬいて練乳を詰めた「まるごと苺(いちご)アイス」。中国で製造され、冷凍状態で輸入した。昨年8月に同一ロットの約49万個を仕入れ、全国47都道府県の飲食チェーン店や焼き肉店など約800店に卸した。
昨年11月、兵庫県内の販売先から「イチゴの表面に黒いものがある」との苦情が寄せられた。それ以前にも、ガの幼虫や砂などの異物が混入しているとの苦情もあった。
在庫のイチゴの調査では、黒ずんだものや形状が悪いものもあったため、同社は出荷を停止。返品された商品を検査したところ、翌月12日に「カビが検出された」との鑑定結果が届いた。毒性を持つ疑いがあるカビだったが、既に死滅し、直ちに健康被害が出る可能性は低いと考えられる内容だった。
同社はこれを受け回収作業を始めたが、関係者によると、販売先には「砂や土の異物が混入していた。念のため交換させてほしい」と説明。「砂や虫、毛髪などの異物が50万個に1~2個出た」との対応マニュアルも作成し、カビの事実を伏せていた。
大阪府公衆衛生研究所は「果実は収穫後バリアー機能が弱まり、カビが生えやすくなる。冷凍保存するまでにカビは他にも広がっていた可能性もある」と指摘。食の安全に詳しい垣田達哉・消費者問題研究所代表は「取り除けばいい異物と違い、カビはイメージが悪いので伏せたのだろう。人体への影響の有無に関係なく事実をきちんと説明して回収すべきだ」と話す。
アンジュ社の滝野佳秀社長は「イチゴから検出されたカビの毒素に規制値はなく、健康被害は出ないと思い、販売先には説明しなかった。私のミスで、反省している」と話している。【田中謙吉、千脇康平】