政府は、自衛隊による米軍以外の他国軍隊への後方支援を可能とするため、周辺事態法を改正する検討に入った。複数の政府関係者が明らかにした。現行法では後方支援を行う対象は米軍のみだが、朝鮮半島有事のような場合、米軍以外の関係国も作戦に参加する可能性があり、対象国の拡大が必要と判断した。政府は13日から始まる安全保障法制に関する与党協議でこうした法改正の趣旨を説明する考えだ。
政府は昨年7月の安保法制の整備に関する閣議決定で、「我が国の安全の確保」や「国際社会の平和と安定」のために活動する他国部隊に対して後方支援を行うための「法整備を進める」と明記した。
この閣議決定に基づき、政府内で検討を進めた結果、「我が国の安全の確保」に関する他国部隊への後方支援については、朝鮮半島有事などを想定して制定された周辺事態法を改正して対応する方針とした。政府が「準同盟国」と位置づけているオーストラリア軍などを念頭に、対象を米軍のみならず、共同作戦に参加する米国の同盟国などの軍隊に拡大する。
周辺事態法は、日本への武力攻撃はないが、日本周辺で「我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態」が発生した場合に、武力を行使する米軍に対し、自衛隊がどのような支援ができるかを定めた法律で、1999年に制定。米軍による日本の防衛義務を定めた日米安全保障条約の「効果的な運用」を図り、日本の平和と安全を確保することを目的としている。
これまで政府は、周辺事態について「地理的概念ではなく、事態の性質に着目した概念」と説明し、特定のケースが、周辺事態に当たるかどうかは、状況や規模などを勘案して判断するとしてきた。一方で、99年に小渕恵三首相(当時)が国会で「中東やインド洋で起こることは想定されない」と答弁するなど、一定の地理的制限があるとも考えられてきた。与党協議では、曖昧さが拭えない周辺事態を安全保障関連法案でどう位置づけるかも議論される見通しだ。
一方、「国際社会の平和と安定」のための活動に関しても、政府は自衛隊による他国軍隊への後方支援の法的枠組みを検討している。日本の平和と安全に直接的には関係ないことから、周辺事態法の適用は困難として、新たに国際平和協力のための恒久法を制定する必要があるとの判断に傾いている。公明党は抑制的な派遣とするよう求めており、恒久法の在り方も与党協議の大きな争点となりそうだ。【高本耕太、飼手勇介】