
「のんびりした性格のためか、部下から“癒やし系の演奏”と言われたこともあるんです」と笑う富田隊長。昨年8月の就任から、指揮者として35人の隊員を率い、道内で音楽会などを開催してきた。今年1月の旭川市の成人式では、新成人の前で映画「アナと雪の女王」の主題歌など流行歌を披露。時折、観客席を向いてタクトを振り、ステージ上で跳びはねながら観客に手拍子を促して会場を沸かせた。「ノリのいい曲だとついやっちゃうんです。お客さんと一体化して場を盛り上げたくて、自然に体が動きます」と話す。
5歳の時に母親のすすめでピアノを始めた。中学、高校は吹奏楽部でホルンを担当。愛媛大教育学部音楽科に進学後もホルンを続けた。「音楽を仕事にしたい」と考えていた時、大学の先輩に自衛隊の音楽隊を紹介された。
他の自衛隊員と同様に戦闘訓練を含む3か月間の基本教育などを受けた後、1994年10月に第3師団第3音楽隊(兵庫県伊丹市)に配属された。95年の阪神・淡路大震災の際には被災地で慰問演奏を行い、「聴いている人の笑顔を見てうれしくなった」と振り返る。
12年12月、北部方面音楽隊(札幌市)の副隊長として、初めて北海道での任務に就いた。「真っ白な雪景色に感動しました」という。北海道で初めての屋外演奏は、13年のさっぽろ雪まつり。靴にカイロを入れるのも、屋外演奏用のオーバーを着用するのも初めての経験だったという。
夫も自衛官で、現在は善通寺駐屯地(香川県)の第14旅団司令部に勤務する。自宅では1日1~2時間タクトを振ったり、映画音楽の原作を観賞し、場面を思い浮かべながら指揮ができるようにしたりしている。「指揮者は音の強弱を指示するだけではだめ。曲の場面や、なぜ強弱をつけるのか、理論立てて説明することが必要」と話す。
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次の演奏会は5月30日に旭川市民文化会館で行われる「第2師団音楽まつり」。昼の部(午後2時~同3時半)と夜の部(同6時~同7時半)の2部構成の予定だ。チケットは抽選で、4月15日から応募を受け付ける。問い合わせは第2師団司令部広報室(0166・51・6111、内線2276)まで。