
窓の断熱性アップ 脱衣所に床暖房
- 浴室はユニットバスにして、窓の位置も北側から西側に変更。脱衣所には床暖房を設置した。「暖かいだけでなく、明るい空間になった」(横浜市で)
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家の北側に配置されることの多い浴室と脱衣所の冬場の寒さは、住まいの悩みのひとつだ。
屋内の寒暖差などの影響で、脳卒中などを発症することもある。リフォームで暖かい空間を作ると、より快適な入浴を楽しめる。
「以前の風呂は冬になると寒くて苦痛だったが、今はそんなことは全くない」
昨秋、築25年の木造2階建てをリフォームで断熱化した横浜市の会社役員男性(69)と妻(65)は口をそろえる。
施工前との違いを特に実感するのが、浴室と脱衣所だ。壁や床にウレタン製の断熱材を入れた。全面タイル貼りの浴室は密閉性の高いユニットバスに変え、窓も断熱性の高いサッシに交換。脱衣所は床暖房を取り付け、窓には浴室と同じサッシを入れた。
脱衣所への動線も変更。寒い廊下を通らず、寝室やリビングから移動できるように、壁を引き戸に改修した。
施工した土屋ホームトピア(札幌市)の1級建築士、菅井弘和さんは「屋内の温度差の解消を図った」という。
同社によると、「寒さ」を理由にした浴室のリフォームは増えている。依頼の中心は、20年以上前に、モルタル地の床や壁にタイルを貼るなどして作られた浴室。菅井さんは「当時は一般的だったが、外部の冷気が伝わりやすい構造。断熱材があっても劣化していることが多い」と話す。
浴室や脱衣所の寒さは、健康にも悪影響を及ぼす。暖かい居室との温度差などで血圧が急変動して脳卒中を引き起こしたり、冷えた体を温めようと熱い湯につかっているうちに意識を失うなどして溺れたりする恐れがある。東京都健康長寿医療センター研究所の推計では、2011年には、高齢者を中心に約1万7000人が入浴中に急死した。
庄内保健所(山形県三川町)所長の松田徹さんは「寒冷地特有の問題ではない。普段いる部屋と浴室周りの温度差をなくす環境作りが重要」と訴える。同保健所は、ホームページ「入浴死・入浴事故を防ぐナビ」で、入浴時の危険について情報発信している。
リフォームで対策を講じる場合、東京ガスリモデリングの1級建築士、荒居伸子さんはまず、密閉性の高いユニットバスへの交換と断熱材の使用をあげる。ユニットバスの性能は年々向上。選ぶ際のポイントは、断熱性能の有無や壁などの厚み。タイル貼りの浴室を解体し、断熱仕様のユニットバス(160×160センチ)に交換した場合、同社の費用の目安は工事費込みで80万円から。
熱が逃げやすい窓は、複層ガラスの断熱サッシに交換したり、内窓を設けたりする。内窓の設置は、外壁工事を伴うことの多いサッシ交換より割安で、断熱性も高いという。浴室や脱衣所専用の暖房機も効果的。「居住部分を含めてリフォームするならば、居間などと浴室、脱衣所を近づける間取り変更も検討してみては」と荒居さん。
大がかりなリフォームが難しくても工夫はできる。松田さんは、入浴前に浴槽のふたと浴室の扉を開け、脱衣所を暖めて衣服を脱ぐ。「できることから始め、安全で快適な入浴を心がけて」と話す。
手軽に暖かい脱衣所・浴室を作る工夫【脱衣所】
・入浴前に浴槽のふた、浴室の扉を開けて暖める
・小型の電気ストーブを置く
【浴室】
・窓に梱包 用の緩衝材を貼りつけたり、隙間テープを使ったりして、冷気を遮断する
・入浴前に浴槽のふたを開け、シャワーを注ぐなどする
(松田さんの話をもとに作成)