つながり実る、地域の庭 | 国際そのほか速

国際そのほか速

国際そのほか速

つながり実る、地域の庭 

近隣住民、一緒に栽培

 

  • ウッドチップを敷き詰めるなど、庭造りの作業をする住民ら。終わった後には、収穫したハーブのお茶などをみんなで味わった(東京都世田谷区で)
  •   サクラやマツが大きく育っている横で、カキやビワ、キンカンなど実のなる樹木にも存在感がある。サルスベリやモミジなど、季節になると花や紅葉を楽しめる木も多い。

      東京都世田谷区の住宅街にあるこの庭には、30本近い樹木が茂る。月に2回、近隣の住民が集まり、庭造りを行う活動「たぬき村つながる庭プロジェクト」が進められている。

      活動の中心になっているのは、造園業を営む矢田陽介さん(41)。「近所に住む人とつながりを作りたいと思い、一緒に庭造りをすることを呼びかけました」

      矢田さんはこの庭の隣にあるマンションに4年前、住み始めた。マンションでは住民同士の交流が活発で、これまでにマンション内の共有スペースで外部講師を招いた講演会を開くなど様々な催しを行い、地域の人が訪れていた。ただ、「1回だけで終わってしまう催しでは来てくれる人がいてもその場限り。継続的な活動なら、近隣の人ともつながりを作れる」と庭造りを思いついたという。

      マンション隣にある一戸建ての住人が庭を開放してくれることになり、今年3月から草刈りなどの作業を始めた。今のところ毎回5、6人が集まり、一緒に活動をしている。

      この日は庭に道を造るため、ウッドチップを敷く作業が行われた。近所から初めて参加した井上大輔さん(30)は「体を動かす機会が少ないので、みんなで動いて気持ちがいい」。矢田さんと同じマンションに住む今尾宏子さん(40)は「庭造りを通じて、近所の少し広い範囲の人とも話ができるようになり、知り合いが増えてうれしい」と話す。

      庭をきっかけに人同士のつながりを作ろうという動きは各地で始まっている。千葉県柏市が4年前から行っているのは地域緑化のための「カシニワ制度」。制度の柱の一つが自宅や施設の庭を一般の人に公開するオープンガーデンだ。

      現在、約60か所が登録されており、それぞれが都合のつく時間に庭を公開している。公開時間や場所などは市のホームページなどで広報している。毎年春にはこれらの庭を一斉公開するイベントも開いている。

      「地域の人が庭を訪れて交流が深まっているほか、庭造りをしている人同士も栽培方法を教え合うなど、つながりが広がっています」(同市公園緑政課)

      広島県尾道市のNPO法人「尾道空き家再生プロジェクト」も3年ほど前から空き地を借り、「アキチ公園」と名付けた場所を作っている。月に1回程度、会員などが集まって、草刈りなどの作業を行っている。作業の合間には一緒におやつを食べるなど、交流を図っている。

      千葉大准教授(緑地環境管理)の秋田典子さんは、学生と共に宮城県や岩手県などの被災地にコミュニティーガーデンを造る活動を行っている。「植物の手入れをしていると、顔を合わせる機会が増える。日々変化する植物の話題は天気などと同様、世間話に向いています。庭はコミュニティー作りのきっかけになるはずです」と話している。

    たぬき村つながる庭プロジェクト http://tsunagaruniwa.jimdo.com/
      11月に庭を公開するイベントを開く予定カシニワオープンガーデン http://www.city.kashiwa.lg.jp/soshiki/110600/p015010.html