<下>高校で課題解決型授業を…荒瀬克己氏 | 国際そのほか速

国際そのほか速

国際そのほか速

<下>高校で課題解決型授業を…荒瀬克己氏 

大谷大学教授(学校経営学、元京都市立堀川高校長) 61

 

  • 荒瀬克己氏(山本高裕撮影)
  •   自ら学び、困難に挑戦する人材を育てるために、高校では総合的な学習の時間を充実させることが大切だ。

      教科の枠を超えて関心のあるテーマを掘り下げる課題解決型の授業で、2011年度まで14年間、教頭、校長を務めた京都市立堀川高校では、「探究基礎」と名付けて行っていた。

      生徒たちは自分でテーマを選び、実験、研究を行って論文にまとめる。知識、思考力、学習意欲が高まり、大学進学後や社会に出てからも困難な課題に挑む素地が鍛えられる。

      こうした取り組みは、多くの高校で十分に行われているとは言えない。大学入試に軸足を置いた指導が多いためで、どうしても知識偏重になる。

    「一発発勝負の大学入試」脱却目指す

     

      私が臨時委員を務める中央教育審議会の部会は、大学入試に関する答申を年内にもまとめる予定だ。「1点刻み・一発勝負の入試」からの脱却を目指し、思考力や学習意欲、高校での活動実績などを幅広く評価することを求める内容になる。

      ただ、答申を具体化するには、様々な課題がある。大学入試センター試験の後継となる「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」について、「年複数回行うと高校教育や行事に支障がでる」「成績を点数ではなくランク別に表示して公平な選抜ができるのか」といった不安の声が高校、大学から上がっている。

      テストを高校生活に影響が小さい時期に実施する、ランク別表示を細かくする、といった調整をし、関連団体と着地点を探ってほしい。

      答申が各大学に求める多面的な評価による入試についても、実施に伴う負担感は大きい。これは、国も補助金などで支援して大学の事務局を増強し、入試改革に対応できる態勢をつくることが大切だ。

    高校版の「学テ」提言、大学進学しない生徒にも活用を

     

      大学入試が思考力や学習意欲をみるものに変われば、高校の授業も変わることが期待される。今回の答申には、高校で身につけるべき基礎的な学力を確認する「高等学校基礎学力テスト(仮称)」の実施も提言されるが、ここにも、知識の活用力を問う問題を入れるべきだ。小中学生を対象にした全国学力テストの高校版とも言えるもので、大学に進学しない生徒も含め幅広く活用してほしい。

      子どもたちが安心して学べる環境は重要だ。民主党政権が実施した高校無償化には、自民党政権下で所得制限が導入された。財源が限られる中、政治的な判断で優先順位がつけられたのだと思うが、若者を社会全体で育てようという機運は維持されたのではないか。

      さらに、大学などに進み、学びの場を広げていくために、奨学金制度も充実させることが必要だ。高校で学習意欲を刺激された子どもたちが、経済的な問題で進学を断念せずに済むような政策を期待したい。(聞き手 渡辺光彦)

    大学入試改革 教育再生実行会議の提言を受け、中教審の高大接続特別部会を中心に論議してきた。年明け以降は、文部科学省の有識者会議で具体的な制度を詰める。
      柱は、1990年から実施している大学入試センター試験に代わる「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」の導入。中教審は年複数回の実施や、成績を大まかなランクで表示する方式を提言する。各大学の個別試験では、学力評価テストの成績に加え、高校の調査書や面接、小論文などによる多面的な選抜を促す。
      早ければ2021年度入試から実施され、現在の小学6年生から対象となる。