
2006年開校の私立日々輝(ひびき)学園高校は全国から生徒を募集し、リポートの添削や面接指導(スクーリング)を通じて教育する広域通信制高校だ。構造改革特区で株式会社が設立したが、13年、学校法人に移行。栃木県塩谷町の本校のほか、学習施設が宇都宮市と埼玉県、神奈川県に計5か所ある。当初約400人だった生徒数は約1400人に増えた。その6割が中学校までに不登校を経験している。
昨年12月中旬、本校で餅つき大会が開かれた。「ヨイショ!」。掛け声に合わせて、生徒がきねを頭上から一気に振り下ろし、約50人が餅をほおばった。もち米は本校周辺の水田で、生徒が作った。本校には農園と林計1万4000平方メートルもあり、果物や野菜を栽培。他の施設の生徒も年に数回、本校で活動する。
小椋(おぐら)龍郎・理事長兼校長(56)は「中学校で学校行事や部活動にも参加していない生徒が多いので、生活体験を積ませ、生徒同士の人間関係も深めたい。将来、自立して生きていける力をつける」と狙いを説明する。
通信制は柔軟に登校日数を定められるため、週1、3、5日登校コースを独自に設け、生徒が通いやすいように工夫。授業は中学1年の復習から始め、理解度に応じて学習の遅れを取り戻す。進学や就職に向け、英語や情報処理などの課外講座も今年度から実施している。
2年男子(17)は中学1年でいじめられ、一時期不登校になった。同校入学後は1年生で週3日、今年度は5日通学し、「仲間もでき、楽しい」。中学時代不登校が続いた3年女子(18)は「ここでは一人ひとりに合った教え方をしてくれる」と話し、保育士を目指す。
広域通信制高校は10年間で倍増し、現在は89校。文部科学省は昨年度の調査で、一部の高校で生徒の提出リポートに解説をしないなど、教育が不十分なケースが見つかったとして、管轄する自治体に注意を促した。
NPO法人不登校情報センターの松田武己理事長(69)は「不登校経験者には学び直せる多様な受け皿が必要。通信制の利点を生かした教育を進めてほしい」と語った。(石塚公康)
高校進学率は改善
文部科学省の学校基本調査によると、年間30日以上欠席した中学生が全体に占める割合は2013年度、6年ぶりに上昇。小学生も2年ぶりに増えた。人数は計約12万人。一方、受け皿の整備が進んだことで、同省の調査で06年度に不登校だった中3生を追跡したところ、高校進学率が85%と、前回調査の1993年度の65%より大幅に改善した。
「教育ルネサンス」では、「検証 特区の学校」(2007年12月)、「不登校と向き合う」(13年4~5月)などで不登校経験者を対象とした学校を紹介した。