
漫画家
- 倉田真由美さん(源幸正倫撮影)
- おしゃれに目覚めた高校時代の倉田さん
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中学生の時は、おしゃれにも異性にも関心がなく、牛乳瓶の底のような分厚い眼鏡をかけて受験勉強に励んでいたんですよ。
それが福岡県立福岡高校に入って、女子であることに目覚めました。「モテたい!」と思うようになったんです。目標を達成して、糸の切れた凧(たこ)のようになっていたんですね。
眼鏡はコンタクトレンズに変え、朝シャンを始めました。髪形は毎日変え、女の子らしさをアピールできるという狙いもあり、お菓子づくりの部活に入りました。女の子として生きるのが面白く快感で、まさに「高校デビュー」でした。
でも、クラスメートが「何組の誰それがかっこいい」と言ってもピンときてなかった。それよりもシャーロック・ホームズとか、佐々木小次郎とか、生身でない存在に恋していました。
ただ、それを言うとオタクっぽく見られるかなと思って、口には出しませんでした。当時すでに少女漫画を描いていて雑誌に投稿していたんですが、男子からオタクと思われるのが嫌で、隠れて描いていました。モテたい自分とオタクな自分。二つの軸があり、両方充実していました。
少女漫画は大学に進学後もたまに描いていたのですが、ある時、自分にはその画力がない、自分の絵はギャグ漫画に向いていると気づいたんです。二つの軸があったからこそ、自分を客観的に見て限界に気づけたんだと思います。
40歳代になり、もう恋愛に情熱を注げないと感じて、恋愛をテーマにした「だめんず・うぉ~か~」の連載も終わりにしました。最近、「モテたい」と思わなくなった自分が、なんだかさみしい。だから、高校時代はとても懐かしいです。(聞き手・山田睦子)
プロフィルくらた・まゆみ 1971年、福岡市出身。95年、漫画家デビュー。代表作は、ダメ男を好きになる女性を描いた「だめんず・うぉ~か~」。現在は「もんぺ町ヨメトメうぉ~ず」などを連載中。(2014年10月9日付読売新聞朝刊掲載)